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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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人の力

 魔族ゼガの剣が俺へ向け一閃される。それと同時に俺は杖を振りかぶり――剣戟に対抗するように振り抜いた。

 そして両者の武器が激突した……瞬間、俺は激突した部分の軸をずらし、体を傾けゼガの剣を避けた。


 相手はそれを見極めたはず……だが、動きは止められなかった。渾身の一撃は空を切り、その間に俺は態勢を立て直す。

 素早く杖を構え直した俺は、杖の先端に魔力を集め、刺突を決めた。決戦術式による身体強化で両腕に力を集め、回転を加えながら魔族の腹部へ――杖を、決めた。


 次の瞬間、その体が後方へすっ飛んだ。俺の攻撃によって足が地面から離れ、背後にあった大木に背を打ち付ける。

 ドン! と一つ音がして魔族は完全に動きを止めた。剣はなおも握ったままではあったが、その表情は驚愕に染まり、先ほどの攻防を思い返してか視線を俺へ向けていた。


「……今のが、魔王との攻防か?」

「俺が魔王に反撃した手法だ。とはいえ、たった一度だけだ。その後、仲間達が立て直さなかったら終わっていたよ」

「しかし、一度でも魔王を凌駕したわけだ……なるほど、これが人の力か」


 感服したように――俺としては正直、褒める部分はあるのかと思うところだが、魔族ゼガにとってみれば相当な偉業だと映ったらしい。

 同時にゼガからは戦意が消えていく……これで終わったのだろうと思いつつ俺は、口を開いた。


「いいか? これで」

「ああ、付き合わせて感謝する……ここで手に入れた情報を使い、必ず作戦は成功してみせる」


 再び決意に満ちた表情を見せるゼガ……それと共に、深淵のような気配も消え失せた。






 魔族ゼガはその後、足早に立ち去った……おそらくもう彼の姿を見ることはないだろう。魔王という存在に自ら取り込まれ、作戦を遂行する……自分自身が消えるというのに、まったく気にしない様子……それだけの過去があったのだろう、という想像しかできないが、俺達としては無事成功することを祈るだけだ。


「……さて」


 魔族ゼガが去った後、最初に口を開いたのはヘレン。


「これにて騒動は完全に終結ね……みんな、手を貸してくれてありがとう」

「私のためにやったのだから、気にする必要はない」


 そう述べたのはセリーナ……うん、彼女は栄達を目的としているのだから、そういう意見になるのは当然か。


「あとはヘレン、政治次第ね」

「そうね……ま、そこは頑張るとしか言いようがないわね」


 肩をすくめるヘレン。飄々とした態度ではあるが、自ら動いた作戦でもある以上、最後までやりきるだろう。


「英傑達への報酬については、後々渡すことにするわ……と、そうだ」


 手をポンと一つ叩くと、彼女は俺達へ向け、


「訊きたいことがあったのよ。これからどうするのか」

「どうするのか?」


 ニックが聞き返す。それにヘレンは頷くと、


「英傑達の今後……騒動は終結し、やがて平常に戻る……魔界から魔族や魔物がやってくるのは変わらないにしても、王都襲撃みたいなことにはならない。直近一年二年は警戒するだろうけれど、それが過ぎればいずれ国としても判断に迫られる……今の規模の騎士団を維持することはしなくなるでしょうし、戦士団に対しても考える必要が出てくる」

「といっても、こちらの方は変わらずですね」


 そう意見表明をしたのは、シュウラだ。


「戦士団をこれまでと同様に盛り立てていきます……とはいえ、今の規模を維持するのは難しくなるでしょう。いずれ身の振り方を考える必要が出てくる」

「今は戦士団の運営と維持をしていくってことかしら?」

「そう思って頂いて構いませんよ……そこからどうするかは、その時に考えます」

「シュウラだったら何でもできそうだけどな」


 俺のコメントに対しシュウラは「さすがにそれは」と返したのだが、英傑達は俺の意見に同意見なのか彼へ視線を集める。


「……ヘレン、なので自分は今までと変わらずですね」

「そう、ならニックは?」

「魔族の侵入する数とかは減るのか?」

「魔族ゼガの作戦、その成否に関わらず魔王の重臣達が魔王作成に注力する以上、当面そうなるでしょうね」

「ならダンジョンの数も減るだろうな……まあ、当面は仲間と一緒に色々な所を回ってみるさ。場合によっては聖王国の外に出てもいい」

「外に活路を求める?」

「あくまで可能性の話だが、それもいいんじゃないか?」

「私達は止めるつもりもないし、ニックが納得するならそれでいいわ……ま、とはいえ聖王国がピンチになったら英傑として駆けつけて欲しいけど」

「おう、そこは任せとけ」


 笑いながら応じるニック……彼とシュウラは、ひとまず今までと変わらず、といった感じらしい。

 他の仲間はどうなのか……そんなことを思った矢先、ヘレンは別の人物に目を向ける。


「セリーナは、訊くまでもないか」

「そうね」


 応じたセリーナは、ヘレンへ向け語り出した。


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