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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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門前の戦い

 門が開いた直後、目の前には多数の魔物がいた――のだが、騎士と兵士達はそうした敵を一気に押し込み始める。同時、城壁の上から魔法が雨あられと飛来し、やや後方の敵を滅していく。


 魔物の動きは隊列を組んではいるが複雑な動きはしていない。単純な数により押し込みであり……寡兵である人間側の状況を考えればシンプルかつ有効な戦術だったが、今の戦況では逆に徒となった。動きが読みやすく、強化魔法により強くなった騎士や兵士が一気に魔物を倒していく。

 俺とアルザはその動きに呼応するように敵を駆逐していく……と、ここで真正面から威嚇のうなり声。反撃を開始した騎士達を見て警戒したようだが、それは意味を成さない。逆に城壁から魔法が飛来し、魔物がまたも滅する。


 ――順調ではあるのだが、ただ門から出て戦うだけではいつか勢いは止まり、逆に蹂躙される結果となるだろう。援軍が挟撃する形であるからこそこうした無茶な反撃も有効に働く……と、遠くから爆音が。砦から現れた騎士の姿を察したらしく、戦士団側もまた動きを活発化させた。使い魔は撃ち落とされるから、魔力か何かで判別したか。


 挟撃している以上、魔族も対応に迫られる……ただ、片方は強化魔法によって勢いのある騎士達と、退魔の剣士。もう一方は英傑二人――判断に迷うところだろう。とはいえこのまま様子見をしているだけではさらにこちらが有利になる。魔族は次にどう動くのか……そこを見極め、俺達は最適な動きを取る必要がある。


 砦の門前にいた魔物がほぼいなくなり、騎士達はさらに勢いを強くする。魔族はまだ動かないが――いや、魔物が突撃してきた。けれど魔族の姿はない。あくまで魔物だけで相手をするということか。

 ならば、敵の主戦力は戦士団側か……? 純粋な人数はおそらくこちらの方が多い。英傑がいるとはいえ、俺達以上に兵数の少ない側を狙うのは、確かにありだろう。


 この決断は正解だったか――ここで、後方から気配。見ればさらなる騎士が砦の中から姿を現した。


「押しつぶせ!」


 指揮官の騎士はそれを見て、周囲の者達にそう指示を飛ばした。魔物の数を見ていける、と判断したようだ。多少危険ではあったが、同じ立場なら俺も同じように考えただろう。魔族が来ない状況である以上、魔物の数を減らしとにかく数的な優位を作る――


 とはいえ、敵もさすがにこの状況を放置することはなかった。俺は真正面から魔族の気配を感じ取る。


「アルザ」

「うん、わかってる。数は……一体か」

「セリーナ達に気を取られているか……あるいは、俺やアルザの存在を見つけられていないか」

「ディアス、一気に片付ければいいよね?」

「ああ。魔族の能力を見極め……可能であれば一撃で仕留めたい」


 そこでアルザは駆けた。魔族も気付いたらしく、即座に迎撃態勢に入った……のだが、明らかにアルザの方が動きは速かった。

 魔族は魔法を放った様子だったが、それよりも先にアルザが魔物の群れへ突撃した。退魔の力によって魔族を阻むような魔物はその全てを瞬殺し、一気に駆け込んでいく。


 対する魔族は魔法準備を始めている――のだが、一気に間合いを詰めようとしたアルザの方が一枚上手だった。魔族の攻撃が決まる前に、アルザが魔族へ到達する。

 その瞬間、退魔の剣が魔族へ一閃された。相手は回避行動に移ったが、それよりも先に剣戟が到達。その体を撫で、魔族は声を上げる。


 とはいえ、一撃では倒せていない。どうやら総大将以外の魔族も結構な力を持っているらしい……魔族が反撃に転じる。攻撃を受けてなお右手に収束させた魔法が今まさに放たれようとしていた……が、その腕へアルザの追撃が放たれた。

 パアン! と、一つ大きい音がした。今まさに解き放とうとしていた魔族の魔法を、退魔の力によって相殺する。


 これによって、魔族はもう手立てがなかった――次の瞬間、アルザは魔族の首を刎ね、その体は消滅した。一撃、とはいかなかったがアルザが問い掛けたように一気に片付けることには成功した。

 よし、これなら……周囲の騎士達が魔物をさらに駆逐していく。魔物を倒し、さらに魔族も撃破した。これで敵の総大将は選択を迫られるだろう――俺達へ戦力を傾けるか、それとも戦士団へ攻撃を仕掛けるか。


 時間が経てば経つほど人間側に有利になるのは間違いなく、ここで決断をしなければ……と思った時、魔物が押し寄せてくる光景が見えた。


「数で押し込むってことか?」


 呟きながら俺は魔法を撃ち込んでいく。どうやら魔族を差し向けるのではなく、魔物で時間稼ぎをするらしい。

 これなら逆に俺達が押し込むべきだとは思うが、現状の戦力では厳しいか……そんな風に思った時、後方から気配を感じた。


「出番みたいだな」


 その声を聞いて、俺は首を向ける。


「セリーナ達も頑張っているようだし、俺達も張り切ろうじゃないか」


 そうニックは告げ、笑みを浮かべた。


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