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グッラブ! 3  作者: 中川 健司
第10、11話 文化祭
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第10話 文化祭 前編 P.10


「痛い、痛い、痛い!ちょ、離せよ!おい!」


健斗は無理やりヒロの腕を引っ張って階段をかけ上がっていた。ヒロの抗議の声なんて聞かないでどんどん突き進む。


屋上のドアを開くと一気に風が吹き上げた。健斗はそんなことも気にせず、ヒロを屋上に連れてくると、ヒロを柵の前に押してやる。


「イテッ!なんだよ?怒ってんの?」


健斗はヒロの問いかけに答えず、息を荒くしていた。ヒロはそんな健斗を見ながら戸惑いを隠しきれず、どうすればいいのかおろおろとしていた。やがて、大部落ち着いたところで健斗がヒロの肩をがしっとつかんできた。


「……どうしてくれんだよ……」


「……はい?」


「はい?じゃねえよ!お、おま、おま、お前のせいで、とんでもないことになっちまったじゃねえかよ!」


フラストレーションが一気に爆発したかの如く、健斗は思いっきり叫んだ。ヒロは耳をぐっとふさいでそれに何とか耐える。


「と、とんでもないことって?別にいいじゃねえかよ。たかが委員会だろ?ちゃちゃっとこなせば――」


「そこじゃねえよ!問題は!そこじゃねえんだよ!!」


「じゃあ、何が問題なんだよ?」


ヒロにそういわれて、健斗は急に口を閉じた。と、思うと突然後ろを振り返った。ヒロはそんな健斗の顔を覗き込もうとして、健斗の正面に回った。見ると、健斗は顔を赤くしていた。


「……どうしたの?」


「……だから、その……つまり……だな……」


「……?」


「……は、……かわ……と……」


「は?何?聞こえない。」


「だからぁ!……早川と……いっしょになっちまったじゃねえかよ。」


健斗のつぶやきを聞いて、ヒロはしばらくの間きょとんとしていた。さぁーっと風が吹き抜ける音が響いた。健斗はバツが悪そうに下をうつむいていた。すると、ヒロが手を顎に添えて「ははーん」と何かわかったような言いぐさをしてきた。


「なるほど。あ、なるほど。そういうことね。」


「…………」


「つまり、あれだ?つい最近まで好きだった女の子と、二人っきりの委員会になっちまって、どうすればいいのかわからない……助けてー!って、わけか?」


「わかってんなら、みなまでいうなよ!」


ヒロは笑いながらあきれるようにため息をついて、柵がある方へと歩いて行った。そして柵によりかかると、苦笑いを浮かべて言った。


「別に大したことじゃなくね?お前の好きな奴は、早川じゃないんだろ?」


「それは……そうなんだけど……」


そのとおり。健斗の好きな人は、今はもう違う。健斗の本当に好きな人は、一番近くて、どこか遠く感じる存在。しかし、だからこそ……それが問題だったりする。


「それに、早川は知らないんだろ?お前が早川のこと好きだったってこと。」


ヒロのその問いに健斗は一瞬ギクッとした。そして、その反応に戸惑っていると、ヒロが驚きながら健斗に言ってきた。


「え?知ってんの!?」


「いや……知っているというか……」


「告ったの!?いつ?」


「こ、告ってねーよ。ただ……それに近いことは……したかも。」


健斗は確かに、早川のことがつい最近まで好きだった。それは揺るがない事実だ。だからこそ、色々頑張った。


松本事件のときも、早川が馬鹿にされた怒りから健斗は頑張ったところもあるし、あの日の晩健斗は告白紛いなことをした。


夏休みに入ったときには、早川と二人きりで市内でデートしたし、その日の帰り……あろうことか、早川のことを抱き締めてしまった上に勢いでそのまま告白をしようとした。またしても失敗したけど……


なのにだ。健斗はこの間、早川との帰り道……自分は麗奈のことが好きだと告白してしまった。あれだけ散々やっておきながら、違う女の子が好きだと言ってしまった。もしかしたら、あれは早川に対してとても失礼なことをしてしまったのではないか、と健斗は日にちが経つにつれ思い始めていたのだ。


「簡単に言えば……散々思わせ振りなことをして振り回しておいて、実は違う女が好きだったと……まぁ、それだけ聞けばお前はどうしようもねぇ、とんだクソ野郎だな。」


ヒロにはっきり言われて、健斗は本当に胸に何か尖ったものが突き刺さった思いになった。そんなダメージを受けている健斗を見て、ヒロは可笑しそうに笑った。


「いや、でも早川だぜ?あの早川が、お前に対してそんな風に思うかな?」


「だからこそだよ。早川は優しいから、口にはしないけど……心のどこかで俺のこと軽蔑してんじゃないかなって思う。」


「そうかなー?考え過ぎじゃね?あのー、あれだよ。罪悪感的なもんに苛まれてるだけだよ。お前。」


「本当にそう思う?」


「まぁ、少なくとも俺はな。だって今までずっと見てきたわけだぜ?お前と麗奈ちゃんのこと。だから、仮に早川がお前の気持ちに気づいてたとしても、納得はしてるんじゃない?」


ヒロは自分でそういうと、まるで嘲笑うかのように健斗にいった。


「……つーか、俺は早川はずっとお前ら二人は両想いだと思ってると思うげどな。」


「は?何で?」


「いや、見てれば分かるだろ。この間も話したけど、年頃の男女が一つ屋根の下。行きも帰りもいつもいっしょで、事情を知らないやつから見ればただのイチャイチャカップルにしか見えないって。そんなやつをいちいち気にしたりすると思うか?」


「…………まぁ、そうかも……そう、なるのかな……うん……」


「自分では自覚はなくっても、他人から見たら全然違う見方ってのはこの世界にはいっぱいあんの。まぁ、つまりだな。お前には最初から麗奈ちゃんしか選択肢はなかったってわけだ。」


「そ、そんな言い方はないだろ。俺だって……早川のことは……本気だったし……」


でも、ヒロの言うことは何も間違っていない。好きな女の子がいて、ほかの子を好きになるということはよくあることだし普通のことかもしれないけど……健斗の場合は、そのどちらにも手をかけようとしていたと捉えられても仕方のないことである。実際そういう風になっていたのだから。そう考えると、健斗は耐え難く憂鬱な気分になった。自分の知らないところで知らない自分が作り上げられている気がして、変な気分だ。自分は全くそういうつもりはないのに。


そんな健斗を見ながら、ヒロはふーっとため息を吐いた。自分でも言い過ぎたと思ったのか、決まりが悪そうな顔をしている。


「とにかく、お前の問題は……自分の中の早川に対する気まずさを解消したいってわけだな?」


「まぁ、早い話で言えばそういうこと。二人っきりになったりしたら、何話していいかわかんなくなるよ。」


「…………そんなん簡単じゃねえか。ちゃんと伝えればいいんだよ。」


ヒロにそういわれて、健斗はきょとんとした表情でヒロを見つめた。


「伝えるって?」


「だから、普通に。ちゃんと早川のことが好きだったってことを言えばいいんじゃない?まぁ、変な話にはなっちゃうけどさ。誠意を伝えれば、仮に早川にお前が思うように思われていても、わかってもらえるんじゃない?」


「早川に告白しろってことかよ?」


「ちげーよ。お前は早川のこと、中二のころから好きだった。これは事実だろ?まぎれもない事実。それを、伝えればいいんだよ。」


「好きってことを伝えるんじゃなくって、好きだったってことを伝えろってこと?なんか……めちゃくちゃ変な話じゃない?それ。」


「わかってるよ。めちゃくちゃ変な話。でも、そういう何つーかな……誠意?純粋さ?そういうものを早川にわかってもらうんだよ。誑かしたり、思わせぶりだったんじゃない。あの時は、本当に早川のことが好きだった。それをわかってもらうんだよ。」


ヒロの言うことがようやくわかってきたような気がした。それでも、へんてこな話であるのには変わりはないし、早川からしたら急に何のことを言っているのかわからなくなるかもしれない。だって、これは健斗自身のやるせない思いの問題なのだ。


「早川……引かないかな?勘違いしたり……しないかな。」


「さぁ?そこはお前でうまくやれよ。でも……この間だって、似たようなことしたじゃん。自分が納得するまで、気が済まないんだろ?お前は。」


ヒロにそういわれて、健斗はしばらく黙りこんだ。やがて素直にうなずき返して見せた。そうだ。これは自分自身の問題だ。自分は今、間違いなく麗奈のことが好きだ。その思いは揺るがない。だから、そのためには早川に対する想いと決別する必要がある。だから、ちゃんと早川にわかってもらおう。自己満に過ぎないが、健斗には必要なことなのだ。


「よし。この機会に……俺、やってみるわ。」


健斗は自分自身に誓いを立てるかのようにぐっと握り拳を握った。ところが、この決意が後に問題の引き金になることをこのとき健斗もヒロも予想なんてしていなかった。












ようやく、新展開になってきました。ここまで、お話がスムーズに進んでいます。


かなり方向性が替わってしまっているため、皆さんの反応が心配です……


もし、よろしければどんどん感想や評価をお願いしまーす!


あ、もう一つ!ここで告知するのも変な話ですが、近いうちに番外編を載せます。


番外編はグッラブ!2の方に載せるつもりです。投稿した日には活動報告の方で、発表いたしますので、ぜひ読者の方はチェックをお願いしまーす!

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