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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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籠城戦

 暗視系の魔法を使った上でのその姿は色合いがわかりにくいのだが……どうやら総大将の魔族は黒い髪を持った魔法使い風の出で立ちのようだ。

 俺はそのことを調査隊を率いる騎士へ投げかけると、彼は同じ見解を示した。


「魔族は複数体いますが、その中で突出した力を持っているようです」

「そうだな……ヘレンに伝えてくれ。総大将からは、俺達が今日交戦した魔族レイオン……魔王候補に近しい気配があると」


 その言葉に騎士は表情を固くしつつ、要望通り報告を行っていく。


「魔王候補二体目、ってことだね」


 そしてアルザが告げた。俺は小さく頷きつつ、


「ただ気配だけだと具体的な強さまでは不明瞭だな……本当ならもっと近づいて調べるべきだな、さすがにこれが限界か」


 そう思った矢先のことだった。突如魔物の動きが止まり、何やら魔族達が動き始めた。


「何だ……?」


 もしや見つかったか、と思ったがどうやらそうではないらしい。


「結界を使用していますね」


 騎士が呟く。確かに気配を探ってみると、何やら街道のど真ん中で平面の結界を形成し、壁のようなものを作っている。


「陣地のようなものを作成しているのではないでしょうか」

「攻城戦であるのは明らかであるため、腰を据えて戦おうってことか……」


 相手がそういう選択を取るのなら、時間的な余裕が多少はできただろうか? とにかく時間を稼いで援軍を呼ぶことが何より重要なのだが……問題は、援軍が来たとして魔王候補クラスのいるあの軍勢に対抗できるのか、ということ。


「ヘレンとしても生半可な戦力は犠牲者を増やすとわかるはず……騎士さん、どうする? もう少し踏み込んで調べるか?」

「いえ、結界などを形成し陣地を作る以上、周囲の索敵も行うでしょう。時間が経てば経つほど私達が見つかるリスクは増える。ここで一度退きましょう」


 騎士の決断は早かった。俺はそれに同意し、一度砦へ戻ることとなった。






 ここまでで得た情報を基にして、改めてヘレンが作戦を組み立てる。魔族側は準備を行っているが……それも一時間もすれば終わるだろう、とのこと。


「陣地、といってもあくまで結界によって本陣の侵入を阻む程度。魔物達で陣形を組んだら後は襲い掛かってくるでしょうね」


 ヘレンはそう分析しつつ、砦内の騎士へ指示を飛ばす。


「転移魔法陣周辺に魔物の気配はなく、あくまで相手は砦を狙っている……これについては不幸中の幸いね。けれど転移魔法陣の防備を弱めるわけにもいかないし、注意は必要」

「俺達はどうやって戦うか……」


 ――正直、戦士団に所属していた俺には想像もつかない。そもそも戦士団は防衛とかには向いていない……基本的に魔族の拠点とかダンジョンとかを攻略する人間であるため、防御というのをほとんどやった経験がない。

 もちろん護衛とか砦を守るみたいな仕事もあるにはあったけど、護衛は対象者を守ればいいだけだし、砦を守るといっても今回ほどの事態にはならなかったし……考える間にヘレンは騎士へ指示を出していく。正直、それが的確なのか間違っているのかもわからないレベルである。


「――ディアス」


 そうした中、ヘレンは俺へ声を掛けてきた。


「魔物がどういう動き方をするのかわからないから、ディアスとアルザは少しの間ここに待機していて欲しい」

「緊急事態に陥ったら動くってことか?」

「ええ。門を閉めて迎え撃つ形だから野戦にはならないし、防衛戦は苦手そうだし」

「ああ、それは間違いないな」

「敵は拠点を形成するくらいだから、長期戦を想定している……こちらとしても時間稼ぎを優先としたいし、ディアス達をあえて出さないように立ち回って警戒させる」

「駆け引き、というわけか……」


 魔族がここにいる面子をどこまで知っているのか不明瞭ではあるのだが、多少なりとも情報を保有しているからこそ来たのは間違いない。よってあえて主戦力を隠し、相手の動きを見極めて戦うと。


「ニック達は戦うのか?」

「ひとまずは。ニック本人はともかく仲間達は城壁の上から魔法による攻撃とかもできるし」

「そうか……強化魔法を掛けるタイミングはどうする? 交戦が始まってからか?」

「ええ、本格的に相手が攻撃を開始してからね」

「……援軍が早急に来るかどうかは確定じゃないよな?」


 その問い掛けにヘレンは一時沈黙し、


「騎士団や戦士団の動き、及び作戦内容は頭に入っている。全ての戦況を把握しているわけではないけれど、今日の作戦通りなら、この砦へ救援できる部隊がいくつかある」

「そういった者達に攻撃してもらえば……」

「ええ、それに……」


 と、またもヘレンは言葉を止める。同時に口の端には笑みが浮かんでいた。


「少しだけ距離はあるけど、頼もしい味方がいる。もしその隊が砦の状況を把握すれば、すぐにでも救援に来る――まずはそこまで耐えることにしましょう」


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