幕間1
クレージュの知らないところでフレイはある男と出会っていた。ある男は何者なのか?そして目的は?
雨は、止んでいた。
だが、空気はまだ湿っている。
◆
古い石造りの建物。
かつては関所として使われていた場所だ。
今は、
誰も立ち寄らない。
◆
「……来たか」
低い声が、
闇の奥から響いた。
◆
フレイは、
ゆっくりと歩を進める。
「……呼び出したのは、
お前だろ」
◆
影から現れた男は、
黒衣に身を包んでいた。
整った顔立ち。
無駄のない立ち姿。
――エイド=クロウフォード。
◆
「久しぶりだな、フレイ」
「……用件を言え」
フレイの声は、
乾いていた。
◆
エイドは、
わずかに目を細める。
「変わらないな。
剣を捨てても、
構えだけは一人前だ」
◆
「……」
フレイは、
何も返さない。
◆
沈黙が、
落ちる。
その沈黙を、
エイドが破った。
◆
「……六彩の兆候が出た」
◆
フレイの呼吸が、
一瞬だけ止まった。
「……どこだ」
「街道沿いの都市。
名もない場所だ」
◆
エイドは、
淡々と続ける。
「対象は若い。
未覚醒。
だが、安定している」
◆
「……あり得ない」
フレイが、
低く呟く。
「六彩は――
安定しない」
◆
エイドは、
静かに頷いた。
「だからこそ、
異常だ」
◆
フレイは、
拳を握った。
「……また、
“回収”するつもりか」
◆
「任務だ」
即答だった。
「世界を壊す可能性は、
管理されるべきだ」
◆
フレイは、
一歩前に出る。
「――管理だと?」
「十五年前、
お前は同じことを言った」
◆
空気が、
一気に張り詰める。
◆
「……灰色の村」
フレイの声は、
震えていなかった。
「覚えているか」
◆
エイドは、
目を伏せた。
「……忘れたことはない」
◆
「俺は、
守ろうとした」
フレイは、
言葉を選ばない。
「何も知らないガキを、
力を持っただけの命を」
◆
「結果はどうだった」
エイドの声は、
低く、冷たい。
◆
「……村は半壊した」
「少年は、
消えた」
◆
フレイは、
歯を食いしばる。
「それでも……!」
◆
「それでも、
世界は守られた」
エイドは、
一歩も引かなかった。
◆
「感情で選ぶな、フレイ」
「選択を誤れば、
犠牲は増える」
◆
フレイは、
静かに笑った。
「……だから、
俺は剣を捨てた」
◆
「もう、
俺は“選ばない”」
「――選ばせる」
◆
エイドの視線が、
鋭くなる。
「……まだ、
同じ過ちを繰り返すつもりか」
◆
フレイは、
まっすぐに見返した。
「違う」
「今度は――」
◆
「あいつ自身に、
選ばせる」
◆
エイドは、
わずかに息を吐いた。
「……変わらないな」
「お前は、
いつも希望を見る」
◆
「希望じゃない」
フレイは、
低く言った。
「覚悟だ」
◆
長い沈黙。
やがて、
エイドが口を開く。
◆
「……まだ、
直接は動かない」
◆
フレイが、
顔を上げる。
◆
「観測を続ける」
「だが――」
◆
エイドの瞳が、
冷たく光る。
「一線を越えたら、
俺は躊躇しない」
◆
フレイは、
短く頷いた。
「……分かってる」
◆
二人は、
それ以上言葉を交わさなかった。
◆
背を向け、
別々の方向へ歩き出す。
◆
雨上がりの地面に、
足音が響く。
◆
エイドは、
立ち止まらなかった。
フレイも、
振り返らなかった。
◆
だが――
二人とも、同じことを思っていた。
次に会う時は、
剣を抜くことになる。
──それでも。
──その選択が、
誰かの未来を奪わないことを。
二人は、
それぞれの正義の中で、
願っていた。
昨日は投稿できず申し訳ありませんでした
体調不良のため早々に寝てしまいました。
本日よりまたよろしくお願いいたします!
みなさんも年末年始お体に気をつけてくださいませ。




