2-11「ルーンの街」
力の制御を望みルーンの街へとやって来たクレージュたち。そこで一人の研究者と出会う。
街は、静かだった。
石造りの建物が並び、
通りは無駄に広く、
人の数は多くない。
「……変な街ですね」
クレージュが、
率直にそう言った。
◆
「ルーン学派の街だからな」
アーニャは、
周囲を警戒しながら歩く。
「研究者と弟子ばっかり。
戦わない人間が多い」
◆
だが――
空気は、張り詰めている。
(……見られてる)
クレージュは、
はっきりと感じていた。
◆
「……視線、多いですね」
「魔力を見てる」
アーニャが、
低く言う。
「ここは、
そういう連中の街だ」
◆
街の中心には、
高い塔がそびえていた。
白い石で造られた、
簡素だが威圧感のある建物。
◆
「ルーン塔」
アーニャが、
指で示す。
「制御を学ぶなら、
まずはあそこだな」
◆
塔の前には、
1人の女性が立っていた。
白衣。
痩せた体。
だが、目は鋭い。
◆
「……旅人か」
彼女は、
二人を見るなり言った。
◆
「いや――」
視線が、
クレージュに向く。
◆
「観測対象だな」
◆
空気が、
一段冷えた。
◆
「……何者ですか」
アーニャが、
一歩前に出る。
◆
「ルーン学派、
第三研究塔所属」
「ミレイア=ルーンリーフ」
◆
フードを外し、
淡い銀髪がこぼれる。
年齢は、
二十代ほどに見える。
◆
「安心しろ」
淡々とした声。
「私は、
回収者ではない」
だが――
完全に味方とも言えない。
◆
「……なら、
どうして“観測対象”なんて」
◆
「君の魔力は、
隠しきれていないからな」
◆
ミレイアは、
静かに続ける。
「六つの属性が、
互いに干渉せず、
同時に存在している」
「……そんなこと、
普通はあり得ないことだ」
◆
クレージュは、
息を呑んだ。
そして、
「……制御を、
学びたい」
クレージュは、
はっきりと言った。
「壊さないために」
◆
ミレイアは、
少しだけ目を細めた。
「……いい言葉だ」
「だが――」
「制御は、
教えてもらうものじゃない」
「理解するものだ」
◆
一瞬の沈黙。
◆
「……それでも、
ここに来た理由は?」
◆
「逃げないためです」
即答だった。
◆
ミレイアは、
小さく息を吐いた。
「……面倒な客だ」
◆
そして、
塔の扉に手をかける。
◆
「入れ」
「ただし――」
振り返り、
言い添える。
「ここは、
優しくない」
◆
アーニャが、
小さく笑った。
「そういうのには、慣れてる」
◆
ミレイアは、
一瞬だけ驚いたように眉を上げ、
すぐに背を向けた。
◆
塔の中へ。
重い扉が、
ゆっくりと閉まる。
◆
クレージュは、
胸の奥で、
六彩の鼓動を感じていた。
それは――
恐怖ではない。
理解されることへの、
わずかな期待だった。
──六彩の少年は、
ついに“知の側”へ足を踏み入れた。
──制御への道は、
ここから始まる。




