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いよいよリシェルと再会!
そして敵リーダーたちとの戦い。
クレージュ、フレイは誰かを守るために勝負へと挑んでゆく。
扉の向こうは、静まり返った空間だった。
石造りの牢。
湿った空気。
壁に刻まれた無数の魔法陣。
そして――
「……リシェ」
クレージュの視線の先に、
小さな光があった。
◆
リシェルは、鉄格子の向こうに立つ少年の姿を見て、
一瞬、息を忘れた。
「……クレージュ……?」
信じられない。
でも、間違いない。
胸の奥の温もりが、
はっきりと答えを示していた。
「……来てくれたんですね」
声が震える。
「はい。
迎えに来ました」
それだけで、
リシェルの目に涙が滲んだ。
◆
だが――
静寂は、長くは続かなかった。
「そこまでだ」
低い声が、背後から響く。
闇の中から、
黒鴉の羽の男たちが姿を現した。
幹部ファルゴ。
その左右に、武装した配下が三人。
「六彩の器……
思ったより早かったな」
ファルゴの視線が、
クレージュを値踏みするように走る。
「その程度の力で、
白光を連れ帰れると思ったか?」
◆
フレイが一歩前に出る。
「……ここから先は、
ガキの出番じゃねぇ」
「フレイさん……」
「下がれ。
守るって言っただろ」
だが、クレージュは首を振った。
「……俺も、前に出ます」
剣を握る手に、力がこもる。
「この人は……
俺が守るって、決めたんです」
◆
ファルゴが、楽しそうに笑った。
「ほう……
“決意”か。
それがどこまで通じるか、見せてもらおう」
指が鳴る。
◆
闇の魔法が、
一斉に放たれた。
黒い刃。
絡みつく影。
「……っ!」
クレージュは一歩踏み出す。
(――守る)
ただ、それだけを思った。
火は壁となり、
風は流れを逸らし、
土は足場を固め、
闇は影を飲み込み、
光は、道を示す。
六彩が、一つの意志として働いた。
◆
闇の刃は、
クレージュの前で失速し、
霧のように消えた。
「……なに?」
配下の一人が、声を上げる。
「魔法が……通らない?」
◆
「無理はするな!」
フレイの声。
次の瞬間、
フレイの剣が唸りを上げ、
敵の一人を地に伏せた。
速く、正確で、容赦がない。
◆
ファルゴが舌打ちする。
「……面倒だ」
彼は手を掲げ、
より強い闇を集め始めた。
「ならば――
白光ごと、砕く」
◆
その時だった。
「……やめてください」
澄んだ声が、牢の奥から響いた。
リシェルが、一歩前に出る。
「この人に、
これ以上、手を出さないで」
封印刻印が、淡く光る。
◆
「殿下!」
フレイが叫ぶ。
だが、リシェルの瞳は揺れていなかった。
「……わたしは、
守られるだけの存在ではありません」
胸の奥で、
白光が静かに灯る。
◆
クレージュは、
その背中を見て悟った。
(……一緒に、立つんだ)
剣を、少しだけ下ろす。
力を“押し出す”のではなく、
重ねる。
◆
白光が、
六彩に触れた。
光は増幅されず、
調和した。
眩しくない。
だが、揺るがない。
◆
闇が、後退した。
「……あり得ない」
ファルゴの声に、初めて焦りが混じる。
「白光と六彩が……
共鳴している……?」
◆
フレイが、低く言った。
「……覚えとけ」
剣先を向ける。
「ここは――
“お前らの場所じゃねぇ”」
◆
配下の一人が倒れ、
残りは後退した。
ファルゴは、
悔しげに笑う。
「……いいだろう」
黒い羽根が、宙に舞う。
「今日は、退く。
だが――」
視線が、クレージュに突き刺さる。
「次は、全力だ」
◆
闇が引き、
静寂が戻った。
◆
クレージュは、
牢へ駆け寄る。
「……大丈夫ですか?」
リシェルは、
小さく笑った。
「……はい。
来てくれるって、信じてました」
◆
クレージュは、
鉄格子に手をかける。
そして――
封印刻印が、音もなく砕けた。
◆
二人は、
初めて“同じ場所”に立った。
戦いの中で。
恐怖の中で。
それでも――
確かに、並んで。
──白光と六彩は、
初めて重なり、
そして、離れなかっ
お読みいただきありがとうございます。
リシェルを救出できたクレージュ。
暗い水路の中で再会できたことを静かに
喜ぶ二人…。
次回は物語がもっと動きます。
お楽しみに。




