ダンジョンの詳細
というわけで、少女魔族レーテが仲間になった……いや、仲間にはなっていないか。ダンジョン最深部へ行くまでの共闘関係を結ぶこととなった。
そして、早速俺達は森の中で彼女から情報をもらうことにする……彼女の方はどうやら隠し通路の場所などを把握できる能力を持っているらしく、彼女が管理しようとしていた上層の隠し通路については、俺達が未発見のものを含めて全て把握していた。
ただ、下層については入口の場所がなんとなくわかるだけで、具体的に数まではわからないとのこと。
「でも、隠し通路がどこにあるのかはわかると」
「うん。仕掛けとかはないから場所さえわかれば開けることはできると思う。それと」
と、彼女は俺達を見回してから付け加える。
「隠し通路の中には、指示がなければ魔物は侵入できない」
「……それはかなり貴重な情報だな。なぜだ?」
「魔物が不用意に通路へ入ることを防ぐためじゃないかな」
ああ、それもそうか。気配探知などが得意な魔物とかだと、通路のことを知って変な挙動をする可能性とかあるのか。
「その制約は実質、ダンジョン内にいる魔物は隠し通路を通過できない……つまり通路そのものがセーフゾーンということか」
「そうだね」
「もし危なくなったら隠し通路に逃げ込んで態勢を整えることができる……うん、一番乗りできる有力な情報だ。ただ」
俺は昨日、ニックが語っていたことを思い出す。
「第六層以降は、ダンジョンの構造が複雑化して先へ進む階段だっていくつもあるらしい。隠し通路を使うにしても、最下層へ行くためには迷路のようなダンジョンを抜ける必要がある……さすがに下層の地図とかは持っていないよな?」
「それはないね。でも、たぶん一気に最下層手前まで行けるとは思う」
「それは何故だ?」
「正規のルートで進む場合、正解の道は一つだけど隠し通路は張り巡らされているから」
「つまり、隠し通路を使って突き進めば、どんな場所に出ても最下層手前まではたどり着ける」
「うん。でも最下層へ繋がる道だけは一つしかない……はず。この辺りは実際違うかも」
「そうか……守護する魔物については何か情報はあるか?」
「さすがに能力とかはわからない……でも」
「でも?」
聞き返すと魔族レーテは少し考え込んだ様子を見せつつ、
「確か、第六層のどこかに研究室があったはず。隠し通路を使ってたどり着ける場所なんだけど。もしかしたらそこに情報があるかも」
「……何でそんな中途半端な場所に?」
「上層部を作成するため最下層までわざわざ下りるのは面倒でしょ? だから仮の拠点とかを作ったんだと思うけど」
「もしかするとその研究室を経由して最下層とかに行くことは……」
「たぶん無理じゃないかな。調べてみないことにはわからないけど」
さすがに、そこまで都合良くはいかないかなあ。
「その研究室へ行けば、魔物に関する情報が得られるかもしれないということか」
「もしかすると、だけど」
「わかった。下層の地図とか……はあっても十年以上経過して異界化した場所だから、参考にはならないか。ともかく、その研究室を調べれば、一気に最下層まで攻略できる可能性が高まったな」
「――現状、冒険者はニックを含め第七層を攻略中だと思う」
と、俺の言葉に続くようにアルザが言う。
「ダンジョンの構造を考えると、数日で攻略は無理そうじゃない?」
「いや、今日の結果次第ではわからない……ニックの実力を考えると」
そう語った後、俺は話をまとめる。
「研究室で得られる情報次第で動き方を変えるとしよう。もし魔物の詳細がわかって攻略できると判断できれば、第六層から隠し通路で一気に最下層へ向かう。難しそうな場合はニック達と共闘して攻略を進め……第八層くらいまで到達した際、一気に攻略するとかでもいい」
レーテの情報から、俺達は大きなものを得ることができた。間違いなく攻略に役立つし、また競争に勝利できる公算が高まったと考えていいだろう。
「よし、それじゃあ早速研究室を調べたいけど……レーテは俺達と共に行動するのは危険すぎるか」
「透明になったりすればいいんじゃない?」
アルザから提案があるけど……俺は首を左右に振った。
「魔族特有の気配を隠すには限界がある。ミリアに付与した俺の魔法だって、アルザにはバレただろ? 同じようにレーテへ付与して透明化とかやっても、気付く人は気付く。ましてここはかなりの高難易度ダンジョンだ。ニックを始めとした多数の冒険者がいる。下手に連れ回したら、バレる可能性が高いな」
どうしたものか……と考えているとミリアから提案が。
「まずは私達だけで研究室へ向かうのはどうかしら? レーテ、そこへ行く道筋はわかるのよね?」
「うん、でも何年も前の通路を使った時のことだし、異界化が進んでいるから場所は変わっているかも」
「なら、わかるだけの情報をちょうだい。後は私達が頑張るわ」
「決まりだな」
俺はそう呟くと、レーテから情報をもらい――早速、第六層へと向かった。




