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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

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破壊と目的

 俺達が選んだ扉は両開きの大扉であり、中へ入るとこの最下層へ辿り着いた時と同様に資料などが散乱する研究室があった。ただし規模は大きく、魔力も今までと比べて濃いのがわかる。


「……ダンジョンの構造を全て理解したわけじゃないが」


 俺がこの部屋に満ちる魔力を考察し始める。


「たぶんこの場所に魔力が集積するよう、作り上げるつもりだったんだろうな」

「ダンジョンを?」


 アルザが聞き返しながら俺へ声を上げた。


「どうしてそんなことを?」

「この場所で、何か研究をしていたのかもしれない……さっきの部屋や隠し通路の研究室。そしてこの研究室……資料も分散している上に、内容もバラバラであるところを考えると……もしかするとここには複数の魔族がいたかもしれない」

「それは――」


 ミリアが何か応じようとした時だった。コツコツと足音を立ててレーテが前に出た。


「……どうした?」

「少し、歩き回る」


 ――俺は彼女が歩く姿を観察する。少女魔族に付与してあった強化魔法は既に解除されており、内に秘める魔力量も多くはない。

 そうした中で……彼女は広間の中を歩く。俺はそれを目に映しつつ、周囲にある資料の山へ意識を集中させる。


「……単純にダンジョンを作成するだけ、とは思えない規模だな」

「この場所で、何かやろうとしていたのかもね」


 アルザが言う。そこで俺は、


「ここは思った以上に根が深いかもしれないな……ダンジョンが生まれたのは十年以上前だとしても、ここにある資料を精査したら、下手すると先日行われた魔王との戦い……それについて、関係性があるのかもしれない」

「けれど、それを解明するのにも時間が掛かりそうね」


 と、ミリアはコメントする。確かに、これだけの資料……ダンジョン内をさらに探索すれば、もっと資料が出てくるだろう。そうなったら非常に調査が面倒そうだ。


「ま、それについては国の人がやってくれるだろうし……ただ、どういう情報があったのかとかは知りたいな。今から調べればいいんだろうけど……この資料の多さだ。やる気がなくなるな」


 俺の言葉にミリアやアルザが笑う……と、レーテが奥に辿り着く前に立ち止まった。そこで俺は、


「何か見つかったか――」


 問い掛けようとした矢先のことだった。彼女の右手が突如光り始め、それが拡散しようとする――直前、俺は杖で地面を叩いた。

 するとレーテを中心に結界が形成されて、光が結界の内側を渦巻いた。ミリアやアルザは瞠目し何事かと見守る中で、俺は黙ったまま事の推移を見守る。


 果たして……光が消える。残っていたのは結界によって光を阻まれた無傷の少女魔族レーテの姿。


「……それだけ素早い反応」


 レーテが振り向く。その姿は何一つ変わっていない。声音だってそのままだが、先ほどまでの雰囲気とは一変し、何か凍り付くような気配を帯びていた。


「もしかして、何か気付いていたの?」

「いや、残念ながら」


 と、俺は肩をすくめながら応じた。


「ただ、あくまで君とは共闘関係だ。最下層が目的地だとして俺達は情報を得たわけだが……そこから先、どうするかまでは語っていなかった。なら、何かしら騒動があってもおかしくないとは思っていた。それと」


 俺は地面から杖を離し、レーテを見据える。


「何かしようとしても……例えば君が俺達に魔法を使ったとしても、俺なら防げると思っていたから、野放しにしていた部分はある」

「そう」

「そもそも、ここへ来れないがために君は俺達と共闘関係を結んだ……実力的には先ほど交戦した魔物よりも低いわけで、応戦はそれほど難しくないと判断したよ」

「読まれていなくとも、その能力でどんな風にもできるというわけね」


 観念したようにレーテは呟く……と、俺はここで彼女へ問い掛けた。


「君の目的は? このダンジョンの抹消か?」

「どうしてそう思うの?」

「正直なところ、ここにある膨大な資料……それを人間側に奪われたら面倒になると魔族は考えていたはず。であれば、隠し通路にあった研究室やこの広間にある資料については、踏み込まれた時点で破壊する必要性がある……なら、魔族はこのダンジョンそのものを破壊する手はずを整えていて、君はそれを発動させようとした……といったところじゃないか?」


 レーテは答えない。けれど俺は解説を続ける。


「さらに話を深掘りしていくと、だ。君は俺達に隠し通路内に存在する研究室を語った。そこから考えるとこのダンジョンに関することや、魔族が研究していた魔法技術……ついでに言えば、魔王とのやりとり。それらについては別に見せても構わないと判断した」


 淡々と語る俺に対し、レーテはなおも黙り続ける。


「君がどういう経緯で上層にいたのかについては……真実かもしれないし、嘘かもしれない。だが事実としてここを目的地としていたが、力が足りず自力では到達できなかった。よって、俺達と共闘した……君はこの広間を訪れ人間に見られたくない物を処理しようとした。滅び行く寸前に頼まれたのか、それとも滅んでしまった際にそうした指示に従うよう命令されてたのかは不明だが……ともかく、君はここを破壊するべく尽力していたわけだ」


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