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2-11「ルーンの街」

力の制御を望みルーンの街へとやって来たクレージュたち。そこで一人の研究者と出会う。

街は、静かだった。


 石造りの建物が並び、

 通りは無駄に広く、

 人の数は多くない。


 


「……変な街ですね」


 


 クレージュが、

 率直にそう言った。


 



 


「ルーン学派の街だからな」


 


 アーニャは、

 周囲を警戒しながら歩く。


 


「研究者と弟子ばっかり。

 戦わない人間が多い」


 



 


 だが――

 空気は、張り詰めている。


 


(……見られてる)


 


 クレージュは、

 はっきりと感じていた。


 



 


「……視線、多いですね」


 


「魔力を見てる」


 


 アーニャが、

 低く言う。


 


「ここは、

 そういう連中の街だ」


 



 


 街の中心には、

 高い塔がそびえていた。


 白い石で造られた、

 簡素だが威圧感のある建物。


 



 


「ルーン塔」


 


 アーニャが、

 指で示す。


 


「制御を学ぶなら、

 まずはあそこだな」


 



 


 塔の前には、

 1人の女性が立っていた。


 


 白衣。

 痩せた体。

 だが、目は鋭い。


 



 


「……旅人か」


 


 彼女は、

 二人を見るなり言った。


 



 


「いや――」


 


 視線が、

 クレージュに向く。


 



 


「観測対象だな」


 



 


 空気が、

 一段冷えた。


 



 


「……何者ですか」


 


 アーニャが、

 一歩前に出る。


 



 


「ルーン学派、

 第三研究塔所属」


 


「ミレイア=ルーンリーフ」


 



 


 フードを外し、

 淡い銀髪がこぼれる。


 年齢は、

 二十代ほどに見える。


 



 


「安心しろ」


 


 淡々とした声。


 


「私は、

 回収者ではない」


 だが――

 完全に味方とも言えない。


 



 


「……なら、

 どうして“観測対象”なんて」


 



 


「君の魔力は、

 隠しきれていないからな」


 



 


 ミレイアは、

 静かに続ける。


 


「六つの属性が、

 互いに干渉せず、

 同時に存在している」


「……そんなこと、

 普通はあり得ないことだ」


 



 


 クレージュは、

 息を呑んだ。


 そして、


「……制御を、

 学びたい」


 クレージュは、

 はっきりと言った。


 


「壊さないために」


 



 


 ミレイアは、

 少しだけ目を細めた。


「……いい言葉だ」


「だが――」


「制御は、

 教えてもらうものじゃない」


「理解するものだ」


 



 


 一瞬の沈黙。


 



 


「……それでも、

 ここに来た理由は?」


 



 


「逃げないためです」


 


 即答だった。


 



 


 ミレイアは、

 小さく息を吐いた。


「……面倒な客だ」


 



 


 そして、

 塔の扉に手をかける。


 



 


「入れ」


「ただし――」


 振り返り、

 言い添える。


「ここは、

 優しくない」


 



 


 アーニャが、

 小さく笑った。


 


「そういうのには、慣れてる」


 



 


 ミレイアは、

 一瞬だけ驚いたように眉を上げ、

 すぐに背を向けた。


 



 


 塔の中へ。


 


 重い扉が、

 ゆっくりと閉まる。


 



 


 クレージュは、

 胸の奥で、

 六彩の鼓動を感じていた。


 


 それは――

 恐怖ではない。


 


 理解されることへの、

 わずかな期待だった。


 


──六彩の少年は、

 ついに“知の側”へ足を踏み入れた。


 


──制御への道は、

 ここから始まる。

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