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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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二人の力

「守りはいいのか?」


 砦の守備から攻撃へ転じたニックに対し俺は問い掛ける。彼の後方には彼の仲間もいて、既に戦闘態勢に入っている。


「ヘレンからの指示だよ」


 疑問に対し彼はそう答えた。


「今が好機……というか、ここで決めないとまずいって判断だな」

「さすが、ヘレンといったところか」


 戦況を見て戦力の追加が欲しかったところだし、ヘレンはそれを見極めニックを寄越したというわけだ。


「敵は魔物を多く投入して時間稼ぎをする腹づもりみたいだ」

「なら――それを一切合切破壊してやらないとな!」


 ニックは吠え、仲間と共に攻撃を開始した。それと同時、騎士達は呼応し一気に攻め立てる。

 そこに俺も追随し、押し寄せる魔物に対し乱戦の様相を呈する――のだが、人間側が圧倒するような形だった。


 ニックが参戦したことで俺達はさらに勢いを増した。特に彼が放つ大剣……それが一気に魔物を両断し、なおかつ吹き飛ばし敵を駆逐していく。加え彼の仲間が援護に入り、完璧なコンビネーションで魔物を屠っていく。

 それに乗じて騎士達も魔物を倒していく。目に見えて数が減っていく光景を見て魔族の総大将はどう思うか。


 と、ここで爆音が響く。戦士団側が魔法を使った――しかも単発ではなく複数であり、どうやらこちらの動きを察知して攻めを強くしたらしい。やはり何かしらの方法で戦況を常に把握しているのだろう。よって、俺達はある程度連携ができている形であり、このままいけば挟み込める。


 先ほど魔族を倒したことから、戦力を傾けるとしたら一気に……と考えた時、俺は気配を察知した。


「アルザ! ニック! 真正面から魔族が二体!」


 その言葉でニックはさらに大剣に魔力を注いで魔物を吹き飛ばす。次いでアルザもまた退魔の力を引き出し、周囲にいた魔物を一気に滅していく。

 途端、魔族の動きは急速なものとなった。跳ぶように近づく魔族に対し、ニックとアルザ――二人はそれぞれ魔族一体ずつと相対する。


 ニックは彼と戦う仲間達。そしてアルザの後方には俺。魔族は両者共に黒衣を身を包んだ存在であり、その両腕には何も握られていない。魔法を放って攻撃をするタイプ……たぶん魔物に前衛を任せて後方から魔法を使う、というタイプなのだろう。

 そんな相手にニックとアルザは接近戦を敢行する――周囲に魔物が残っている中で、二人は突撃する。魔族はそれに反応し……そこで俺は二人に強化魔法を行使する。


 魔法が炸裂する。それは共に光弾であり、一瞬で二人の下へ飛来し――爆音が響いた。視界が粉塵や煙によって埋め尽くされる。けれど俺は魔力で二人の動向を知覚する。

 両者の動きは、気味が悪いくらいに同一だった。魔族の魔法――それは相当な力を持っていたはずだが、二人は自身の力と強化魔法によって弾き飛ばし、なおも魔族へ接近する。


 対する相手は――再び魔法を行使しようと魔力を高める。収束は一瞬であり、数秒にも満たない時間で魔族は再び魔法を使うだろう……しかし、それよりもニックとアルザは速かった。次の魔法を撃たせるだけの間を与えることなく、とうとう間際に迫る。

 そこからは一瞬の出来事だった。二人の斬撃が魔族へ放たれ、相手はそれを結界で防ぐ。けれど両者の剣はまさしく渾身の剣――強引に結界すらも破壊し、その体へ刃が届く。


 魔族達はひるみ、アルザ達は足を前へ。追撃の剣が魔族へ届き――その体を両断することに成功。魔族二体は、あっけなく消滅した。


「よし……!」


 俺は一つ声を発すると同時、騎士がさらに魔物を押し込んでいく。魔族が消えたのを敏感に察知し、さらに攻勢を強めた形だ。まだ魔族の総大将は動いていないので警戒は必要だが、戦力を小出しにするようなら各個撃破できる。相手が大きな手を打つ前にどれだけ戦力を削れるか……と、再び戦士団側の戦場で爆音。


 俺はここでもう一度使い魔を生み出す。先ほどは撃墜されたが、今ならばどうだ――が、先ほどと同様に撃ち抜かれる。まだ使い魔を破壊するだけの余裕はあるらしい。

 なら、どうやって戦況を把握する……いや、セリーナ達と連絡がとれればいいのだが、さすがに魔族はそれを妨げるか。


 状況は有利ではあるのだが、総大将の魔族がどれほどの強さなのか不明であるため、強引に攻め立てるにしても限界がある……とはいえ確実に戦力を削っているのは間違いない。よってこのままさらに敵の数を減らし、戦士団側の動きをある程度推測しつつ包囲していくという戦術が有効か――


 その時、またも爆音。ただ今までと感じ取れる魔力が違う。


「……動いたな」


 ニックが言う。おそらくそれは感覚的なものだろう――今までとは違うと、確信したのだ。

 すなわち――総大将の魔族自身がとうとう動き始めた。ただ、こちらには来ていない。ならば、


「このまま進むべきだと思うが」

「俺も賛成だ」


 ニックも同意。そして騎士もそれに応じ――俺達は一丸となって動き始めた。


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