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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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エピローグ:とある国の歴史について

 聖王国の歴史書において、魔王の侵攻は『魔王戦争』という名前で記されている。


 それは魔界から魔王が多数の軍勢を率いて人間界――聖王国へ攻撃を仕掛けたもの。対抗したのは当時人間側における精鋭の騎士達と『六大英傑』と呼ばれる戦士達。そして彼らと共に戦う仲間達。


 戦いは激闘の末に人間側が勝利――しかし、それで戦争は終わらなかった。魔王を打倒してからの王都襲撃。そこからさらにいくつも発生した事件。最終的にギリュア大臣という聖王国の重鎮が内通していたことが原因であったとされ、聖王国の政治体制が大きく変わる転換点ともなった。


 そして、魔界は――程なくして新たな魔王が生まれる。人間界は戦々恐々としたがそれはほんの一時の話。魔王は人間界へ侵攻することはなかった。むしろ一時でも魔王が消え去ったことで魔界の中において内情不安が発生。それを収束させるのに時間を要した。


 そして――魔王はここから大きな方針転換を行った。突如人間側と会談などをするようになった。やがてそれは人間界と魔界とを繋げる不戦協定を結ぶきっかけとなり――その協定締結には、高位魔族ではなく元魔王候補であった女性魔族が活躍したという。


 魔王は魔界の変革を行った。とりわけ大きかったのは魔王を取り巻く重臣達の変化。魔王戦争前にいた重臣達は一体残らず消え去り、魔王候補と呼ばれるだけの力を持つ者達や、内政に卓越した者達が魔王城に集結し、政治を執り行うようになった――とはいえ、多数の混乱は生まれた。けれど魔王はその全てをやり遂げた。その執念は一体、と後の歴史家は首を傾げる。


 全ては魔王戦争が契機ではあったが、論理的に説明がつかない事象が多く、様々な歴史家を悩ませることとなった――その背後にあるのが魔王の真実というものだったが、結局その事実が一般的に広まることはなく、単なる俗説ということで決着がついてしまった。今でも国が管理する図書館で魔王の真実にまつわる資料を閲覧することはできるが、誰にも読まれず埃を被ることとなる。


 そして、魔王を倒した英傑達――ある冒険者はその後も活動を続け、やがて魔族が生み出したとあるダンジョンで魔法技術を大きく発展させるきっかけとなった道具を得ることになる。それによって歴史に名が刻まれ、彼の遺品は博物館に保管されている。


 またある英傑は、数々の戦士団をまとめ上げ、やがて大きな団を作り上げた。彼が結成した戦士団は後にいくつも発生する魔物との戦いで大きく貢献することになり、その戦士団の名は語り継がれている。


 別の英傑は王城へ入り、政治中枢を担う家柄の発祥となった。代々女性が当主を務めるその家柄は、脈々と王室を支え続けることとなる。


 英傑の中で唯一の騎士――彼は騎士において新たな戦術体系と、剣術を創生した。それは聖王国の防衛に大きく貢献し、多数の騎士が魔物や魔族を打倒するという功績を上げることになる。


 また、冒険者ギルドに所属していた英傑の一人は、やがてギルドの運営そのものを大きく変えて見せた。そのシステムによりギルド自体が大きく発展し、多数の優秀な冒険者を生み出すきっかけとなる。


 そして、王族の英傑――彼女の子孫はやがて玉座に座る者が現れる。その治世は聖王国の絶頂期を作り出したほどであり、歴史において語り継がれるものとなる。


 ――そうした英傑達の輝かしい功績の中で、彼らと共に戦った英傑の一人、その動向についても注目された。当時七人目の英傑と呼ばれていたその魔法使いは、魔王との戦いを後方で支え、魔王打倒の立役者となった。

 彼が開発した強化魔法は、騎士や宮廷魔術師にも応用されたばかりか、改良が進められている。彼が用いた対魔王の決戦術式理論は、強化魔法という分野を大きく発展させるものであり、また彼により強化魔法という概念そのものに大きな見直しが成された。


 彼が最終的に発表した理論は解明できていない部分がある。それは魔王を打倒するための核心部分とされ、多くの研究者が難解な術式の解析を進めている。


 ――聖王国は魔王戦争を契機に大きく変化した。重臣の失脚と英傑達の後世に渡る功績。その二つにより、大きな発展を遂げた。

 それは魔王と直接戦ったが故に、様々なものを遺そうとした意志によるものだと信じられているが、それ以外にも何かがあると考えている研究者もいる。発展に貢献した人物が他にいたかもしれない――元英傑や、それに近しい剣士などがそれに該当し、彼らの詳細も調査が進んでいる。


 歴史書の中には一切記されることのなかった、彼らが知り得た真実。それは誰の目にも触れられないまま魔王の中でなお残り続け、世界に渦巻いている。その魔王が滅び去るまで――平和は、続いていく。


完結となります。ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

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