第9話 新たなる決意 P.10
半年間放置してしまい、もうしわけございませんでした!
ずっと更新しようと思っていたのですが、何故だか出来ない日々が続いていました。
とりあえず!このグッラブ!3を再スタートいたします!
「お前、後で絶対恨んでやるからな」
「あーん?」
ヒロは聞こえない振りをして、ニタニタと笑っていた。健斗はそんなヒロに引きずられていく
健斗が遅刻をしたくない理由は、別に優等生振りたいからとか、人間性の問題として時間にルーズなやつになりたくないからとか、そう言ったものではない
理由は我が母親にある。小さい頃から母さんは時間にうるさい人だった。小学校のときだって、ちょっと遅刻になりそうになったくらいでかなり叱られたのを覚えている
時間を守るのは人間として当然でしょっ!
親として子の人間性を真っ当にしたいからだというのが分かるが、健斗の性格上その全てを受け入れることは出来ない
だが学校に遅刻をしないというのは守ろうと考えていた。あのときみたいに叱られるのは嫌だからだ
しかしそんな健斗の概念もこの男によって全て崩された
ヒロはどこに向かうのかと思えば、やはり屋上であった。そういえば夏休み明けから、屋上を開放すると学校は方針を変えたらしい。理由は定かではないが、健斗がこの場所を独占出来ることはなくなった
半年間紛失ということになっていた屋上の鍵は、こっそり職員室の中の適当な先生の机の下に投げ入れておいた
見つかるのも時間の問題であろう
屋上に着くとヒロは健斗を放した。今日は風が穏やかで、寒くもなく暖かくもない風が少し心地よい
「で、話って何だよ」
健斗は早速話に入ろうとした。そのときホームルームの始まりを告げる鐘の音がなった。完全に遅刻扱いとなったわけだ
これで大したことのない話だったらぶん殴ってやる
本気でそう考えていたので、健斗は次第と手に力がこもっていた
「うん。それなんだけどさ、俺、昨日帰ってちょっと考えてみたわけよ」
「何を?」
「昨日お前らに言われたこと。冷静に考えてみて、ちょっと一理あるなぁって……」
健斗は握りしめていた拳をふっと緩めた。どうやら真剣な話みたいだから、ちゃんと聞いてやろうと思った
「そう思うなら、佐藤と仲直りしたのかよ」
「それは……まだ」
ヒロはばつが悪そうにため息をついた
「昨日ちょっとあいつに言い過ぎたかも……俺のこと真剣に考えてたのにな」
「そうだな。あれは一方的にお前が悪い」
「はっきり言うね。お前」
「自覚してんだろ?」
健斗はやけに頼りなく見えるヒロの背中を見て健斗はため息をついた
「で、話ってのは、佐藤との仲直りの方法について?」
ヒロは黙り込んで、健斗から視線を外した。爽やかな風が二人の間に流れた。
健斗は少し違和感を感じながらヒロを見つめた。何かを言おうとしているのだが、言葉が詰まっているようだ。
ヒロはしばらくしてから柵の方に歩み寄った。そして遠くを眺めて真剣な表情を浮かべている。
いつものヒロらしくない。
健斗はそう思った。そしてそれがさっきから感じていた違和感そのものだった。
「ヒロ?」
「お前覚えてる?」
「え?」
ヒロは遠くを眺めたまま健斗にそう言った。
「中学の時さ、お前倦怠期だって言ってたときあったじゃん?確か一年のとき」
「……覚えてるよ。」
「そんときの翔が言ったことも、覚えてるよな?」
健斗は少し黙り込んで、そのときの言葉を頭の中で反芻した。
翔のあの言葉があったから、またサッカーを楽しめるようになったのだ。
「当たり前だろ……忘れるわけねーよ。」
「うん……」
また沈黙が続いた。健斗はなんとなくヒロの言いたいことが分かっていた。そして、何故ヒロがハンド部を辞め、苛立ちを抑え切れず、佐藤とあんな風に喧嘩をしたのか……その理由が分かったような気がした。
「ヒロ。お前さ……サッカーやりたいんだろ?」
健斗の一言がヒロの胸に突き刺さった。