草刈りしてたら後輩と会った二話
亀更新と言い忘れていたので初投稿です。
「ふんふんふふ〜ん…」
迷宮都市『イリウス』の地下に広がる巨大ダンジョン、その第八階層にて一人気儘に鼻歌をしながら依頼の対象である薬草の採取をしていく。
本ルートからはかなり外れているが周囲にモンスターの気配は無いし、居たとしてもそもそも出て来るのはイレギュラーであっても俺一人で余裕をもって倒せる様なヤツしか出ない階層なのもあり、念の為に使っている《索敵》スキルには無害なモンスターしか引っかからない。
「さてと、ひ〜ふ〜み〜…うん、これ位有れば十分過ぎるな…てか採り過ぎたか?」
依頼とスキルの鍛錬をする為に必要な量となる薬草を採取していたのだが、ダンジョンという特殊な土地の影響で少しでも残しておけばいつの間にやら直ぐに生い茂る為気分良く採っていると、いつの間にやら持って来ていた肩掛け鞄がパンパンになる程に採取してしまっていたのを見て思わず苦笑してしまう。
別に俺だけがスキルの鍛錬をする訳でもないので多くある分には問題は無いのだが、保存する為に《空間魔法》スキルの一つである《異次元鞄》の容量を圧迫する事になるので早目に使い切ってしまいたくはあるのだ。
「ほぼ常時使ってるから容量自体はそこそこあるけど、臨時収入出来た時とか入れられなくなったりするのは嫌だしなぁ…数作ったら暫くはポーションの研究でもしてみるか? …うん?」
今後の活動方針を考えていると何やら本ルート側から《索敵》スキルの範囲に何かが引っ掛かけた為、得物であるバスタードソードと盾を装備し自然体であれども即座に動ける様構えておく。
暫く待っていると数人の足音と聴き覚えのある幾つかの声が困った様な雰囲気で雑談しているのが聞こえてきたので、警戒を解いて声のする側へと歩いていく。
「う〜ん、やっぱりこの脇道は他のルートには繋がってない感じだよなぁ…」
「でも今の私達だとあの猪とマトモにやり合うには厳しいよね…」
気付かれない様に通路の角からコッソリと覗いてみると、そこには以前に初心者講習で俺が担当を務めた少年と少女と言っても良い若さのペアが互いに向き合い頭を悩ませながら唸っていた。
「おーっす、未来溢れるヤングマン! こんな所でどうしたよ?」
「あっ、ジェイク先輩! やったぜリディア、ジェイク先輩が居るなら帰れるぞ!!」
「ダメだよレイジ君、ちゃんと挨拶しなくちゃ…えっと、ジェイク先輩こんにちは」
俺の姿を見て喜ぶ短めの爆発した様な茶髪が特徴的な革の軽装をした剣士のレイジ少年と、そんな彼の目上の者に対して失礼な態度を嗜めつつも明らかにホッとした様な雰囲気をしている、肩甲骨辺りまでストレートにしている黒髪が特徴的で薄い黄緑色の厚めのローブを纏いフードを被った僧侶のリディア嬢。
毎年恒例の収穫期終わりにどっと増える新人達の中で、荒くれ者が多い冒険者志願ながらも珍しく真面目に初心者講習を受けに来た者達であり、序でに言えば俺が担当を請け負った者達でもある。
「はいこんにちはお二人さん、時期的にはそろそろここどころか次の段階に行っててもおかしくないとは思っていたが、流石に脇道はまだよろしくないだろうにイレギュラーでも起きたのか?」
以前ばったり出会った際に第六階層を余裕を持って探索していたので、その日から換算するとこの八階層も余裕を持って探索出来、次の段階である十一階層を攻略している時期の筈だし、それなら先程の話していた『猪』とやらが原因か?
因みに攻略の基準は五階層毎に区画が分けられており、本ルートが適正レベルとするならば、次の階層はプラス五レベル位が安全マージンとなっているのだが、これが脇道に入ると浅い所なら兎も角、モンスターの強さが一気に十レベル位上の危険地帯となる為、迂闊に脇道に入るのはギルドでは推奨されていないのだ。
…何より強いだけで出て来るモンスター殆ど変わらないし、取れる物も大して変わらないから俺みたいな訳アリとか物好き位しか来ないんだよね。
「そうなんだよジェイク先輩、九階層から戻って来てそのまま帰ろうとしてたんだけどさぁ、本ルートの途中になんでか知んないけど『フレンジーボア』が居たから此処に避難してたんだよ!!」
「は? フレンジー? ラージじゃなくてか? 脇道のユニークモンスじゃねぇか」
「大きさはラージと同じですけれど、流石に黒いオーラまで纏っていたら見間違えませんよぉ…」
フレンジーボア、先程地の文で語った殆ど変わらない脇道モンスターと違い極稀に出現する『ユニークモンスター』の一体であり、本ルートには出現しない代わりに討伐適正レベルが十五からモノによっては二十も離れた規格外な化け物である。
「しっかしなんでユニークモンスがメインの方に…ってまさか」
「うん? どうかしたのかジェイク先輩?」
「顔色悪いですけど…もしかして何か心当たりが?」
「さ、さてねぇ…合ってるかどうかも分からないから何とも言えないかなぁ…?」
リディア嬢が鋭い勘を発揮している様で思わず目が泳いでしまうが、多分今回の問題に関しては俺がこの脇道に入ったのが原因だと思われる。
ダンジョンで発生するモンスターは地上で繁殖しているのとは違い意思が希薄でダンジョンに生かされている様な存在ではあるのだが、それでも生存本能の様なものはあり、圧倒的な格上が来れば基本的に逃げ出すし、それに関しては規格外な存在であるユニークも当て嵌まる、てか区画ボスやユニークの方がダンジョンの制約が少ないのか色々とやってくるヤツが多い傾向がある。
恐らく今回のフレンジーボアも今俺が居るこの脇道の隣の脇道に居たのに、圧倒的な格上の気配を感じて脇道から投げ出した結果、本来の強さとは掛け離れた本ルートに出てしまったのだろう。
以前《製図》スキルのレベリングをする為にこの階層を完全踏破した事があるのだが、この脇道よりも出口に近い隣の脇道はこの脇道よりも短かった筈なので、少しでも離れる為に本ルートに飛び出したというのは十分考えられる展開だ。
…てか実際完全踏破してた時に何度か脇道のモンスターが本ルートに飛び出してしまい、その都度そいつらを始末してたから今回の原因に思い至ったのだが…(目逸らし)
「まぁ何にせよだ、取り敢えず駆除しない事にはいけない訳なんだが…二人共魔力に余裕はあるか?」
「うん? まだ半分切る程度にはあるぜ」
「三割未満…です」
唐突な質問に首を傾げる二人だが、ちょっとしたもったいない精神で思いついた事をやろうとしているだけである。
「よし、それじゃあサブウェポン強化の為に一緒に狩るか、フレンジーボア」
「「え゛?」」
〜暫くして〜
「ほれボチボチ最後だぞー」
「えぇい、これでどうだ《シングルピアース》!!」
脇道から逃げ出していたフレンジーボアは急所である喉元へとレイジ少年が作り出した巨大な針をモロに受け、その命を散らせる事となった。
「プギィ…」
「はいお疲れー、パワーレベリングだったろうけど、実際どうよ?」
「俺初めてモンスターが憐れに見えたよ…」
「私も…」
「あるぇ…(・3・)?」
やった事は簡単、俺が最初に《挑発》スキルでタゲを取り、突進して来た所を逆に肉叩きの様な大楯を使って《シールドバッシュ》をカチアゲる様に喰らわせ、すかさず立ち上がる様な姿勢になった猪の背面に回り込み、立派な牙を掴む事で四足歩行状態に戻るのを阻害してやったのである。
そうなれば後はもう元々突進する事しか出来ない猪はステータスの差でマトモに反抗出来なくなり、二人の唯一高レベル相手に防御を抜く事が出来る《無属性魔法》を鍛える為の的の完成である。
人の心? 知らんなぁ? 農家の出にとって害獣系モンスターは怨みの対象なんで。
ジェイクは前世も今世でも農村出身なので害獣ブッコロマンですが、この世界では経験値になると知ったので便利なサンドバッグに格上げされました()




