ブレスレットが光った夜
夜の横浜みなとみらい。観覧車のライトは幻想的に輝き、港沿いの海風が街を通り抜ける。赤レンガ倉庫周辺はいつもなら観光客で賑わうが、この夜は異様に静まり返っていた。
「……人、いない?」
主人公は自転車を押しながら通りを見渡す。店の明かりは点いているのに、通りには人影がない。遠くから低いうめき声が聞こえる。
その時、すぐ近くで影が動いた。男……のはずの存在が、ぎこちなくこちらに近づいてくる。白く青ざめた肌、虚ろな目、そして不自然な歩き方。声も人間らしくない。
「な、何……これ……人じゃ……ない……ゾンビ?」
恐怖で足がすくむ。息が詰まり、頭が真っ白になる。
突然、男が跳びかかってきた。反射的に避けたが、鋭い痛みが腕に走る――噛まれた!
「痛っ……えっ、まさか……感染する……!?」
噛まれた瞬間、血が滲む痛みに加え、頭の奥で「これはただの怪我じゃない」という直感が走る。目の前の存在は人間ではない――命の危険を直感したのだ。
そのとき、手首のブレスレットが青白く光った。温かさと柔らかな振動を伴い、痛みが一瞬で引く。噛まれた傷口も血が止まった。
「……なにこれ……助かった……?」
視界の端に、光る文字が浮かぶ。仮想の画面のように、頭の中に情報が流れ込む。
スキル取得:ショップスキル
説明:物資を購入・管理できる能力。戦闘能力は無し。
主人公はゾンビ化せずに生き延びた。恐怖で震える手を握りしめながらも、心の奥底で思考が動き出す。
「……なるほど、これで家から出なくても生き延びられる……。物資で人を動かせば、働かずに生き延びられるな……」
窓の外には、倒れた自動販売機、散乱したカート、そして徘徊するゾンビの影。観覧車のライトが揺れるたびに、街全体が不気味に赤く染まる。
この世界で、働かずに生き延びる計画――その第一歩は、今、静かに始まったのだった。




