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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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考察と満足

 夜を迎えてもヘレンからの報告はなく、俺達はただ作戦成功を祈るだけとなった。何気なく部屋を出て廊下を歩きながら色々と思いを巡らせることにする。

 砦内は警戒が続いており、二度目の夜襲が来ても大丈夫なよう態勢を整えている。とはいえ昨日との大きな違いはヘレンがいないこと。おそらく指揮は砦をとりまとめる騎士がやることになるだろうけど、昨夜のような戦い方ができるかどうか。


 まあ昨日の戦いで魔族側の戦力は壊滅したと思うので、余計な心配かもしれないけど……俺は食堂へ赴いてハーブティーを飲む。他の仲間達の姿は見てない。さすがに連戦だったので疲れて寝たのだろう。

 俺の方は強化魔法の支援や後衛を担当していたため、眠気はあるが倒れ込むほどではない。まああと一時間くらいしたら寝ようか……などと思っていると、


「おや」


 騎士レグトだった。彼は資料らしき物を携えて近寄ってくる。


「眠れませんか?」

「いや、大丈夫。そっちは仕事か?」

「はい。一区切りついたのですが、まだまだ先は長そうです」

「もしかして寝ないつもりか?」

「いえ、さすがに途中で止めますよ」

「……ヘレンがいなくなったことでできた穴を埋め合わせしているような感じかな」


 俺の指摘にレグトは苦笑する。どうやら図星らしい。


「戦勝報告は既に王都へ届いているでしょう。とはいえ詳細な報告はまだですし、そこを上手く誤魔化すことができれば多少なりとも大臣の目を欺けるでしょう」

「……表向きの作戦は終了したが、ヘレンの方は成功すると思うか?」

「魔族が大臣に関係している施設にいるのなら話は変わってくるでしょうけど、難しいでしょうね」


 そう言及するレグト。決してありえない話ではないが、いくら大臣の息が掛かっている組織だとはいえ、関係者ばかりではない。魔族など怪しい存在がいれば王都にも報告が届いているはずなので、いる可能性は低いだろうな。

 まあ大臣に関係する場所は武力的な意味で手薄なのはおよそ間違いないだろう……ヘレンはそう考えたからこそ、迅速に行動できるような形で作戦を実行した。


 彼女の策略が上回るか、はたまた大臣の警戒度が勝るか……考えていると、レグトが口を開いた。


「どのような結末であっても、見届けてください」

「ああ、わかっているさ……ただ、ヘレンは俺達を付き合わせる気はないだろうな」

「ギリュア大臣のことですか?」

「ああ。大臣との戦いはあくまで政争にまつわるもの。それに関係のない人間は巻き込みたくない、というのが彼女の本音だろうから」

「ヘレン様ならそう考えるでしょうね……ディアスさん個人としては首を突っ込もうと考えていますか?」

「いや、正直関わりたくない」


 その言葉にレグトは笑う。


「当然の話ですね。そこについては特に言及するつもりはありませんので。ここまで共に戦ってくれた時点で感謝しています」

「……ま、何かあればできる範囲で頑張るよ。こういうことを言うとお人好しに思われるかもしれないが」

「ヘレン様に代わってお礼を述べさせて頂きます。本当にありがとうございます」


 ――その言葉の直後、靴音が聞こえてきた。そのリズムは俺にとって聞き馴染みのあるもの。


「……ヘレンか」

「帰ってきたわよ」


 笑みを浮かべながら廊下を進んでくる彼女の姿。


「とりあえず終わったわ」

「作戦そのものが?」

「あくまで主要なところは、だけどね。反魔王同盟に対する作戦は二日で終了したけれど、あと一日くらいは警戒のために騎士も動けるから、明日も勝負」

「でも動いたということは当然、大臣も対応するよな?」

「その辺りはどうにかしている」


 情報制限をしているということかな? 例えば戦勝報告などについてはちゃんと王都へ上がるようにしているけれど、ギリュア大臣関連施設への攻撃についてはその情報が遅れるようにしている、とか。

 具体的に何をどうやったらそんなことができるのか想像もつかないけど……まあ別に考察してなくもいいか。というかできないし。


「ディアス達は明日一日砦で待機」

「もし何かあれば転移魔法陣で出撃だな」

「ええ。それで仕事は終わり。夜襲の件を含めて報酬は弾むわ」

「日程的には三日しかないが?」

「その三日で大いに貢献してくれたからね」


 満足げな表情のヘレン。俺達の仕事はほぼ終わりで確定らしい。


「それでディアス、この仕事が終わったらどうするの?」

「今から話をするのもなあ……ひとまずレインダールへ戻るのも手ではあるが」


 まあ、魔王の真実については魔族レイオンの発言から考えても間違いないので、おおよそ知りたいことは手に入れたんだよな……ただ、町で出会った魔族トールともう一度だけ顔を合わせておくか。なんとなく気になるし。


 頭の中で色々と算段を立てつつ、俺はそろそろ寝るかと思いヘレン達へその旨を告げる。そうして穏やかな夜は更けていった。


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