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ガルデニアの残り香  作者: 板久咲絢芽
回想 4 袋小路と果(はたて)
29/44

6

「……みぃちゃん、僕がこうして抜け出す意味、わかってるでしょう?」

「うん」


おにいちゃんが少し目を細めた。


「それなら、僕をそんなに信頼してるのかい?」


(とげ)というよりも、少しささくれだった木肌だとか、やすりだとか、もう少しささやかなものを思わせる、(するど)くざらついた声だった。


「それとも、たかをくくっているのかい?」


そう言って、おにいちゃんは私の肩を掴んだ。

何故かヤケになっているようなおにいちゃんを、私は見つめ返した。


「……おにいちゃん」

「何?」

「……なんで、()ねてるの?」


そのヤケをポーズとかではなく、本気で()ねてるんだと、何となくで私は思っていた。

おにいちゃんらしくもない、でも、結局おにいちゃんだって元々は人間だと言うのだから、それなら、その感情は同じようなもののはずだと私は理解していたから、らしくなくとも、おかしくはないと思っていた。


「……()ねてる? 僕が?」

「うん」

「……みぃちゃんには、そう見えるの?」

「うん」


ぎりっ、とおにいちゃんの指が肩に食い込んだ。

(にら)みつけるような目で、おにいちゃんは私を見ている。

静けさと狂おしさが入り混じって揺らぐ目は、今までのような火ではなく、水面(みなも)に揺らぐ月のようだった。


「おにいちゃん」

「……」

「おにいちゃん、()ねてないなら何?」


おにいちゃんが耐えかねたように目を()らした。

やめてはいけない、と思った。

このままだと、おにいちゃんは()ねたまま、夜闇(よやみ)に溶けてしまうのではないかと思ったのだ。


「おにいちゃん。私、何かした?」

「……何も、何もしてないよ」


小さな声でおにいちゃんは答えた。

自嘲の声でそう答えた。

痛みを感じるほどに肩に食い込んでいた指が離れた。


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