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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

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幕間:英傑の会合(中編)

 ディアスのことが騎士クラウスの口から出た瞬間、セリーナは露骨に嫌そうな顔をした。そこでシュウラは反応に苦笑しつつ、


「実は彼と接触しました」

「お、そうなのか」

「魔族討伐や魔物討伐に加わっていますが、理由としては路銀稼ぎですね。自分探しの旅……それをするために」

「旅をするにも金はいるからな。ただ剣士アルザについては――」

「実は私が様子を見に行ってくれないかと頼んだのです。結果、理由はわかりませんが旅に同行している様子」

「故意に仲間を集めているわけではない、と」

「そこは間違いありません……と、セリーナ」


 シュウラはなおも苦笑する。その原因は、セリーナの顔がさらに険しくなっていたためだ。


「フォローしておきますが、ディアスさんは自由気ままに旅をしているだけです。あなた方戦士団を害する気は一切ありませんので」

「……ずいぶんとディアスの肩を持つのね」

「別に持っていませんよ。ただ、誤解は解いておくべきでしょう?」

「ふん、まあいいわ。元気でいるなら何よりね」


 その言葉は内容とは裏腹にずいぶんと突き放したものであったため、クラウスですら苦笑した。

 とはいえ、セリーナがディアスに対して何を考えているのかは――尋ねること自体地雷であるのは間違いなかったため、シュウラもクラウスも直接的に問い質すことはしなかった。


「……疑問なのだが、シュウラ君はなぜディアスと?」

「アルザのことを含めいくらか用事を頼んだのですよ」


 シュウラは詳しいことを話さない。それは当然であった。自分が所属する戦士団の勧誘や、決闘――どれもこれもセリーナを刺激しかねない。

 曖昧な回答にクラウスは一瞬思考するような仕草を見せたのだが――セリーナがいるから話さないのだろう、ということは理解したようで、話を戻した。


「まあディアスのことはこのくらいにしておこう……さて、世間は魔王を倒したことでお祝いムードだ。人々の表情も明るく、英傑の評判はこれでもか、というほどに高まっている。彼らがいれば、魔族でさえも……というわけだ」

「クラウスさんはその中で筆頭ですね」

「よしてくれ。この場にいる面々にはわかっているはずだ……私が様々な面で至らなかったのは」


 ――その言葉の直後、全員が沈黙した。誰もが魔王との戦いのことを思い出す。


 それはまさしく死闘であった。もし『六大英傑』が一人でも欠けてしまったら、勝利はなかっただろう。


「英傑……そして英傑級の能力を所持する者達、総動員で戦った。結果として私達は勝利したが、間違いなく紙一重だった」

「もしもう一度魔王と戦ったなら、勝敗は別の所にあるでしょうね」

「ああ、違いない」


 シュウラの言葉にクラウスは深々と頷いた。


「百戦して、私達が勝利できるのは十が限界だろう……それほどまでに、魔王の強さは圧倒的だった」

「けれど、勝ちました」

「勝負は時の運、ということにしておこう……最大の脅威は去ったと考えられるが、聖王国としては警戒を続けるし、軍縮をなど行うつもりはない。次の魔王……それが決まるまでは、厳戒態勢が続く」

「次の魔王が先代の仇討ちに来ると考えているのですか?」

「別の可能性を考えている。報復と力の誇示……魔族に楯突いたことで人間を滅する。あるいは、先代の魔王が成しえなかったことを実現することで自分こそ最強だと証明すべく、侵攻を行う」

「……仮にそれをするにしても、魔族側も兵は相当損耗しているはず。年単位の歳月が必要なのでは?」

「そうだ。だからこそ、今が重要だ」


 ――シュウラ達はクラウスが何を言いたいのか理解し、彼を注視する。


「今後、戦士団との関係も強化していく。次の魔王……それが襲来した場合に備え、今以上に戦力を高める。魔王との戦いで必要なのは集団による力ではなく、圧倒的な力を前にしても対抗できる個の力だ。聖王国の精鋭に加え、戦士団……そういう面々が集い、強さを得る……これが聖王国の方針だ」

「今の段階で、次の英傑を見据えるというわけですか」


 ロイドが言う。それに対しクラウスは首を振り、


「少し違うな。今いる『六大英傑』を八大、十大英傑にしようという話だ」

「なるほど、猛者をさらに増やすと……」

「ロイド君はその中に入れそうか?」

「どう、でしょうね。剣については多少なりとも自信はあります。けれど、英傑になれるかどうかは……」

「なる、と断言しなさいよ」


 セリーナが横やりを入れた。するとクラウスは笑い始める。


「現役の英傑がそう言っているぞ?」

「……善処します」

「いいだろう、私も君が来るまでは現役の英傑として精進することにしよう……そしてセリーナ君」

「はい」

「君が戦士団に所属した理由は私も理解している。魔王を討伐したことで、君の目的を果たせる可能性は上がった……そして君には選択肢がある」

「私は、宮廷に入り栄達を望む者」


 と、セリーナは隠すことなく明瞭に告げる。


「けれどそれを成すためには、魔族と戦う最前線から離れることになる……しかし私にまだ英傑として、前線で戦えと?」


 その問い掛けに対し――クラウスは微笑を浮かべた後、口を開いた。


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