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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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捨て石

 俺が行った説明に対し、仲間達は納得するような表情を示す。ミリアでさえそうした表情であったため、それなりに筋が通っている、と考えてもいいのだろう。

 反魔王同盟は魔王の真実を知り、魔王という存在を打ち崩すために結集した組織。自分達の方が魔王よりも強い、ということを示せば多くの魔族がついてくるわけだが、それだけで魔界の意思を統一することはできない。下手すると魔王派、反魔王派で分断してしまう可能性もある。


 それを防ぐには、力を示す以外にもやらなければならない。魔王という存在がどういったものか。そして、自分達の考えがいかに正しいか……それを示さなければならない。そこへ至るためにまずは力で魔王を上回っていることを証明し、発言の機会を得る――

 もちろんこれはあくまで推測でしかない。ただ反魔王同盟の方針から考えると、決して的外れでもないだろうとは思う。


「……もう一つは?」


 騎士レグトが俺へ問う。先ほど二つの可能性と俺は言及したが――


「もう一つは、もっと単純な可能性」

「単純?」

「反魔王同盟側の心理から考えると、王都襲撃は本気で仕掛けたのであれば、まさしく乾坤一擲の策だったはずだ。そして、様々な要因で彼らは敗北したわけだが、あの戦いは聖王国の危機であったのは間違いない……ただ準備はしっかりとしていたし、成功率は十分あった。当然、誰が指揮を執るかは相談したはずだが」


 そこまで言うと、レグトは「なるほど」と声を上げた。


「必勝の作戦であり、当然それを指揮しようとなれば組織内で大きな功績となる……」

「ああ。そういう関係から、あの戦いに出た魔族のやり方を良く思わない魔族だって出たかもしれない」

「援軍を用意していたが見捨てた、とかですか。そうなると内ゲバということになるわけですが」

「反魔王同盟だって一枚岩ではないだろうからな。とはいえ、正直この可能性は低いかな。例えば意思統一できていなかったとしても、反魔王という形で固まっているわけだし」

「そうか?」


 ふいにニックが声を上げた。


「真面目に考察しているが、案外そういう理由があったのかもしれないぞ? だってほら、魔界にいる魔族と人間界に入り込んでいる魔族……色々と作戦のやり方や見解だって違うだろうし」

「王都襲撃以降の動きは今思えばなんだかチグハグな気もするから、可能性はあるかな。作戦そのものは遂行していたけど、何から何まで作戦通り動いていたかどうかも疑問だし」


 最終的に連戦連敗となったわけだが……。


「退却してくれるとありがたいんだがな。今回魔王候補まで打倒した以上、大きな打撃は与えただろうし」


 俺の言葉にレグトが「そうですね」と同意し……やがて沈黙が訪れた。






 その後、俺達は二ヶ所目の拠点において攻撃を開始する。強化魔法を使用していない段階でも優勢だったのだが、そこに俺の魔法が加わり一気に攻勢を掛け、無事勝利することができた。

 他の場所も優勢であり、下手すると今日で作戦が完了するかもしれない……早期の攻略で人間側としては非常に良いが、問題はヘレン側がどうなのか。


 現在進行形でギリュア大臣を倒すために動いているはずだが……と、ここで彼女から連絡が来た。レグトが情報を持ってきた形なのだが、


「ディアスさん達には、引き続き作戦を進めて欲しいと」

「魔族討伐の手を緩めることはしない、というわけだな……ヘレンは大丈夫そうか?」

「ええ。あちらも予定を早め行動を開始するようです」


 どこか不安げな様子を見せるレグト。彼女の作戦が成功するのか――彼自身、ヘレンの補助に回りたいのかもしれないが、


「申し訳ないがレグト、俺達だけでは作戦が遂行できないからな」

「はい、わかっています……では、三ヶ所目へ参りましょう」


 既に時刻は昼を回っている。この調子ならあと二ヶ所は回れるだろうか……移動を開始すると同時、ミリアが近づいてくる。


「ディアス、いいかしら?」

「ん、どうした?」

「二ヶ所回った感じ、魔族は明らかに守勢に回っているし、何かしら作戦が残っている、という可能性は低そう」

「仮に何かやるとしても、今攻撃を受けている魔族の拠点は見捨てるのかもしれないな」


 俺の言葉にミリアは頷く……あるいは、撤収準備をするにしても、人間界に入り込んでいる幹部クラスとかだけかもしれない。

 なんというか、捨て石にされる魔族が不憫ではあるのだが……まあ、人間界を脅かそうとしているのだ。どういう状況であれ容赦はできない。


「……今日中に終わらせるくらいの勢いで戦おう」


 そこで俺は結論を述べる。


「敵がまだ策を残している可能性はある。よって、それをさせる暇を与えないくらいに攻撃速度を上げる……楽勝ムードの中で気を緩めず戦うには、そのくらいが丁度良いだろう――」


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