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「……みぃちゃん、僕がこうして抜け出す意味、わかってるでしょう?」
「うん」
おにいちゃんが少し目を細めた。
「それなら、僕をそんなに信頼してるのかい?」
棘というよりも、少しささくれだった木肌だとか、やすりだとか、もう少しささやかなものを思わせる、鋭くざらついた声だった。
「それとも、たかをくくっているのかい?」
そう言って、おにいちゃんは私の肩を掴んだ。
何故かヤケになっているようなおにいちゃんを、私は見つめ返した。
「……おにいちゃん」
「何?」
「……なんで、拗ねてるの?」
そのヤケをポーズとかではなく、本気で拗ねてるんだと、何となくで私は思っていた。
おにいちゃんらしくもない、でも、結局おにいちゃんだって元々は人間だと言うのだから、それなら、その感情は同じようなもののはずだと私は理解していたから、らしくなくとも、おかしくはないと思っていた。
「……拗ねてる? 僕が?」
「うん」
「……みぃちゃんには、そう見えるの?」
「うん」
ぎりっ、とおにいちゃんの指が肩に食い込んだ。
睨みつけるような目で、おにいちゃんは私を見ている。
静けさと狂おしさが入り混じって揺らぐ目は、今までのような火ではなく、水面に揺らぐ月のようだった。
「おにいちゃん」
「……」
「おにいちゃん、拗ねてないなら何?」
おにいちゃんが耐えかねたように目を逸らした。
やめてはいけない、と思った。
このままだと、おにいちゃんは拗ねたまま、夜闇に溶けてしまうのではないかと思ったのだ。
「おにいちゃん。私、何かした?」
「……何も、何もしてないよ」
小さな声でおにいちゃんは答えた。
自嘲の声でそう答えた。
痛みを感じるほどに肩に食い込んでいた指が離れた。




