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ガルデニアの残り香  作者: 板久咲絢芽
回想 3 行く末と目的
18/44

3

「おにいちゃんさあ、なんでうちだったの?」

「……」


単なる疑問でしかなかった。

それ以上でも、それ以下でもなかった。

それは、ちゃんと私の声にも乗っていたと思う。

黙ってごりごりと咀嚼(そしゃく)したクッキーを飲み込んで、それでも(しばら)く黙ったまま、おにいちゃんは何度か(まばた)きをした。


「……そうだな。うーん、ダメだ。どうやっても、こればかりは後付けの理由にしかならないよ」

「つまり、衝動的かつ通り魔的犯行と解釈してオーケー?」

「……反論もできないけど、人聞きが悪いなあ」


どうしてこうなったかなあ、と(ひと)()ちながら、おにいちゃんはまたクッキーを(つま)んだ。

それは狐色(きつねいろ)というには、やや茶に寄っていて、やっぱり焼きすぎだったんだろう。


「……おにいちゃんは、何がしたいの?」


目的を問うと、おにいちゃんは返事をせずに、またごりごりと(しばら)く焼きすぎたクッキーを()(くだ)いていた。

そのまま嚥下(えんげ)して、今までのお巫山戯(ふざけ)が鳴りを(ひそ)めた顔で、自分の(ひざ)の上のチョコとクッキーの山を(しばら)く見つめてから、コートと制服を着替えに行こうともせずに待つ私を見上げた。

逃げられないと観念したのだろう。


「それ、()いちゃう?」


色の白いは七難(しちなん)(かく)すとかおにいちゃんは言ったけど、こういう時に(すご)みを()すのも、また美貌(びぼう)だった。

その顔を至近距離で見る事に慣れている私も、さすがに一瞬だけ躊躇(ためら)って、けれどもそれは結局一瞬だけだった。


()いちゃう」

「そっか。うん、丁度いい頃合いかもね」


長話になると(さっ)した私は、おにいちゃんの座るソファの肘掛(ひじか)けに腰掛けた。


「……僕はね、大枠(おおわく)で言えば、人間に戻る方法を探してるんだよ」


それは、随分(ずいぶん)と含みのある言い方だった。


大枠(おおわく)ってどれぐらい? 牧場の(かこ)いくらい?」

辛辣(しんらつ)だなあ。大判(おおばん)額縁(がくぶち)ぐらいだよ」


それでもかなりの大枠(おおわく)だろうそれは、と私は思った。

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