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ガルデニアの残り香  作者: 板久咲絢芽
回想 2 来し方と嘘つき
11/44

4

「……吸血鬼はね、死者がなるものなんだ」


おにいちゃんがそう言った。


「どういった死者がそうなるか、という伝承に相違はあれど、(そう)じて死してなお生きるものが吸血鬼。

 吸血に対して、積極的か消極的か、理性があるかないか、その程度は地域によって差があるけどね」


おにいちゃんが自分の手を引っ込める。

それでも私の手にはひんやりとした感触が残っていた。


「おにいちゃんの手、こんなに冷たかったんだ」

「ふふ、みぃちゃんは今、僕の暗示が中途半端に()けてるからね。

 普通に暗示がかかったままなら、冷たくは感じなかったはずだよ」


おにいちゃんはにっこり笑ってそう言った。


「今のは、僕がみぃちゃんの認識を多少誘導もしたしね」

「どういうこと?」

「……説明すると少し難しいよ、みぃちゃん」


大丈夫? と言外に()かれたけれど、私はそのままおにいちゃんの言葉の続きを待っていた。

おにいちゃんは私の沈黙を受けて、小さくため息をつくと口を開いた。


「他者からの暗示は、そもそも無意識に影響を及ぼした上で、その本人の意識がその影響だと認知せずに、その影響の範囲内で思考・感情・行動全てにおける方向性を決定づけさせるものだ。

 わかりやすくざっくりと例えるなら、前提を満たした場合にのみ、暗示をかけた他者による操り人形になる、といったところかな。

 もしも、僕の使うそれが、根本的には人間のそれと違ったとしても、得られる結果とその傾向は変わらない」


立て板に水を流したような(よど)みのない言葉の奔流(ほんりゅう)は、その想定していたよりも、当時の私には(はる)かに難しかった。

いや、おにいちゃんの事だから、わざと難しい言い回しをしていたんだろう。


「えっと、私がおにいちゃんをおにいちゃんと思ってたのは、その暗示のせい、なんだよね」

「そうだよ。お母さんも、お父さんも、ちょっと前までのみぃちゃんも、ご近所さんも、僕を見たらここの家の長男と思うように暗示をかけてる。

 僕を見たら、僕という存在の所属について僕の思う通りに(あやつ)ってるって感じかな」


身近な実例というのは、物事を理解する上で非常に有用である、と身に()みて実感した瞬間である。

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