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ガルデニアの残り香  作者: 板久咲絢芽
回想 3 行く末と目的
22/44

7

その表情は、荒涼(こうりょう)とした、という言葉がぴったりで、今までの「おにいちゃん」という顔の裏に、千載(せんざい)旅路(たびじ)()み疲れて、ただ何かに(すが)るように歩いてきた私の知らないおにいちゃんがいるのだと、それで知った。

同時に、その目の奥の熾火(おきび)(すが)っているものは何なのかが、気にかかった。


「みぃちゃん?」


おにいちゃんに声をかけられて、私は我に返った。


「えっと……あの、ごめん。踏み込みすぎた」


見てはいけないものを見たような気がして、私が謝ると、おにいちゃんは肩を(すく)めた。


「何を謝っているのさ」

「……」

「みぃちゃん」


言いながらおにいちゃんは、また一つ(ひざ)の上の袋を開けた。

その中には小さなアルミカップに(しぼ)り出されたガナッシュがいくつか入っていて、そのどれにもカラースプレーやアラザンが乗っている。

ぺきり、とアルミカップを()くとおにいちゃんはガナッシュを(つま)んで、私の口元に差し出す。


「……」

「これ()、僕の仮説の実証過程だ」


(あん)に私を利用しているだけだと、おにいちゃんは(ほの)めかした。

そのくせ、どこかその声が揺れていたように私は感じた。

少なくとも、私の知っているおにいちゃんは、悪役というものがおおよそ似合わないのだ。

それなのに、共犯者となって以降、こうして突然悪ぶって見せたりするものだから、逆に私はおにいちゃんを信用していたのだと思う。

だから、その時も私は半分(あき)れながら、口を開けた。

軽く投げ入れられたガナッシュは私の口の中でゆるりと甘く()けて、アラザンだけがごろりと残る。


「先に言っておこうか」


目だけで何を、と問うと、おにいちゃんはいつもの調子で笑った。


「何、もしも僕の仮説が正解で、本懐(ほんかい)をなし得たなら」


がり、と口の中に残ったアラザンを私は()(くだ)きながら続きを聞いた。


「僕のことは、忘れていいよ。みぃちゃん」


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