第9話 新たなる決意
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あらすじ
夏が終わり、新学期が始まる
サッカーをやりたい、でもその決意が未だに固まらない。そんな健斗の元に、サッカー部員から勧誘が……
だが本当にサッカーをやっていけるのか、健斗は不安に思っていたそのときに健斗の元にある人物が訪れる……
「お前に……後を任せたい」
登場人物紹介
山中健斗……本編の主人公。意地っ張りで少し無愛想なとこがあるが、本当は優しい。中学のとき、“白魔導士(ホワイトマジシャン”の異名がつく天才サッカープレイヤーだった。麗奈に告白されて、戸惑っているのだが……?
大森麗奈……本編のヒロイン。脳天気な猫型娘。美少女だが性格に問題あり……健斗のことが好き……なのだが……
真中ヒロ……健斗の幼なじみ。麗奈に惚れてたが、諦める。健斗と同じく、再びサッカーに対して熱が入る
早川結衣……健斗の意中の女の子。中学のときに恋した翔のことが忘れられずにいるが……
佐藤愛美……健斗の友達。活発な女の子。だが、実は女の子らしい部分も?
松本絢斗……神乃高で知らぬ人のいない、元サッカー部主将。健斗に再び接触を求める
小山明信……U-18のエースストライカー。健斗とは面識がある、尚健斗のことを一役買っている
「あっという間だったなぁ」
「え?」
まだ秋風とは言えない、温い風を浴びながら山中健斗は呟くようにそう言った。学校の昼休み、健斗は真中ヒロと共に独占している屋上で黄昏ていた
「夏休みだよ。あっという間に終わっちゃった」
「そう?」
「そう感じない?」
「いや、分かんねー……でもなんとなく分かるかも」
ヒロはそう言うと大きく欠伸をして、床にゴロンと寝転んだ。健斗はそんなヒロをじっと見る
夏休みは終わり、学校では新学期が始まっていた。神乃高は三期制で、夏休みが終わってから二学期が始まる。
一学期の成績は決していいものではなかった。特に健斗は数学が苦手なためか、テストでも赤点をとってしまったため親には見せられない成績がついてしまった。
だがヒロは違う。理系の頭を持ったヒロはきっと成績なんて余裕だろう。だからこんな風に悠長にいられるのだ
「まぁ、楽しかったじゃん。初めての高校の夏」
「んー……楽しかったっていうより、大変だったな」
と健斗は苦笑してそう言った。確かに今年の夏のは色々なことがあった
七夕祭で麗奈から告白を受ける。そしてその後夏休みに入って、麗奈の帰省事件
だが、一番忘れてはいけないのが、松本事件だろう。あれは本当に大変だった
「言えてる。お前、今年の夏は結構忙しかったな」
とヒロが笑いながらそう言ってきた。健斗は顔をしかめてヒロを睨みつけるように見下ろした
「茶化すなよ。つーかさ、お前本当に辞めたの?」
「何が?」
「何がって……ハンド部だよ」
「あぁ〜……うん。辞めたよ?夏休みが終わる直前に」
ヒロはハンド部を辞めた
健斗がその話を受けたのは、夏休み中のときである。麗奈の誕生日という行事があって、そのためにプレゼントを買いに隣町まで出かけていた
そしてそこで喫茶店でお茶をしているときに、ヒロはふとそう口にしたのである
結構流すような感じで言ってたので、あまり気にはしてなかったのだが、どうやら彼は本気だったらしい
「でも部活止めたら暇だよなぁ〜……毎日毎日、何してんだろ」
「さぁ。俺はバイトとかあのバカの送り迎えとか……」
「バイトかぁ……俺もバイトやろっかなぁ」
「あ、何ならウチ来る?」
「バイト募集してんの?」
「……多分……してない。でも俺から頼んでみようか?」
健斗の頼みであれば店長なら真剣に取り合ってくれるだろう。だが、あまり期待しない方がいいように思えた
商店街の小洒落た小さな喫茶店、RYUだが、実際バイトを雇う必要性はないように思えた
店長でありマスターである竜平さん一人で、何でも出来てしまうからだ
オーダーを取ったり、掃除をしたり、コーヒーを入れたり、それを平行して出来るからだ
というのは、神乃崎という比較的人口の少ない田舎町だからというのが主な理由だろう
詰まるところ、普段は忙しいと言えるほど客の出入りは激しくないのである
だが、そんなゆったりとした風潮も神乃崎のいいところである
時に旅行者がRYUに訪れたとき、落ち着いていて和むと評判だった
「ん~……いいよ。別に。まだやるかどうかも分かんねーし」
「そっか」
ヒロは呑気に大あくびをして、眠そうに目を擦った。健斗はそんなヒロを見ながらちょっとだけ笑う
「けど大変だな」
「何が?」
「ハンド部だよ。お前がいなくなったら大損害じゃないの」
「あぁ……まぁ、そーかもな」
まるで他人事のようにヒロは呟いた
「先輩たちも引退したし。これから大変だと思うぜ?ハンド部」
「引退……ね」
健斗はその言葉を聞いて、少しやるせない気持ちになった
「三年はもうとっくに引退してんだよな」
「夏にな。どこだってそうだろ?」
そう言ってから、ヒロはあっと声を上げて健斗を見て、にやりと口元に笑みを作った
「一つだけ。サッカー部は秋まで」
「選手権だろ?でも、今年は駄目だったんだよな?」
「んあぁ。運悪く、強豪とあたっちまったんだと」
「……松本絢斗がいても?」
健斗がそう言うとヒロは顔をしかめた。その名前をあまり聞くのはよろしくないらしい。健斗はすぐに口を噤んで、わざと目をそらして空を見上げた
松本絢斗……それは今からちょうど二カ月前に遡る。早川の好きだった、元サッカー部主将の松本絢斗と健斗は勝負をした
松本絢斗が問題を起こしたということでほぼ全校生徒が注目した松本事件は……健斗やその周りにも深い爪痕を残した
けど健斗はそれを乗り越えることが出来た。それから、健斗にはある思いがめぐるようになっていた
「……なぁ、今年の選手権はどこが県代表になると思う?」
健斗はヒロにそう聞かれた。健斗はさぁっと素っ気なく答えを返した
「見当ぐらいつくんじゃねーの?」
「お前は?」
「お前に聞いてんだよ」
健斗はしばらく黙り込んだ。見当……それは違う。ほぼ間違いなく、そこが勝ち抜くだろうと健斗は考えていた
「……立川高校……」
健斗がそう呟くと、ヒロは納得するように大きく頷いた
「“小山”さんがいるもんな」
「それもあるけど……」
健斗は口を閉じて、ある人物を思い出していた
中学のときに……彼と出会ったあの日のことを……