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2-9「夜を越える覚悟」

あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いします。


アーニャの心に少しばかりの変化が訪れたようで…

夜は、静かだった。


 



 


 草原の奥、

 岩陰に焚いた小さな火。


 炎は控えめで、

 遠くからは見えない。


 



 


 クレージュは、

 地面に横になり、眠っていた。


 


 顔色は悪い。

 呼吸は浅い。


 



 


(……無理しすぎ)


 


 アーニャは、

 少し離れた場所に座り、

 短剣を手入れしながら彼を見ていた。


 



 


 六彩が弾けた瞬間――

 あの光景が、

 頭から離れない。


 


 風が空間を裂き、

 土が抉れ、

 光が奔流となって溢れた。


 



 


(……あれで、

 本人が一番怯えてる)


 


 だからこそ、

 分かる。


 


 あれは――

 誇示でも、

 支配でもない。


 


 拒絶だ。


 



 


「……バカだよ、ほんと」


 


 小さく呟く。


 



 


 普通なら、

 あの力を手にした瞬間、

 それを振り回す。


 脅し、そして

 支配する。


 生き残るために。


 なのに――


 (……止めようとした)


 



 


 焚き火の炎が、

 ぱちりと音を立てる。


 



 


 アーニャは、

 ふと昔を思い出した。


 


 仲間を失った夜。

 判断が遅れて、

 誰かが倒れた夜。


 



 


(……生き残るには、

 割り切るしかない)


 


 そう思ってきた。


 でも。


 クレージュは、

 割り切らなかった。


 



 


「……だから、

 危ないんだよ」


 


 それでも。


 


 その危うさが、

 嫌じゃなかった。


 



 


 彼の方を向く。


 


 眠ったままの顔は、

 年相応に幼い。


 



 


(……守らなきゃ)


 


 ふと、

 そう思った自分に、

 少し驚く。


 



 


 その時――


 


 草を踏む、

 かすかな音。



 アーニャは、

 瞬時に立ち上がり、

 火を足で消した。


 



 


 闇。


 



 


 短剣を構え、

 音のした方向を見る。


 だが――

 そこには何もない。


 (……回収屋?)


 一瞬、

 そう思ったが――

 違う。


 殺気がない。


 



 


 代わりに感じるのは、

 観測する視線。


「……見てるだけ、か」


 低く呟く。


 



 


 短剣を下ろさず、

 あえて声を出した。


 


「……クレージュは、

 連れていかせない」


 


 返事はない。


 


 しかし――

 気配が、

 わずかに揺れた。


 



 


(……どうやら聞いてはいるみたいだ)


 



 


 しばらくして、

 気配は消えた。


 



 


 夜が、

 戻ってくる。


 



 


 アーニャは、

 焚き火を小さく灯し直し、

 再び腰を下ろした。


「……あんたさ」


 眠るクレージュに、

 小さく話しかける。


「生き方、

 選びすぎ」


 


 でも――

 それができるのは、

 強さがあるからだ。


 



 


 短剣を、

 鞘に収める。


 そして、


(……決めた)


 



 


 逃げるだけの旅は、

 終わり。


 


 ここからは――

 一緒に進む。


 



 


 アーニャは、

 夜空を見上げた。


 


 星は、

 静かに瞬いている。


 

「……朝になったら、

 ちゃんと言うから」


 



 


 夜は、

 まだ長い。


 


 だが――

 越えられない夜ではなかった。

お読みいただきありがとうございます。


お正月を堪能していますか?

僕は3日から本業始まります(泣)


世界中のみんなが良い一年でありますように。

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