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グッラブ! 3  作者: 中川 健司
第10、11話 文化祭
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第11話 文化祭 後編 P.24

学校に着いてから、いつも使っている学校の駐輪所は今日は使用禁止だということを知った。仕方がないので、学校から少し歩いたところにある有料の駐輪所で自転車を置いとくことにした。


一時間100円で、半日以上は700円である。妥当な値段なので、健斗とヒロは半日分のお金を管理してるおじさんに払って再び学校に向かった。


「まったく。今日に限って駐輪所が使えないなんて。」


「今日は他校や地域の人がいっぱいくるからなー。俺らみたいなやつがまだまだいそうだな。」


そんなことを話しながら、学校に着く。校門はいつもよりも派手になっていた。「神乃崎高校 文化祭」という看板が高らかに上げられていた。校門からは出店がずらーっと並んでる。とはいえ、この学校は他の学校に比べてクラスのものというよりも、部活動のものの方が多い。まだ八時五分前なので、ちらほら人がいないところもあるが、ほとんどの店は人がいて準備を始めている。


たこ焼きに焼きそば……うん。王道だ。射的に輪投げ……これは、まぁありっちゃありか。サーターアンダーギー……すごいな。こんなものまで売っているとは。


「今回の文化祭、力入ってんなー。こんなに出店とかあったっけ?」


「確かに。つっても、俺二年ぶりだから余計にそう思う。」


「あ、そっか。一昨年も、去年もお前行かなかったのか。引きこもってたもんな。」


「お、一昨年はそうかもしれないけど……去年は違うよ。去年はバイトしてた。」


「中3だったくせに。バイトって言っていいのかよ。」


「……そうだな。手伝ってた。」


そう。あのころはまだRYUでの仕事は名目上、ただの“手伝い”というものだった。竜平とは幼いときからよく可愛がってもらっていて、健斗にとっては親戚の叔父さん、それ以上の存在だったのだ。健斗が好き好んで店の手伝いをしていた。むろん、給料も“お小遣い”ということで、一日、3000円をもらってたっけ。高校に入ってから、正式にバイトという形になり、“お小遣い”も給料になって本来の時給830円になった。


そういえば、最近竜平の音沙汰が耳に入ってなかった。竜平はもう、この街にはいない。という言い方は少し物寂しいが、竜平は店舗を市内の街に移した。今頃どうしているだろう。今日、文化祭に顔を出してくれるよう電話してみるべきだったかもしれない。でも、仕事があるからそういうわけにもいかないだろう。


今度、こっちから顔を出しに行こう。健斗はそう胸に決めた。


昇降口へ向かって、下駄箱で靴を履き替える。下駄箱の近くには来賓用のスリッパとビニール袋が置かれていた。この辺は委員会の仕事でもちろん健斗も手伝った。


手前の階段を上って、一年のフロアまで行く。まだ8時五分前だというのに、一年のフロアは賑わっていた。全体の集合時間は9時であるのにも関わらずだ。


「あれ、山中と真中じゃーん。」


健斗とヒロが自分のクラスに向かっていると、それに声をかけてきたのは山下だった。大きな段ボール箱を腕いっぱいに抱えている。


「おう。早いんだな、お前も。」


「まぁな。つーか、お前らも早くね?」


「俺は委員だし。早く来て色々準備しないと。」


「ふーん。ご立派、ご立派。っていうか、サッカー部の集まりの方もあるらしいけど行く?」


「あぁ、ちゃんと行くよ。つーか、この三人で昼からだろ?仕事は。」


「そっ。ちゃんとわかってんなら大丈夫だな。じゃ、俺これを下に持ってかなきゃだから。またあとでな。」


山下はそういって、階段の方へと歩いていった。


「……山下って、根はいいやつで真面目だよな。あんな外見だけど。」


「かもな。さっさといこうぜ。この分だと、俺らのクラスの方ももう結構集まってんじゃない?」


健斗がそういうと、ヒロは軽く頷いてまたあるきだした。自分たちのクラスの前まできて、中に入るとそこには予想以上の人数が集まっていた。というよりも、全員揃っているのではないだろうか?


「お、山中とヒロ来たな?もうみんな準備してるぜ。」


「お、おう。つーかみんな早くね?まだ8時だぜ?」


「初めての文化祭だから、みんな気合い入ってんだよ。ヒロ、お前確か飛脚の役だったろ?多目的室で、通しで最後の劇の練習してるから、一応行けば?」


「一応って何だよ!?行くよ、もちろん行くよ!」


ヒロはそういって、鞄を健斗に任せそのまま多目的室へ向かってダッシュしていった。まぁ、言っちゃ悪いが飛脚の役の出番はほとんどない。冒頭の部分で、通行人として歩くくらいだ。つまり、エキストラだ。


健斗はそんなこと考えながら、呆れたようにため息を吐いた。


それにしても、本当にみんなはすごい。こんなに早く、みんなが一同となって集まっている。こんな風に纏まれるのは、この地域特有だと健斗は感じていた。だとしたら、自分もぼけっとしてられない。正直な話、最近ずっと気が滅入っていて、文化祭が楽しめるかどうか疑問だった。


でも、そんなこと言ってられないし……もうそんなことを考えるのはやめよう。今日はせっかくの文化祭だ。何もかもを忘れて、今日という日を楽しもう。健斗はひそかにそんなことを決意した。



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