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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

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ダンジョン踏破者

 俺の言葉に対し、レーテはどこまでも沈黙を守っていた……が、ミリアやアルザがにじり寄るように動き始めた時、とうとうため息を漏らした。


「まったく……手を組む相手を間違ったかもね」

「魔族……同胞がいたからと、油断したか?」

「少なくとも、私のことを多少なりとも信用してもらえる……そういう風に解釈したのは事実。正直に言うとね、私はここを無茶苦茶にしたら消えるつもりだった。そもそもこのダンジョンが機能を失えば私は消える。そういう構造になっている以上、さっさと役目を果たして消えようと思っていた」

「……そこまでして、目的を遂行しようとするのは魔族の命令か?」

「そう思ってもらえばいいよ」


 レーテは諦めたように声を上げ……やがて、両手を広げた。


「さて、私をどうする?」

「……ディアス」


 ミリアが俺の名を呼ぶ。それに対し、俺は何も答えないまま沈黙する。

 どうすべきか――という点については答えは決まっている。ここにある資料は貴重な物だし、破壊されるわけにはいかない。


「……このダンジョンを踏破したのは俺達だ。君は共に行動していたわけだが……さすがに、君の目的を達成されるわけにはいかないな」

「ま、そうだよね……私が勝てる道理はない。おとなしく負けを認めるよ」

「何が何でも命令に従おうというわけじゃないんだな」

「命令は命令でも、十年以上も前に指示されたもの……私が生まれた当初に刻まれたものだからね。このダンジョンの主が消え失せた時、ダンジョンを破壊しあらゆる資料を隠滅しろ……それが私に対する命令。でもまあ、これほどまでに実力が伴っていないと、どうしようもなかった」

「本来は、守護者とそれを司るレーテのような魔族がいて、彼らが連携して破壊しようというつもりだったんだな?」

「その通りだと思う。あいにくダンジョンの主は私を生み出して滅んだから、どうするつもりだったのかはよくわからない」


 ……結局のところ、全てはこのダンジョンの主が早期に滅んでしまったことが、彼女の立場を面倒にさせたというわけか。

 まあレーテは負けを認めているし……と思ったところで、アルザが肩をすくめ口を開いた。


「もし同行したのが私達じゃなかったら、今の攻撃は成功していたかもしれないね、ディアス」

「かも、しれないな。でも俺達くらいの実力を持っていなかったら、この部屋を守護する魔物に対処はできなかっただろう」

「その辺りが、面倒なところだった」


 と、レーテは肩をすくめた。


「本当は、手傷を負って私だけが先んじてこの部屋に入るつもりだったんだけどなあ」

「残念だったな」

「それで、私はどうするの?」

「少し考えたけど、結論としては――」


 その時だった。後方で扉が勢いよく開け放たれる音がした。

 これはまさか……と思って振り返ると、肩で息をしているニックがいた。


「予想以上に早かったな」

「……お」


 俺達の姿を認めた矢先、ニックは崩れ落ちた。


「おおおおおおおっ! マジかよおおおおおおっ――!!」

「うん、無茶苦茶飛ばして進んできて悪いけど、俺達の勝ちだ」

「ぐおおおおおおおっ――!!」

「……大丈夫なの?」


 雄叫びを上げるニックにミリアがポツリと漏らす。それに対し俺は、


「ああ、平気平気。たぶん十日くらいは引きずるだろうけど、その後はケロッとしているさ」

「十日って……ずいぶんと精神的にダメージを受けてしまったようだけど」

「でも、恐ろしい速度だね」


 と、アルザがどこか感心するように言う。うん、そこは俺も同意する。

 俺達が第九層へ踏み込んで通路を使い最下層へ……という時間で、彼は第八層ばかりでなく第九層の守護者すら突破してここに来ているのだ。その速度、尋常じゃない。


「俺達がもう少し悠長にしていたら、負けていたかもな」

「――それにしても、何やら一悶着終わった後みたいじゃないか」


 と、ニックは状況を察してか表情を戻してゆっくりと立ち上がる。


「そこにいる少女、魔族だな? ギルドの報告に上がっていた特徴と一致する」

「そうだ。最下層へ行きたいとのことだったから、そこへ連れて行く代わりに情報をもらった」

「ああ、なるほど。ダンジョンの主が使える通路とかがあって、それを通ってきたのか。で、なんだか魔法を撃った後のように消耗しているが、何があった?」

「既に滅んだ魔族の命令で、この場所を破壊しようとした。で、俺がそれを防いだ」

「ほうほう」


 俺の言葉を淡々と受けるニック。そして彼は、


「で、そこの魔族はどうするんだ? 野放しにはできないだろ?」

「ああ、まあな……レーテ、申し訳ないが命令を遂行させるわけにはいかない。ただ、抵抗しなければ俺達が魔法を向けて滅ぼすようなこともしない」

「このダンジョンが消えれば私も消えるのに?」

「だとしても、マシな終わり方はしたいだろ?」


 その言葉にレーテは無言となる……が、肯定したと俺は解釈し、


「さて、それじゃあ一度ダンジョンを出よう。レーテもついてきてくれ。あ、それとニック。俺達が先に踏破したんだ。ここにある資料は、俺達の好きなようにさせてもらうぞ――」


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