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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

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立ち回り方

 入口から足を踏み入れた矢先、感じたのはヒンヤリとした空気。ダンジョン特有の、というわけではなく、日が当たらない洞窟で感じるような冷たさ、と言えばいいだろうか。


「入口周辺は異界化していないな……」


 俺は呟きつつ歩く。分岐するような道はないので、当面はニックと共に歩くことになる。


「ミリア、そういえば昨日地図を買わなかったか?」

「あ、うん」


 ギルドから攻略済みの場所について地図を買っていた。ちなみに未踏破の場所について調査をすればそれだけで多少なりとも報酬が出る。


「ニックは買ったのか?」

「もちろん。既に頭の中にあるぞ」


 トントン、とこめかみ辺りを指で叩く。さすが、といったところか。


「少し先に転移ゲートがある」

「ああそうか……そっちは利用するのか?」

「そうだが……その様子だと、利用せず一層目から確認する気か」

「ああ」


 悠長などと言われる可能性もあったが……ニックは俺の行動に一定の理解を示した。


「異界化して生態系すら生まれている環境である以上、上層部に下層のヒントがあるかもしれないと考えたわけだ」

「それをわかった上で、そっちは転移するのか?」

「アプローチの違いだな。まずは現在攻略している場所を確認し、どんな風に同業者が立ち回っているのか……それを確認するところからだ」


 なるほど、ダンジョンには色々と傾向が存在する。罠の数とか、魔物の量や質とか。その辺りの情報はさすがに現地へ踏み込んでみないとわからないし、冒険者達はダンジョンの特性に合わせた対策で攻略を進める。

 ニックはまずその辺りを見定めようと考えているわけだ……それを踏まえると、俺はダンジョンの構造など、ダンジョンそのもののヒントを得ようとしているが、ニックはこのダンジョンの癖などを確認し、立ち回り方を最初に決めようとしているわけだ。


 上層から調べるという手法では、大半は攻略している場所を回ることになる。であればニックのようにダンジョンの癖なんかを捉えるのは結構大変だし、俺のやり方か彼のやり方か……どちらが正しいかは、まだ何も言えないな。

 やがて俺達は転移ゲートへ到着した。そこには幾人もの冒険者が待機していた。おそらくギルド所属の人間だろう。彼らは転移ゲートの維持を任されているというわけだ。


「よう」


 そしてニックは声を掛けた。どうやら知り合いらしい。


「お、ニックじゃないか……ま、ここへ来るのは当然か。むしろ遅いくらいじゃないか?」

「魔王との戦いで結構疲れたからな」

「ああ、それもそうか……で、改めて今日から攻略開始というわけか」


 冒険者は俺のことを見る。俺やアルザの顔は知っているようで驚いた表情を見せ、


「……ニック、彼らと組むのか?」

「いや、勝負しようと思ってだな」

「勝負……? ああ、ダンジョンをどちらが攻略できるのかってことか。無茶をやるもんだな」

「……結構ヤバそうなダンジョンだと言いたいのか?」

「そうだ。ダンジョンの規模は高位魔族が生み出した迷宮と遜色ない……上層部でも魔物は結構強かった。ニックも気をつけろよ」

「ああ……それじゃあディアス、健闘を祈る」

「ああ、そっちも気をつけて」


 ニック達は転移ゲートをくぐっていく。それを見送ってから俺はミリアとアルザへ告げた。


「さて、こちらはこちらで方針通り動こう……というわけでミリア、地図によるナビを頼む」

「わかったわ」

「未踏破の場所があったら率先して調べることにするから、言ってくれ」

「ええ、わかったけれど……さすがに第一層に未踏破の場所はないわね」

「なら、第二層へ続く道まで行こうか」


 そう述べて、俺達は転移ゲートではなくダンジョンの奥へと歩み始めた。






 第二層への道へ辿り着く前に、俺はいくつか気付いたことがあった。

 まず、魔力について。俺は高位魔族が生み出したダンジョンに潜った経験もあるし、それと比較してだが……魔力は濃いが刺々しい空気感はあまりない。そのことをミリアへ話したら「そうね」と応じたので、これは間違いなさそうだ。


「ダンジョンの特性からいって、元々の魔族はそれほど強くないってことだろうな」

「異界化するほどだから、ダンジョンそのものを強固にするつもりではあったのでしょうけれど」


 と、ミリアは自身の見解を述べる。


「もし魔族が滅んでいなかったら、異界化するにしてもある程度制御はできたはず。それこそ、人間を絶対に出さないよう、入り込んでも苦戦するように……」

「でも制御しなかった結果、今のように無秩序に異界化していると」

「そうね。ただ、異界化の規模を踏まえると、今回の魔族はダンジョン作成に自信を持っていたのかもしれないわ」

「……つまり、魔族自身の能力は決して高くはないけど、ダンジョンは強力なものにできる技術があると」

「そうね」

「ふむ……そういうケースもあったはあったけど……」


 ミリアの考察が本当であれば……、


「お宝、期待できるかもしれないぞ」

「え、そうなの?」


 アルザがめざとく反応した。


「技術を用いる魔族、というのは基本的に独自の資料とか道具とかをダンジョン作成の際に持ち込むことが多いからな。そういった道具を見つければ……」

「なら、ちょっと期待しておこうかな」


 アルザがはそんな風に呟くのを聞きつつ……俺達はとうとう第二層へ繋がる階段を発見した。

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