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2-3

街に着いたクレージュとアーニャはギルドへと向かう。

冒険者登録を済ませ酒場で腰を下ろしアーニャと話す。

その中で少し引っかかるワードがアーニャの口から出て…

街が見えたのは、

 夕方近くだった。


 



 


「――あれが、次の街」


 アーニャが、

 顎で前方を示す。


 石壁に囲まれた中規模の街。

 門の周囲には、

 行商人、旅人、冒険者が行き交っていた。


 


「思ったより……人が多いですね」


 


「街道の分岐点だからね。

 情報も、金も、面倒事も集まる」


 


 アーニャは、

 少しだけ肩をすくめた。


 



 


 門をくぐると、

 空気が一変した。


 人の声。

 金属の音。

 酒と汗の匂い。


 


(……生きてる)


 王都とは違う。

 整ってはいないが、

 ここには現実がある。


 



 


「まずは――」


 アーニャが歩き出す。


「ギルドだ」


 



 


 冒険者ギルドの建物は、

 街の中央にあった。


 大きな木造。

 掲げられた剣と盾の紋章。


 


 中に入ると、

 一斉に視線が集まる。


 



 


「……新人か?」


 


 カウンター越しに、

 年配の受付係が声をかけた。


 


「ええ。

 仮登録」


 


 アーニャが答える。


 


「名前は?」


 


「クレージュ」


 


「職は?」


 


 一瞬、迷う。


 


「……剣士です」


 



 


 受付係は、

 じっとクレージュを見た。


 


「……魔力は?」


 


「……あります」


 


「量は?」


 


 アーニャが、

 横から口を挟む。


 


「測らない方がいい」


 


「……?」


 


「面倒になる」


 



 


 受付係は、

 少し考え、肩をすくめた。


 


「分かった。

 仮登録でEランク」


 


 金属の札が、

 カウンターに置かれる。


 



 


「……E?」


 


「最下位」


 


 アーニャは、

 さらりと言った。


 


「でも、

 自由に動ける」


 



 


 ギルドの掲示板には、

 無数の依頼が貼られていた。


 討伐。

 護衛。

 採取。


 



 


「最初は、

 これなんかいいぞ」


 


 アーニャが指差したのは、

 小規模な魔物討伐。


 


「危険度は低い。

 でも――」


 


「でも?」


 


「油断すると死ぬ」


 



 


 その言葉に、

 冗談はなかった。


 



 


 酒場スペースで、

 二人は腰を下ろした。


 


「……ギルドって、

 もっと整然としてると思ってました」


 


「理想だね、それ」


 


 アーニャは、

 木のカップを傾ける。


 


「ここは、

 “強い順に偉い”場所」


 


「ランクで?」


 


「ランクと――

 実績」


 



 


「……力があれば、

 上に行ける?」


 


 クレージュの問いに、

 アーニャは少しだけ黙った。


 


「……上には行ける」


 


「でも?」


 


「目立つ」


 



 


 クレージュは、

 無意識に剣に触れた。


 


「目立つと……

 何が起きます?」


 


 


「変なのが、寄ってくる」


 


 低い声。


 


「国。

 貴族。

 宗教。

 ……回収屋」


 



 


「……回収屋?」


 


 アーニャの尻尾が、

 一瞬だけ止まった。


 


「詳しくは知らない」


 


「でも、

 力を持つやつを

 “保護”するとか言って、

 連れていく連中」


 



 


 胸の奥が、

 かすかにざわつく。


 


(……回収)


 


 言葉が、

 妙に引っかかった。


 



 


「だから――」


 


 アーニャは、

 クレージュを見た。


 


「力は、

 必要になるまで使うな」


 



 


「……はい」


 


 短く答える。


 



 


 その夜。


 宿の一室で、

 クレージュは天井を見つめていた。


 


 王都。

 リシェル。

 フレイ。


 


 そして――

 この街。


 


(……世界は、

 思ってたより狭くて……

 ずっと、厳しい)


 



 


 それでも。


 


 歩みは、

 止めない。


 


 六彩の少年は、

 “冒険者”という仮の姿で、

 世界へ足を踏み入れた。


 


──それが、

 後戻りできない選択だとも知らず

お読みいただきありがとうございます。

そろそろ今年も終わろうとしてます。

みなさんお身体に気をつけて良い年を迎えてください!

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