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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

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攻略開始当日

「――とまあ、魔王との決戦前でもニックについては何も変わらなかったな」


 そんな風に話をすると、アルザとミリアはなんだか感心した様子だった。


「ニックという人はものすごくポジティブなのかしら」


 と、感想を述べたのはミリアだ。


「魔王の実情を知らなかったという要素は大きそうだけど、言動から察するに知っていても同じような雰囲気だったかもしれないわね」

「確かにそうだな……なんというか、良い意味で我関せずといった感じなんだよな。ニックは特にダンジョンに潜っている冒険者だから、死んだらそれまでだ、なんて割り切って考えているのかもしれない」

「割り切って……」

「それとニックがダンジョンに入るのは、名声とか金のためとかではない。未知の何かを求め潜り込んでいるわけで……他の冒険者とか傭兵とかとは、一線を画する存在だな」

「話だけ聞くと、ずいぶんと変わった人みたいに聞こえるけど……」

「そうだな……あと、その性格で損をしたということはあまり聞かないな」

「上手く立ち回っているということかしら?」

「俺と違って誰とでも分け隔てなく接するし、交友関係も広いからな」

「……あなただってそれなりに交友関係は広いのでは?」

「戦士団に所属していた人とは交流もあったし、友人と呼べる人は多いけど……ニックほどではないな。ま、裏表ない性格だし敵を作らなかったから、というのが大きいだろう」


 そう告げた後、俺は話を一度切った。


「さて、ニックのことについてはこのくらいにしておくか。ダンジョン内での立ち回りも明確になったし、後は競争で勝てるよう頑張ろう」

「長期戦になるかしら?」


 ミリアが問い掛けると、俺は肩をすくめつつ、


「正直どうなるかはわからない……けど、一日二日で攻略できるほど甘くはないと思う。何せ発生して十年経過しているダンジョンだからな。ただ、慎重に行動していれば窮地に立たされる可能性は低いと思う……まあ競争ではあるので、勝てるよう全力を尽くしたいところだが、最優先すべきなのは自分の命だ。よってミリアとアルザもそのことは肝に銘じて、ダンジョン攻略を行ってくれ――」






 その日は天幕の中で休んで、翌日から本格的に行動を開始した。朝から営業している露店などを見て回って、物資が足りなくなったらどこで購入するかなども確認しておく。

 そして俺達はダンジョンの入口へ向かう……すると、待っていたかのようにニックとその仲間が立っていた。


「おはよう、よく眠れたか?」

「ああ、問題ない。そっちは?」

「こちらも体調は万全だ」


 ――俺達が会話を始めたことで、周囲がどよめき始めた。ダンジョン前なので当然同業者も多い。俺達のことを知っている人間が多いためだろう。

 それを証明するかのように、耳を澄ませると「おい、『六大英傑』の……」とか、「七人目の……」とか、そういう声が聞こえてくる。


 ただニックはほとんど気にしていない様子であり、周囲から漏れる声も耳には入っていないようだった。


「というわけで、改めて勝負だが」

「昨日の内に入っていても良かったんだぞ?」

「そこは別にフェアにやろうとか、そういうわけじゃない。こっちはこっちで色々とやることがあったからな」

「なるほど……で、最終的に同時に入るってことか?」

「そうみたいだな。じゃあ、早速行くとするか」


 俺は頷き、ダンジョン入口へ。その見た目は、石造りの神殿……岩壁に埋め込まれるかのように存在している入口と外観の建物は、よく十年も残り続けたなと思うほどだ。


「下手すると、このダンジョンは現在聖王国で残っているものの中で、一番ヤバいかもしれないな」


 ふいにニックが言う。ダンジョンに関する情報は常に収集していることだろう。その彼がここまで言うのだ。第五層まで攻略済みのはずだが……例え攻略していても、警戒は怠らないようにすべきだろう。


 入口には冒険者ギルド所属の人間がいた。入る人間の確認をして、誰が中にいるのかを把握できるようにしている。もし戻ってこなかった場合、調査をして遭難している時は救出する……のだが、さすがに彼らにも限度というものがあるため、無茶をやってダンジョン奥で遭難とかになれば、助けが来る可能性は低い。


 本当ならば、他の冒険者と合わせるように動いた方が安全だし確実だ。実際、ニックの提案で競争をやる、ということでなければゆっくり攻略を進めていただろう。けれど、


「……確認だが」


 俺は一つ、ニックへ問い掛ける。


「もしどちらかが遭難した場合は?」

「時と場合によるな。怪我でもしたらその時点でダンジョン攻略はリタイアとなるし……ま、そうならないよう頑張ろうじゃないか」


 彼は決して自分はそうならないと考えているわけではなさそうだった。むしろ、競争だからといって浮き足立たずダンジョンの方を見据えている。

 これなら、彼が無茶をすることもないか……そんな風に考えつつ、俺達はとうとうダンジョンへと入り込んだ。


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