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2-8

街道を外れ、

 二人は草原の奥へと退いていた。


 



 


「……追ってくる?」


 


 クレージュが、

 息を整えながら尋ねる。


 


「来る」


 


 アーニャは、

 即答だった。


 


「さっきのは、

 “警告”じゃない」


 



 


 足を止め、

 周囲を確認する。


 


「試された」


 



 


「試す……?」


 


「どれくらい危険か。

 どれくらい制御できてるか」


 


 尻尾が、

 ぴんと張る。


 


「回収屋とは、

 そういう連中だ」


 



 


 草原の風が、

 一瞬止んだ。


 



 


「……来る」


 



 


 空気が、

 歪む。


 


 目には見えない“圧”が、

 地面を撫でた。


 



 


「――伏せて!」


 



 


 次の瞬間。


 


 地面に、

 淡い光の線が走った。


 


 拘束陣。


 



 


 光が、

 足元から立ち上がる。


 


「っ……!」


 


 クレージュの体が、

 重くなる。


 



 


「……対魔拘束」


 


 アーニャが、

 歯を食いしばる。


 


「魔法を使うと、

 逆に締まる!」


 



 


 草原の向こうから、

 二人の黒衣が現れた。


 



 


「抵抗するな」


 


 落ち着いた声。


 


「これは、

 保護のための処置だ」


 



 


「ふざけるな!」


 


 アーニャが、

 短剣を投げる。


 


 だが――

 刃は、

 空中で止められた。


 



 


「……物理も制限下」


 


 淡々とした報告。


 



 


「対象、

 反応低下」


 



 


 クレージュの視界が、

 狭くなる。


 


(……動けない)


 



 


 その瞬間――


 


 胸の奥で、

 六彩が強く反応した。


 



 


(……やめろ)


 


 止めようとする意志とは裏腹に、

 力は、

 “逃げ道”を探し始める。


 



 


 風が、

 拘束陣の隙間を揺らす。


 


 土が、

 陣の縁を押し上げる。


 


 光が、

 魔力の流れを照らす。


 



 


「……多属性反応、急上昇」


 


 黒衣の一人が、

 声を上げる。


 



 


「制御できていない!」


 



 


「抑制を――」


 



 


 その時だった。


 


「――離れろ!!」


 


 アーニャが、

 クレージュの前に飛び出した。


 



 


 次の瞬間。


 


 六彩が、弾けた。


 



 


 爆発ではない。


 


 だが――

 空間が、

 “押し広げられた”。


 



 


 風圧。

 土煙。

 光の奔流。


 



 


 拘束陣が、

 音もなく砕け散る。


 



 


「……っ!!」


 


 回収者たちが、

 距離を取る。


 



 


 クレージュは、

 膝をついた。


 


(……今の……)


 



 


 周囲には、

 深く抉れた地面。


 


 草原は、

 円状に薙ぎ倒されている。


 



 


「……これが、

 “制御できていない六彩”」


 


 アーニャの声は、

 震えていた。


 



 


 クレージュは、

 自分の手を見る。


 


(……俺が、

 やったのか……)


 



 


 回収者の一人が、

 低く言った。


 


「……危険度は、

 想定以上だ」


 



 


「強制回収は――」


 



 


 もう一人が、

 首を振る。


 


「今は無理だ」


 



 


「……撤退する」


 



 


 二人は、

 霧のように後退した。


 



 


 静寂。


 



 


 クレージュは、

 立ち上がれなかった。


 


「……俺、

 危なかったですよね」


 



 


 アーニャは、

 短く息を吐いた。


 


「……あんたじゃない」


 



 


「力が、

 危ない」


 



 


 そして、

 真っ直ぐ見つめる。


 


「でも――」


 



 


「それでも、

 あんたは止めようとした」


 



 


 クレージュは、

 ゆっくりと顔を上げた。


 



 


「……それだけで、

 十分だよ」


 



 


 風が、

 再び草原を撫でた。


 



 


 六彩は、

 静かに沈んでいく。


 


 まるで――

 自分の力に怯えたかのように。


 


──捕まえるという選択。


──逃げるという選択。


──そして、

 制御するという、

 まだ見ぬ選択。


 


 六彩の少年は、

 その重さを初めて知った。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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