2-9「夜を越える覚悟」
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
アーニャの心に少しばかりの変化が訪れたようで…
夜は、静かだった。
◆
草原の奥、
岩陰に焚いた小さな火。
炎は控えめで、
遠くからは見えない。
◆
クレージュは、
地面に横になり、眠っていた。
顔色は悪い。
呼吸は浅い。
◆
(……無理しすぎ)
アーニャは、
少し離れた場所に座り、
短剣を手入れしながら彼を見ていた。
◆
六彩が弾けた瞬間――
あの光景が、
頭から離れない。
風が空間を裂き、
土が抉れ、
光が奔流となって溢れた。
◆
(……あれで、
本人が一番怯えてる)
だからこそ、
分かる。
あれは――
誇示でも、
支配でもない。
拒絶だ。
◆
「……バカだよ、ほんと」
小さく呟く。
◆
普通なら、
あの力を手にした瞬間、
それを振り回す。
脅し、そして
支配する。
生き残るために。
なのに――
(……止めようとした)
◆
焚き火の炎が、
ぱちりと音を立てる。
◆
アーニャは、
ふと昔を思い出した。
仲間を失った夜。
判断が遅れて、
誰かが倒れた夜。
◆
(……生き残るには、
割り切るしかない)
そう思ってきた。
でも。
クレージュは、
割り切らなかった。
◆
「……だから、
危ないんだよ」
それでも。
その危うさが、
嫌じゃなかった。
◆
彼の方を向く。
眠ったままの顔は、
年相応に幼い。
◆
(……守らなきゃ)
ふと、
そう思った自分に、
少し驚く。
◆
その時――
草を踏む、
かすかな音。
アーニャは、
瞬時に立ち上がり、
火を足で消した。
◆
闇。
◆
短剣を構え、
音のした方向を見る。
だが――
そこには何もない。
(……回収屋?)
一瞬、
そう思ったが――
違う。
殺気がない。
◆
代わりに感じるのは、
観測する視線。
「……見てるだけ、か」
低く呟く。
◆
短剣を下ろさず、
あえて声を出した。
「……クレージュは、
連れていかせない」
返事はない。
しかし――
気配が、
わずかに揺れた。
◆
(……どうやら聞いてはいるみたいだ)
◆
しばらくして、
気配は消えた。
◆
夜が、
戻ってくる。
◆
アーニャは、
焚き火を小さく灯し直し、
再び腰を下ろした。
「……あんたさ」
眠るクレージュに、
小さく話しかける。
「生き方、
選びすぎ」
でも――
それができるのは、
強さがあるからだ。
◆
短剣を、
鞘に収める。
そして、
(……決めた)
◆
逃げるだけの旅は、
終わり。
ここからは――
一緒に進む。
◆
アーニャは、
夜空を見上げた。
星は、
静かに瞬いている。
「……朝になったら、
ちゃんと言うから」
◆
夜は、
まだ長い。
だが――
越えられない夜ではなかった。
お読みいただきありがとうございます。
お正月を堪能していますか?
僕は3日から本業始まります(泣)
世界中のみんなが良い一年でありますように。




