表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/487

幕間:英傑の会合(後編)

「国としての意見は、まだまだ英傑として戦ってもらいたい……ただし、それはセリーナ君の宮廷入りが遅れることにも繋がる……君としては不本意なものだろう」


 全てを理解している、という風にクラウスは語る。


「よって、聖王国としては君に一つ提案する」

「提案?」

「君の能力は英傑においても上位に位置する。その戦力を今は失いたくない……ただ、魔界の不安定な状況がいつ収まるかもわからないし、ましてや次代の魔王が決まるまで何年も必要になるかもしれない」


 ――その年数は宮廷入りを望むセリーナにとって致命的かもしれないとシュウラは思った。


「よって、こう提案する……君の政敵については私も知っている。故に、君が英傑として活動し続けるのであれば、宮廷入りする際に便宜を図ろう」

「それはつまり、政敵を排すると?」

「どういう風な処置になるかはわからない。ただ、君の立場が不利になるようなことにはしない、とだけ言っておく……ただ、口約束だけでは不安だろう。よって念書を持ってきた」


 クラウスは懐から綺麗に折りたたまれた書類を取り出した――それを見てシュウラは、


(セリーナを重用していますね……)


 もしかすると宮廷入りを目的とするセリーナならば、上手く操縦できると国側は思っているのかもしれない、とシュウラは考える。


(餌を用意できるため、重宝するということですか……国側の思惑は非常にわかりやすい。セリーナも気付くはずですが――)


「……私に狙いをつけたというわけですね」


 シュウラと同じ事を考えたか、セリーナはクラウスへと話し出す。


「国としては私をどうしたいのですか?」

「今まで通り、戦士団として国と手を組んでもらえればいい。それ以上は望まない……ただしそれは君の目的と必ずしも合致しないと考えたため、念書を含め用意したわけだ」

「……中身を拝見しても?」

「ああ」


 セリーナは念書を開けて目を落とす。シュウラの視点からは一瞬目を見開き、それでも無言でいる彼女の姿が見えた。


「……なるほど、わかりました」

「こちらの要求は聞き入れてもらえるか?」

「そうですね……とはいえ、団長の意向も確認しなければ――」

「こちらは構わない」


 あっさりと同意するロイド。シュウラとしてはセリーナが暴走しない一番の手法だと考えたことだろう。


「ロイド君の同意を得られた以上、今後も手を貸してもらえそうだな……さて、こちらの伝えたいことはおおよそ終わったが……」

「私には何もなしですか?」


 なんとなくシュウラは口を開くと、クラウスは笑みを浮かべ、


「何か要望などがあれば受け付けるぞ?」

「こちらかはら何もありませんが、そちらは?」

「……なんというか、仕事が欲しそうな顔をしているな」


 シュウラは何も答えず笑みを浮かべる。けれどクラウスはやれやれといった様子で、


「残念ながら仕事はないが、今後何かしら手を貸してもらうことがあるかもしれない」

「私の情報網、ですか?」

「そうだな。とはいえ、国としてはあらゆる情報を集めている。本来は必要ないと断言できる……」


 シュウラとクラウスは視線を重ね――やがて、


「……まあ、戦士団としての情報収集能力は高く買っている。場合によっては依頼しよう」

「わかりました」

「他に何かあるか? なければ、今日のところはこれで終了だが」

「この会議は定期的に開催されるのですか?」


 最後にシュウラが質問。それにクラウスは肩をすくめ、


「頻度はそう高くないだろう。事あるごとに話し合っていたら怪しまれそうだ」

「かもしれませんね……わかりました。今後ともよろしくお願いします」


 ――そうして初めての話し合いは終了した。先んじてロイドとセリーナが部屋を出て――しかし、シュウラは立ち上がってからクラウスを凝視する。


「……まだ何かあるか? それとも、ロイド君達には聞かれたくない内容か?」

「悪巧みのように聞こえますね……私としては、単純にセリーナさんが不快に思うだろう、ということで話をしなかったのですが」

「……ディアスのことか」

「ええ」

「実は何かしら野望を抱えているとか?」

「いえ、そんなことはありませんよ。彼が自分探しという名目で旅をしているのは間違いない。私が尋ねたいのは、魔王との戦いのことです」


 その言葉を聞いて、クラウスは目の色が変わる。


「何だ?」

「魔王との戦いの最中……窮地に陥ったことがあるでしょう」

「ああ、魔王の反撃を受けて……英傑すらも膝をついた時間があった」

「その時のことを憶えていますか?」


 問い掛けに、クラウスは目を細める。


「……魔王の攻撃を受け、気絶する者は大半だった。けれど君は意識があったか?」

「ええ。もしそちらも意識があるのだとしたら……意見を聞かせてもらいたいのです」

「ディアスのことについて、か」

「はい」


 明瞭に――深く頷いたシュウラは、質問した。


「あの時……英傑ですら倒れ伏したあの時間、彼は一人で魔王と対峙した……そして英傑ですら成しえなかった偉業……たった一人で魔王を食い止めていた。そのことについて、是非感想を頂きたい――」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ