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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

君との明日は

作者: 酒乱

あの日が近づくと鮮明に描かれた夢をみる。


私は、古白という名前から白と呼ばれることが多かった。 頭のよさも人並み程度、 特技だってないもない。ただ一つだけ、自慢できるとすれば動画アプリで活動しているため、SNSのフォロワー数がちょっとだけ多いということだ。そんな私には最近気になる人がいる。綺麗に伸ばされている黒い髪、透き通るような白い肌子だ。 高校へ入学してから、一ヶ月が経ちそうだというのに、その子はずっと一人だった。彼女の名前は由良、自己紹介があったから知っている。

とある授業で二人一組を作らなければいけなくなった。 私は、誰とでも話すことはできるがネットの活動に力を入れていたため固定の友達を作っていなかった。だから、組む人もいない。 これは、由良に近づくいい機会だと思い声をかけた。由良は怯えた様子だったが、受け入れてくれた。 近くで見るとすごく綺麗だった。真っ白で、凹凸が綺麗な手で字を書く姿に見惚れてしまった。すると、由良の手には薄く自傷痕があった。あとは数年前に結構深く切ったものだと思う。 由良について、さらに気になった。 過去と今、全て知りたいと思った。

全て知る、現在の好きなこと、嫌いなことから知っていこう聞いてみた。 好きなことはイラストを書くこと、 SNSの投稿を見せてもらったがすごく上手だった。私がネットでの活動の際に使っているイラストも書いてくれていた。その活動者が私だといつかはばれてしまうだろう (笑) 嫌いなことは夜寝ること、 朝が来るのが怖いんだって。 原因はどこにあるのだろう。 学校なのか家なのか。 まだそんなに親しくなれていない私は、何も聞けなかった。

家に帰り、由良のSNSを見た。 何度見ても飽きない綺麗なイラストだ。 一通り最後の投稿まで遡ってみた。 意図的に残してあるのかは分からないが、家族からの暴力や自傷行為関連のものがいくつかあった。全部深夜の投稿だった。私は、このことについて本人から聞きたくてしょうがない。連絡先も持っていないし、 SNSから行ったら怖がると思う。 そもそも、親しくないのに聞くのはよくない。もやもやしながら考えていたら、いつの間にか眠りについていたらしい。電気はついているが、空は明るくなっていた。 今日も学校へ行く。 勉強するとかの理由じゃなく由良に会うためだけに。

朝早くから由良は学校に居た。 家にたくないのだろう。 話しかけても普通に喋ってくれる。 心は開いてくれたみたいだ。 今日は、朝から放課後まで、ずっと話していた。 意外に面白くて、私の心も落ち着いた。ただ、心臓だけはいつもより激しく動いている気がした。 放課後は学校が閉まる八時までいた。 家に帰りたくないんだって、私と話すのが楽しいから。それだけの理由ではないことを私が知っている。 けど知らないふりをした。

それから半年が経った今日は、由良の誕生日だ。学校に遅くまで残ったり、出かけたりする毎日を過ごしていた。 朝から晩までずっと由良の綺麗な笑顔を見て過ごしていた。その笑顔をここ一週間くらい見なくなった。

由良は母子家庭で基本母と二人で過ごしていた。しかし、由良の母親にはしばらく前から恋人がおり、お腹にはその子供がいた。 あまり目立っていなかったため、由良は気づかず一週間ほど前に急に聞かされ知った。 そこから母親の恋人との同居生活が始まった。母親たちはお腹の中の子にしか興味がない。 今までより虐待がひどくなった。 特に母親の恋人からの暴力が酷い。 由良の体にはあざが増えていった。

今日は誕生日だから楽しんでもらいたい。 プレゼントもちゃんと用意して、放課後屋上でひっそりお菓子パーティーをしようと思い、たくさんお菓子も持ってきた。 あと、はっきりとわかった自分の気持ち。理解なんてされないだろうし嫌われる覚悟を持って伝えようと思った。 放課後のことを考えると楽しみな反面大きな不安でいっぱいだ。 放課後までの時間はあっという間に過ぎていった。

放課後の屋上は肌寒かった。 しかし、私の体はいつも以上に暑かった。 緊張して、上手く動かない手でお菓子をカバンから取り出し広げる。 プレゼントも出して、 渡す。 すごく喜んでいるように見えた。なかなか勇気がでず、気持ちは伝えられないまま。 空が真っ赤に染まろうとしている。 お菓子はどんどん減っていく。ここで言わなければダメだと思い、声を出す。 上手く声が出たかは分からないけど、目があった。その勢いにまかせ私は言った。

「好き。 嫌われたっていいから伝えたかった、好きって。 友情とかそんなんじゃなくて恋愛的に。」

その言葉を聞いて由良は

「ありがとう。私も白が大好きだよ。 出会う前から好きだった。」

と答えた。二人の気持ちは一緒だったのだ。だが由良は続けて言った。

「気持ちは嬉しいけど、ごめんね。付き合えないや。 今まで楽しかったよ。ありがとう。」

と。その後由良は着ていたカーディガンを脱ぎ、私に持たせてきた。 半袖になった由良は、あざだらけの体で私に抱きついてくる。 泣きながら強く抱きついてくる。何となく離してはいけない気がして、強く抱きしめ返す。 空の色が真っ赤で綺麗だ。由良は私にカーディガンを持たせたまま離れた。そして

「大好きだよ、わすれないでね。」

と聞いたこともないくらい大きな声量で叫んだ。叫ぶと同時に屋上から飛び降りた。私はカーディガンを抱きしめながら暫く動けなかった。

私の恋は報われなかった。 報われなかったけど、最期まで私の親友でいてくれた。 誕生日と命日の日、それからちょうど10年が経った日の、空が真っ赤になった時に子供が生まれた。 子供が生まれても、あの日が近づくと鮮明に描かれた夢を見る。 同性を好きになり、両思いだった、それを知ることができただけで素晴らしいことだったと何回もあの光景を見て思った。

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