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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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深淵

 やがて森の奥に到達した時、そこには深淵が存在していた。俺達と対峙する形で立っていたのは魔族ゼガ。以前図書館で顔を合わせた時は町に溶け込むべくごくごく普通の衣服だったが、今回は黒衣を身にまとい魔族特有の気配を漂わせている。


「よく来てくれた」


 そして歓迎する魔族ゼガ……とはいえ、発する気配は敵意がないにしろ圧迫感がある。


「そしてミリア、久しぶりだな」

「……ええ」


 頷くミリア。彼女の表情と声色は共に硬い。


「訊きたいことは山ほどあるけれど、私から問うことはしないわ」

「焦らずとも、全てを語る気でいるさ……さて、英傑の一人であるヘレン」


 ゼガは王族である彼女に話を向けた。


「資料は役に立ったか?」

「ええ、あなたが提供した物によってギリュアを追い込めるくらいには」

「そうか。それは何よりだ」

「……私はあなたから資料を提供されたとは言っていない。でも、ギリュアは証拠の内容を見てあなたが資料を出したのだろうと察しがついていた様子だったわ」

「当然気付くだろう」

「もう関係修復は無理よね?」

「もとより修復するつもりもない」


 キッパリと語るゼガ。


「反魔王同盟……その目的のために手を組んでいただけだ。ギリュアの方も役に立たなければ捨てると公言していた。私達は同志などではなく、利害が一致し互いに利用しようとしただけだ」

「ずいぶんドライね……いえ、だからこそギリュアは手を組み利用しようとしたわけか」

「そうだ。私達には人間界で活動するだけの理由があったからな」

「それじゃあ、まずはそこからね……と、その前に取引の内容からかしら」

「そうだな。とはいえ、まずはそちらの疑問を解消するところから始めればいい。私に答えられるものであれば全て答えよう。こちらが求めるものは、最後の最後で構わない」


 と、ここでゼガは少しだけ魔力の圧を上げた。


「しかし、だ。敗者として取引を持ちかけている以上勝者に従うが……情報そのものを渡さない、もしくは故意に嘘をつくなどすれば、こちらも相応の態度をとることになる。申し訳ないが、私もそこまで寛大というわけではないからな」

「そこは心配しなくていい」


 ここで俺が一歩前に出る。


「あんたが求める情報は提示するさ……とはいえ、どの程度価値を持つのかわからないが」

「それで構わない……さて、まずは何から説明する?」


 ……ここに来るまでに質問内容は考えてきた。俺はヘレンを見る。彼女とも打ち合わせをしているのだが、


「俺が主導で質問して良いのか?」

「ええ、問題ないわ」


 ――エーナやクラウスなんかはメモを取り出した。報告書でも作るためかな。とはいえ、魔族から情報提供されているので、どんな扱いになるのやら。


「……それじゃあ、根本的な部分から問い掛けようか」


 俺は口を開く。ゼガは何を問われるのかわかっている様子で小さく頷いた。


「ああ、何なりと」

「あんたは反魔王同盟の盟主と語っていたが……この組織はあんたが設立したのか?」

「いや、私は三代目だ」


 端的な答え。三代目、というとなんだか歴史が浅いようにも思えるが、それはあくまで人間ベースで考えた話。


「設立して……百年単位は経過していそうだな」

「そうだな。ただ、最初はそれこそ魔王という存在に畏怖を抱き、対抗しようという思惑から生まれたもの。魔王という座に進むことができない政争に敗れた者達が集まる組織だった」


 まずは政治的な意味合いからスタートか。


「そうした中で、魔王という存在に疑義が生まれた始めた……それが私の代で起こったことだ。きっかけは私達の組織構成員の中で魔王候補に選ばれた者が生まれ、魔王城へ赴いたことだ」

「魔王になったのか?」

「なった、という表現は正確ではないな……結果としてその魔族は城から出てこなかった。魔王候補として城に住み着くことになった、という好意的な解釈を最初はしていたのだが、色々と調べた結果おかしいということに気付いた」

「おかしい?」

「その魔族に関する情報が、抹消されたのだ……加え、その魔族に関する記憶すら組織に加わっていない魔族から抜け落ちた」


 ――記憶を……沈黙しているとゼガは話を続ける。


「反魔王同盟という組織に加入する際、造反者が出ないよう特殊な契約魔法を施す規定がある。幸か不幸か、その魔法により組織の構成員はその魔族に関する記憶を失わずに済んだ。そして、魔王という存在が歪なものであるとその時初めて気付いた。結果私達は魔王について調べ始めた……幾度となく魔王の傍に控える重臣からの攻撃を受けた。しかし、それをどうにか掻い潜りながら調査を続け、私達は魔王の真実に辿り着いた」


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