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「同時に、そういった点がはっきりしていてかつ目の前に実体……触れる形でいて自分で動いているなら、普通は死んでいるなんて思わないだろ?」
「……うん」
死んでるなんて、告白されて確かめるまで思わなかったのだから。
そもそも、私はこの時まで、吸血鬼は吸血鬼という生き物だと思っていたのだ。
というか、普通の小学生はよっぽどその手の道に傾倒していなければ、そんなもんだと思う。
「それだけで、他人は無条件に僕を生きてると思い込んでくれる。
生きてるなら当然それなりの体温があるし、脈もある。
でもさっき、僕はみぃちゃんにはっきりと言ったよね」
「うん、すでに死んでるって」
「そう、それでみぃちゃんは思ったはずだ。
そんなことないと思うと同時に、既に僕が吸血鬼で周囲を騙していると知ってるみぃちゃんだからこそ、そんなこともあるかもしれないって」
確かにそんなことちょっと思ったかもしれない、と思った。
結局、今思えばほとんど無意識に近いレベルだから、その思考の動きを認識できたかというと、絶妙に微妙なのだけれど。
「そうして疑ったから、みぃちゃんは僕を生きてるとは認識しなかった。つまり脈も体温も感じなかったんだよ」
「……でも、普通触ったら気付くんじゃないの?
思い込むって言ってたけどさ、触ったら思ってたのと違うってならない?」
「それが面白いところだよね」
おにいちゃんは前に私が正体に気づいた時と同じように、嘲ると言うには毒気なく、微笑みかけるというにはあまりに独りよがりな、その言葉の通り面白がっているような笑顔を浮かべた。
「みぃちゃん、心頭滅却すれば火もまた涼しって言葉があるだろ?」
「うん、夏の暑い時に男子が叫んでた」
「……それは覚えたての語を使いたい年頃だろうな。
まあいいや、意味は知ってる?」
うん、と私が言うと、おにいちゃんはにこにことしながら、続ける。
「みぃちゃん。みぃちゃんが見てる世界は、聴いてる世界は、触ってる世界は本当かな」
「へ?」
何を言ってるんだろう。
少なくともその時はそう思った。
「みぃちゃん。みぃちゃんには僕がどう見えてる?」
「どうって……なんていうかとてもきれいな黒い髪してて、人形みたいなきれいな顔で、あとおにいちゃん目もきれいだよね」
「うーん、圧倒的に語彙が乏しい……」
今思えば、思った事を述べただけの小学生に何を求めてんだ、失敬な、という案件である。
というか、めちゃくちゃ褒めてやったのに酷くないか。




