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ガルデニアの残り香  作者: 板久咲絢芽
回想 3 行く末と目的
17/44

2

だが、そもそも、だ。


「おにいちゃんがイケメンなのが悪い」

「はあ……」


可愛(かわい)くラッピングされたクッキーを(つま)み上げて(なが)めるおにいちゃんに、私はそう言った。

おにいちゃんは困惑した表情でこちらを見上げている。


「おにいちゃん、暗示でどうこうしてるって言うなら、もうちょっとブサイクだと思わせればいいのに」

「何言ってるんだい、みぃちゃん。そのコストとリターンを考えたら、リターンの方が(まさ)るんだよ」


メタリックピンクのビニタイをねじねじとほどきながら、おにいちゃんはそう言った。


「色の白いは七難(しちなん)(かく)すって言うだろ。そういうことだよ」

「そっかあ、おにいちゃんは七よりも多く難があるのかあ」

「……みぃちゃんも言うようになったねえ」


おそらくは百均のものだろう可愛い花柄(はながら)のビニール袋の口を開けながら、しみじみとした口調でおにいちゃんは言った。

本性を現してからのおにいちゃんの話に付き合ってれば、(いや)でもこうなるってものだ、と私は思った。


「この兄にしてこの妹ありってやつよ」

「わあ、全然否定できないぞ」


一応、本人にも自覚はあったらしかった。

おにいちゃんは取り出したクッキーを口に(ほう)り込んで、わざとらしく眉間(みけん)(しわ)を寄せた。


「うーん、おかしいなあ。みぃちゃんをそんなにする気はなかったんだけど」

「光源氏にしろ、ハンバート教授にしろ、そんな気があっても困るよ」


そもそも、その時点で、私はおにいちゃんがどうして私達家族の中に闖入(ちんにゅう)してきたのか、その目的を少しも知らなかった。

ただの、おにいちゃんの正体を知っているだけの共犯者でしかなかった。


「おにいちゃん」

「ん?」


二つ目のクッキーを口に入れてごりごりと咀嚼(そしゃく)しながら、おにいちゃんは首を(かし)げた。

音からして、焼きすぎたクッキーらしかった。


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