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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第二章

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冒険者

「前から一度、やってみたかったことがあるんだが」

「……何だ?」

「ディアスと勝負をしたかったんだ」


 ……シュウラといい、英傑というのはどうしてこうなのか。


「俺と勝負しても面白みはないぞ。そもそも、魔法使いと戦士じゃ勝負にならない」

「そうか? 案外、良い勝負をするかもしれないぞ?」


 俺が健闘するってことだろうか……考えているとニックはさらに口を開く。


「俺が要求するのは決闘じゃないぞ」

「そうなのか? なら、勝負というのは何だ?」

「受けてくれるのか?」

「正直、回れ右したいところだが共に魔王と戦ったわけだし、無碍にはしたくないなと思っただけだ」

「なるほど……なら言わせてもらうけど、俺達とダンジョンで競争をしないか?」


 ……その言葉で、俺はニックが何をするのか合点がいった。


「つまりあれか、一緒のタイミングでダンジョンに潜ってどちらが先にお宝を手に入れられるかってことか」

「そうだ――単純な力勝負ではそもそも、戦士と魔法使いでは一概に比べることは無理だ」


 と、ニックは少し声のトーンを落とし話し始めた。


「それに、俺としてはそういう勝負ではなく、もっと総合的なもので評価をしたい」

「総合的……?」

「状況に応じた的確な判断能力、窮地に立たされた時の打開力。あるいは、どんな困難に遭遇しても折れない心……とまあ、言ってみれば冒険者として活動する上で必要な能力を競いたい」


 ……ダンジョンに潜り続けたニックだから言えることだな。単純に戦うのではなく、どちらが冒険者として優れているのか……それを推し量りたいと。


「そういうのを調べるのに、ダンジョンというのは非常に良い」

「確かに、何が起こるかわからないから判断能力や打開力が必要だし、戦闘技術だってそうだ。そして、どれほど徒労であっても諦めない心……ニックの言う必要な能力というのは、確かに含んでいるな」

「だろ? 俺としてはダンジョン攻略で競ってみたいんだが」

「ただ、俺はそれほど踏破経験はないぞ?」

「何を言ってるんだよ。戦士団としてロゼロの迷宮なんかを踏破したじゃないか」


 ――ロゼロの迷宮というのは、魔王との決戦にからおよそ三年ほど前、魔王幹部クラスの敵が聖王国に入り込み、生み出したダンジョンのことだ。他のダンジョンが十集まっても太刀打ちできないであろう規模と敵の強さを兼ね備えていた。文字通り最強のダンジョンだった。

 俺は魔王軍幹部が敵ということで、ダンジョン踏破に駆り出された……無論単独ではなく『暁の扉』に所属する団員として。強力な魔法は使用すると迷宮が破壊される可能性があるとしてセリーナが入らず不在の中、俺は団員と共にどうにかこうにか迷宮を攻略していった。


 結果として『暁の扉』が最初に魔王軍幹部のいる最奥に辿り着き、戦って倒した……とはいえその戦いは後続より駆けつけた者達も加わってまさしく総力戦だった。中には現在も英傑の座にいる最強騎士とかシュウラもいたし、彼らがいなければ俺はあの戦いで死んでいたことだろう。


 とはいえ、最初に踏破したのは『暁の扉』だとして記録には残っている。


「ニックはあの迷宮に入ってはいなかったっけ?」

「いたよ。でもあの時はまだ新人だった」


 あ、そうだった。ニックはここ二年ほどの間に頭角を現した人物だった。


「正直、あのロゼロの迷宮のことがあって俺はダンジョンに潜ろうと決めたんだ……なんというか、戦士団を率いるあんたに憧れた面もあったな」

「初耳だぞ、それ」

「言っていなかったからな。なんだか照れくさいだろ」


 ……まあ、俺も戦場で言われたら動揺するかも。


「そういうわけで、ディアスにも明確な実績はある」

「俺一人でやった功績じゃないからどうとも言えないな」

「とはいえ、今回だって一人じゃないだろ」


 ニックは自分の背後にいる仲間と、俺の後ろにいるアルザとミリアへ目を向けながら問い掛ける。


「ただ、そちらはディアスが承諾しても二人がなんと言うか――」

「私はいいよ」


 まるで挑発に応じるようにアルザが言った。


「ダンジョンってそういえば入ったことないなー、って興味もあるし」

「アルザは一匹狼だったからな……そちらはどうだ?」


 ニックはミリアへ話を向ける……魔族だと気付いているし、味方に魔族がいたらダンジョンについて色々と有利に働くかもしれないのだが、彼はその辺り言及することはない。


「……私も、構わないけれど」

「だそうだが、どうする?」


 無理矢理舞台に上げられてしまった感じだなあ……断っても問題はなさそうだけど、ここで体を反転させて逃げようにも、ニックはついてきそうだよな。

 それに、ダンジョン探索……正直に言えば、興味がないわけでもなかった。だから、


「……わかった。なら勝負を受けようじゃないか」


 俺の言葉に、ニックはこれまで以上の笑みを見せたのだった。


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