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ガルデニアの残り香  作者: 板久咲絢芽
回想 3 行く末と目的
20/44

5

「まさか。会ったことないし。そもそも彼らは火の玉としか認識されない。

 本当に実体があるのか、意思があるのかすら怪しいさ。

 それならまだ、ワイルドハントに行き()う可能性の方が高いし、なんなら彷徨(さまよ)えるユダヤ人を探すのが一番確実だ」

「なんか一個掘るたびに、他にも芋が出てくるみたいな感じになってるんだけど」


回りくどく、なんだそれはの芋づるだ、と()くと、おにいちゃんはカップケーキの袋を開けながら口を開いた。


「ワイルドハントは永遠の狩猟団。悪魔の狩猟団とも言われるね。

 地域によって(ひき)いるとされるモノは人間からオーディンまで幅広(はばひ)()れがあるけど、人間の場合は大概(たいがい)狩猟に(きょう)じ過ぎて、神をも愚弄(ぐろう)した結果、永遠の狩猟に(とら)われた罪人だ。

 人が行き()えば死ぬとも言われる。日本にも似たような妖怪がいたんじゃなかったかな」


局地的災害みたいなもんだよ。

そうおにいちゃんは言って、こんがりと(ほど)よく焼けている美味(おい)しそうなカップケーキを取り出した。


「あと彷徨(さまよ)えるユダヤ人ね。これはキリストを(ののし)ったとか叩いたとか、まあ辛く当たったその罪が(ゆえ)に、死ぬ事を許されずに最後の審判まで生かされているという、とあるユダヤ人だ。

 日本だと八百比丘尼(やおびくに)が一番近いのかな。

 ただ、百歳にまでなると、またキリストを(ののし)ったその時分(じぶん)まで戻るとも言うから、不老ではない分、実に実に嫌らしい。

 タンタロスの()めもかくやと言ったところかな」


きぃ、とアルミの(こす)れる耳障(みみざわ)りな音を(かす)かに立てながら、カップケーキのアルミカップを()いたおにいちゃんは、それをきれいに二つに割って、開きかけた私の口にひとかけ放り込んだ。


「むぐ」

「タンタロスはギリシャ神話に出てくる王だ。

 彼は最高神ゼウスと仲が良く、神々の口にする不死なる(アムブロシア)飲食物(やネクタル)を、同じように口にする権利を得ていた。

 けれども、タンタロスはその神々の食べ物・飲み物をくすねて他の人間に振る舞い、()ては神々を(もてな)(ため)(うたげ)で自らの息子を調理させた。

 それらによって神々から怒りを買ったタンタロスは、ギリシャ神話における地獄、まさしく地の(ひとや)と呼ぶに相応(ふさわ)しいタルタロスに繋がれた」


私が突然放り込まれたケーキを飲み込もうと、もごもご咀嚼(そしゃく)している間に、おにいちゃんは私が引っかかった点を説明しだしている。

ちなみにカップケーキは美味(おい)しかった。


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