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1-19

いよいよクレージュとフレイは敵地に侵入した。

そんな中敵との交戦でクレージュの力の片鱗が顔を出した!

夜明けの光が、オベールロワイヤルの外れを淡く照らしていた。


 旧水門――

 今は使われていない、古い地下水路の入口。


 苔むした石段の先から、

 冷たい空気が静かに流れ出している。


「……ここか」


 クレージュは喉を鳴らし、

 剣の柄を強く握った。


「そうだ。

 嫌な匂いが、はっきり残ってやがる」


 フレイは低く言い、

 視線を闇の奥へ向ける。


「覚えておけ。

 地下は視界が悪い。

 音と気配を信じろ」


「……はい」


 



 


 二人は水路へ足を踏み入れた。


 石壁に反響する足音。

 滴る水の音。

 かすかな鉄の匂い。


 クレージュの胸が、またざわついた。


(……近い)


 リシェルの白光が、

 かすかに“こちら”を引いている。


(……間違いない)


 



 


 数分も進まないうちに、

 フレイが片手を上げた。


「止まれ」


 クレージュは即座に足を止める。


 水路の曲がり角。

 その先から、

 人の気配――二つ。


「……来るぞ」


 



 


 影が動いた。


「侵入者だ!」


 黒いフードの男が飛び出し、

 短剣を構えて突っ込んでくる。


 次の瞬間――


「下がれ、クレージュ」


 フレイが一歩前へ出た。


 剣が一閃。


 速い。

 重い。

 無駄がない。

 (牛丼屋の宣伝文句のようだが)


 金属音が一つ響き、

 男の短剣が弾き飛ばされた。


「なっ――」


 言葉を発する間もなく、

 フレイの拳が腹に叩き込まれる。


 男は壁に叩きつけられ、

 崩れ落ちた。


 



 


「……すげぇ」


 思わず声が漏れる。


「見るな。

 次が来る」


 フレイの声は、鋭い。


 



 


 もう一人の敵が、

 背後から魔法を放った。


 ――闇の弾。


「クレージュ!」


「……っ!」


 考えるより早く、

 体が動いた。


 剣を前に出す。


 次の瞬間――


 剣の周囲に、淡い光が集まった。


 火の熱。

 風の流れ。

 光の粒子。


 それらが、

 “自然に”重なり合う。


 闇の弾が――

 霧散した。


 



 


「……は?」


 敵の男が、目を見開く。


「今の……魔法……?」


 クレージュ自身も、

 何が起きたのか理解できていなかった。


(……え?)


 ただ、

 “そうしたら止まる”と

 思っただけだった。


 



 


「……クレージュ」


 フレイが、ゆっくり振り返る。


「今の、意図してやったか?」


「……い、いえ……

 正直……何も考えてなくて……」


 フレイは一瞬、言葉を失った。


 そして――

 小さく、笑った。


「……そうかよ」


 



 


 敵は動揺していた。


「な、なんだあいつ……!」


「六彩……本当に……」


 その言葉を最後まで言わせず、

 フレイが前に出る。


「退け」


 低い声。


 次の瞬間、

 敵は戦意を完全に失い、

 水路の奥へと逃げ去った。


 



 


 静寂が戻る。


 水滴の音だけが、

 ゆっくり響く。


「……大丈夫か」


 フレイが問う。


「は、はい……

 でも……今の、なんだったんですか……」


 フレイは顎に手を当て、

 しばらく考え込んだ。


「……説明は後だ」


 そして、真剣な目で言う。


「だが一つだけ確かだ」


 



 


「お前の力は――

 制御しようとすると、暴れる。

 守ろうとすると、応える」


 クレージュは息を呑んだ。


「……守る、ために……」


「そうだ」


 フレイは頷く。


「それがお前の“使い方”だ」


 



 


 再び、歩き出す。


 地下水路の奥へ、

 さらに深く。


 クレージュの胸の奥で、

 六彩は静かに、しかし確かに目を覚ましていた。


(……行ける)


 怖くないわけじゃない。

 でも、もう立ち止まれない。


 白光は、

 確かにこの先にある。


 



 


 その頃――

 さらに奥の牢。


 リシェルは、

 胸元の小さな温もりに気づいていた。


(……近づいてる……?)


 白光が、

 わずかに、確かに揺れた。


 


──闇の底で、

 六彩と白光は、

 再び近づき始めていた。

リシェル救出作戦が始まった。

フレイ、クレージュはリシェルのところまで辿り付けるのか…

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