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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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優しさ

 砦内の防衛準備が進む中、いよいよ魔物達が行軍を再開した。それと共に魔力が膨れ上がっていく……指揮をする魔族がどうやら魔力を魔物達へ付与したらしい。


 俺は使い魔で様子を観察しようとしたのだが……ここで、使い魔を撃ち抜くように魔法が飛来した。それは光の矢で威力はそう高くはなかったが、攻撃を受けて使い魔は消失。対策は立てているらしく、上空などから動向の観察は難しいようだ。

 そして魔物は俺の強化魔法のように強くなった。ただヘレンは想定していたようで、いくらか指示を飛ばし応じる態勢を作り始める。


「ディアス、そろそろ強化魔法を」


 そしてヘレンに請われて俺も動き出す。今回は砦内にいる騎士や兵士全てを対象とする、というわけで宝石に込められた魔力ではなく、砦内に設置された霊脈から魔力を引き出す魔法陣によって行使する。

 俺は杖をかざし、魔力を高め――魔法を発動。強化魔法は砦内に存在する人間に等しく付与され……途端、魔物が咆哮を上げるのを耳にした。


「敵は相当警戒しているみたいだな」


 俺のことはリサーチ済みであり、だからこそ魔物を強化したのだろう……やがて砦の門付近から爆音が聞こえ始めた。それを耳にしながら俺はヘレンのいる会議室へ戻る。部屋に入ると彼女とその横に数人の騎士、さらにアルザがいた。


「ヘレン、強化魔法は使用した」

「ありがとう。場合によってはもう一度か二度、使ってもらうことになるかも……それと前線に立つ場合は、宝石を使って強化してもらう形になると思う」

「それは問題ない。俺自身の魔力消費は少ないし……魔法陣も守護しないとまずくないか?」

「そこは心配しなくて大丈夫。今は魔物の攻撃に耐えられることを祈っておいて」

「一番懸念している場所はどこだ?」


 こちらの問い掛けにヘレンは机の上――砦内を記した地図に目を向ける。


「結界を行使して飛翔する魔物の対策も立ててはいる。むしろそちらを優先しているから、正規の入口である門が一番手薄になっている」

「魔物が真っ正直に砦の門へ攻撃しているのはそのためか?」

「そう。魔族はこちらの状況を察しているのは間違いないわ。転移魔法陣側に魔物はいっていないみたいだけれど、戦力が分散されていることも読み取っているでしょうね」


 つまり、戦力差から正攻法で攻撃した方がいいという判断か。俺達が会話をする間も轟音は鳴り響き、戦いは続いている。

 と、そこへ騎士が一人入ってきた。ヘレンへ何やら報告を行うと、俺とアルザへ向け淡々と語り出す。


「新たな魔物の軍勢がこちらへ向かっているらしいわ」

「後詰めか……近隣の町が狙われればまずいけど」

「幸いながらそういう事態には至っていない……そちらへ攻撃するのも手だけれど、今回は砦を強襲して陥落させることを優先とした、ってところかしら」

「現状からさらに数が増えると、支えきれなくなるか?」

「門は固め、城壁上から攻撃とかはしているけれど……数によって門を強引に破壊されて突破されれば抵抗の余地はないでしょうね」


 状況は刻一刻と悪くなっている……か。今回の強襲を仕掛けた魔族は、こちらの戦力を見極め、動いている可能性が高そうだ。

 第一陣で門を破り、後詰めの部隊で蹂躙する……といったところか。これだけの戦力を残し、なおかつ人間側に勘づかれなかったという時点で俺達にとっては非常にまずい展開だ。


 大軍勢、と呼べる規模になりつつあるみたいだが……さすがにこの数だと強化魔法も焼け石に水、というレベルになる。正直、俺の魔法によって騎士の援護はできるが、果たしてどこまで支えられるか――


「ディアス」


 と、ヘレンは俺へ向け語る。


「いざとなれば逃げてもいいから」

「おいおい……ヘレンはどうするんだよ?」

「私は騎士を率いている以上、最後まで居残るつもり」

「なら俺も――」

「今のディアスは手を貸してくれているけれど、国に忠誠を誓うような人間じゃないでしょ? 戦士団にも加入していない……個人的に協力してくれている人間に、そこまで求めるつもりはないわ」


 ……優しさ、なのだろう。間違いなく本心で無理はさせられないと考えている。


「レグトにはもしもの事態になったらミリアさんを引き連れ逃げるよう言い渡してあるし、ニックの仲間にも同様のことは言ってある」

「……ニック当人は最後まで付き合う気だろうけど」

「本人に言っても聞かないだろうけど仲間は、ね」


 まあ確かに、仲間に言った方がいいだろうというのはわかる。


「この戦い、魔族がこれほどまでに戦力を温存していることを見抜けなかった私の落ち度ではあるし、最後までとことん付き合う気でいる」

「……作戦はどうするんだ?」

「この砦が陥落すれば作戦は途中で強制的に終了し、聖王国内も混乱するでしょう。けれど、クラウスを始め王都の騎士団が動けば、鎮圧はできるはず」


 影響は甚大だが、クラウスが対応すれば……と。


「私の方の作戦については、残念だけど諦めるしかない……でも、尻尾はつかめた。次にいつチャンスがめぐってくるのかわからないけれど、必ず勝ってみせる」


 ヘレンはそう決意を固めた時――会議室へ一人の騎士が駆け込んできた。


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