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魔族と護衛

「……は?」


 俺の唐突な提案に対し……女性魔族から聞こえてきたのは間の抜けた声だった。


「えっと、魔族である私を護衛……? それはどういう意図で言っているの?」

「魔族という存在を知る良い機会だと思って」

「……魔王と戦った以上、魔族に興味を抱くというのは別段不思議ではないけれど、そうだとしても疑問が……」

「人間と争うこともなく、人のいる領域で生活する魔族とかに興味を持ったし」

「会いたいってこと?」

「そんなところ。俺は二十年……ずっと戦いに人生を費やしてきた。だからまあ、戦い以外のこと……世界のことを色々と知りたい……それこそ、自分が倒してきた存在についてを含めて。そうしたことを知ることができれば、人間的に成長できるだろうし、そうした旅を通してやりたいことが見つかるかもしれない」


 ――自分探し、という表現が合っているどうかわからないけれど、最終的にそれを成し遂げるために、旅をする。彼女と出会いは、知見を広めるための第一歩になる。


「俺がこのダンジョンに踏み込んで君と話をしたのも何かの縁だ。俺以外の誰かが来ても、こんな風にならなかっただろ」

「そう、でしょうね」

「少なくとも君は嘘を言っていないし、危害を加える意思もない……で、俺としてはそんな態度の君を野放しにして後々誰かが滅ぼしたとか聞かされたら寝覚めが悪い。なら、一緒に旅をして目的地まで行く……というのがベストな回答だと思わないか?」

「……そう、かしら?」


 小首を傾げる魔族。とはいえ、打算的な意味合いだってある。


「君が訪ねるつもりの親族は、それなりに力があるんだろ?」

「え? ええ、そうね」

「なら、報酬とかたっぷり要求してもよさそうだろ?」


 ――その言葉に女性魔族は呆れた顔をした。魔族である自分達にたかるのか、などと考えている様子。


「……まあ、報酬で護衛をお願いできるなら、それに越したことはないか」

「お、提案を受け入れるんだな?」

「ええ、そうしましょう。というより、私にとっては一番理に適った選択だし。けど、道中私が魔族であることを――」

「俺の魔法で魔族としての気配を遮断すれば問題ないよ」


 そう言いつつ杖を軽く振った。それにより魔力が付与され、魔族特有の圧が完全に消える。


「相当な使い手……それこそ『六大英傑』クラスじゃないとバレないから心配しなくていい。あ、でも君自身の魔力を消費して維持するタイプの魔法だから、魔力には注意してくれ」

「そこは心配してもらわなくてもいいわ……なら、よろしく」

「と、そうだ。名前を教えてもらえるか? 俺は――」

「あなたのことはよく知っているわよ。ディアス=オルテイルさん」

「……俺を見てすぐにわかった様子だったな」

「それはまあ。魔族と戦い続けたあなたは、不戦派の魔族の中でも有名人だし」


 そういうものか……で、俺は手を軽く振りつつ


「俺のことはディアスでいい。それで、君は?」

「私はミリア=ラシュオン。ミリアでいいわ」

「ミリアか。よし、名も知ったし行くか……と、その前にダンジョンに残っている魔物を片付けないと」

「そこは私がなんとかするわ」


 ――というわけで、奇妙な形で始まった護衛の旅。俺としては新たな世界が広がるきっかけになりそうであり、どこかワクワクしている自分がいた。






 その後、彼女が魔物を全て片付けてダンジョンを後にした。町へ戻って報告をして――翌日、調査が入ってダンジョンが踏破されたことをギルド側が確認。報酬を受け取った。

 調査ではなく攻略した、という実績により報酬額も相当多く、当面の旅費については問題なさそうだった。


「私の費用は――」

「それも後でまとめて請求するさ」


 ミリアの言葉に俺はそう答え、彼女も同意。で、目的地を聞いたらそれなりに距離はあるが聖王国の領土内だ。


「君のことがバレる心配はないだろうし、問題なく旅は進めていけると思う」


 と、酒場で食事をしながら俺は言う。ミリアは向かい合って座っており、今後のことについて話をすることに。


「一番の問題は、俺が同行して君の親族がどう出るのか。話も聞かず戦闘とかになったら……」

「その辺りは大丈夫。人間だから門前払いするような方じゃないから」

「それは良かった……ちなみに有名なのか?」

「どうかしら。あなただって場所を聞いても知らないでしょう?」

「そこに魔族がいることは知っていたけど、何もしないし国側も放置していたくらいだからな……討伐対象じゃなければ情報は回ってこないな」


 魔族の中にも、人間と暮らしている存在はいるからな……国が干渉していない以上、何かしら交流があるのかもしれない。


「俺の魔法さえあれば移動は気にしなくていい……けど、今回の報酬で旅費が足りるかどうかは微妙だな。野宿とかありなら余裕だけど」

「それで私は構わないけれど……」

「そんな野性味溢れる旅でも俺はいいけど、別段急いでいるわけじゃないだろ? 道中色々と見て回りたいんだけど、いいか?」

「ええ」


 あっさりと同意。こうして酒場で食事をすることもできているので、彼女としてはゆっくりでも問題はないって判断なのだろう。


「それで、これからどうするの?」


 ミリアからの問い掛け。それに俺は一考し、


「そうだな、進路は目的地へ向けつつ、魔王との戦いに勝利したことでどれだけ町に影響があるのか。それを確認しようかな――」


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