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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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殺到する刃

 魔族レイオンが握る矛が、襲い掛かってくる。豪快な一閃に対しそれでもニックは真正面から相対し、受けた。

 両者の魔力が弾け、またもせめぎ合いになる……ニックが俺の強化魔法によって互角の勝負を繰り広げているのは間違いない。ただ、根本的な能力は魔族レイオンが上だ。決定打を食らわすのは攻撃を食い止める彼ではなく、アルザになるだろう。


 とはいえ先ほどの攻撃を受けて魔族は平然としている。ダメージを与えるには工夫が必要だが――と、今度はレイオンがニックの大剣を押し返した。


「魔王を破るだけの力、じっくり堪能したいところだが……さすがにやられてばかりではまずいからな」


 矛から魔力が噴出。途端、周囲にいた魔物が吠え、明らかに士気が上がった。


「この辺りで勝負を決めさせてもらおうか」

「――悪いが、やられるつもりはないぞ」


 ニックが告げ、それでも前に出る。まだ強化魔法は維持している。とはいえ先ほど以上の魔力を収束させたレイオンを相手に止めるのは厳しいか――


 再び大剣と矛が激突する。今度こそレイオンはニックを弾き飛ばし、反撃……と、周囲の騎士は予想しただろう。けれど、そうはならなかった。


「……ほう?」


 俺の強化魔法によって、ニックがレイオンの攻撃を受けてもギリギリ踏みとどまった。


「なかなかやるな。そちらも先ほどまでは全力ではなかったか?」

「いや、俺の攻撃はいつでも全力だぞ」


 と、ニックは答えながらもレイオンの力と拮抗している。


「だが、お前みたいな力にも対抗できる術がある……ただそれだけの話だ!」


 瞬間、ニックはレイオンの矛を弾いた。まさか攻撃を受け流された――魔族レイオンにとってはそれなりに衝撃だったのか、これまでの表情とは違い、驚愕に染まる。

 刹那、好機だと悟ったアルザが前に出た。ここまで両者の攻防を観察していたが、いけると判断して足を前に出した。当然レイオンは彼女にも注意を向けており、矛をかざし対抗しようとしたのだが、


「遅い!」


 ニックが動く。彼の大剣はアルザが攻撃を開始する前に魔族に到達。相手はそれを矛で受け――直後、アルザは魔族を間合いに入れた。

 俺はここで杖先に魔力を集めて雷撃を放った。それは無詠唱かつ短時間で魔力を注いだものであったため、魔王候補相手には到底通用する魔法ではない……のだが、雷撃を受けた瞬間、レイオンの体がわずかに反応する。


「そんなもの――」


 無意味だ、などと言ったがすぐさま表情が変わった。意図を察したらしい……アルザが攻撃準備を終え、剣を振り抜いた。

 俺がやったのは雷撃による目くらまし。そして雷と共に魔力を拡散させたことによる、魔力探知のかく乱。結果、アルザが攻撃するタイミングを捉えなくした……結果、彼女の剣が見事レイオンの体へ入る。


「っ……! だが――」


 効かない、などと告げようとしたがアルザの二撃目が入った瞬間に口が止まった。

 これはもしや連続攻撃――そうレイオンは考えただろうけど、全てが遅かった。相手の目には、アルザが放った剣戟の残像が見え、まるで無数の刃が向かってくるように見えただろう。


 ――その剣は、一撃目よりも二撃目、二撃目より三撃目の方が速いという、剣を振るごとに速度が増す攻撃だった。これは修行によって退魔の力を上手く扱えるようになった結果編み出したもの。

 体内を駆け巡る退魔の力が、勢いを増してくく……俺に捉えることができたのは、最初の一撃から数えて十度目までだった。そこからは、目にも留まらぬ速度で魔族レイオンへ斬撃が殺到し――


「が、ああっ――!」


 吠えた魔族。いかに魔王候補と言えど、退魔の力である以上はダメージがゼロなわけがない。しかも速度が増していくにつれて威力も上がっていく。さすがに先ほどのように余裕の表情を見せることは――

 矛が動く。無茶苦茶な魔力を注いだ魔族の斬撃を、アルザは横に跳んで回避する。


 そして残ったのは先ほどまで見せていた余裕など消し飛んだ魔族レイオンの姿。魔王候補としての力は健在……だが、先ほどまでの圧倒的なプレッシャーはない。


「……解せないな」


 レイオンは呟く。相当な痛手を負ったはずだが、矛を握りしめる腕は力強い。


「大剣がこちらの攻撃を押し返し、退魔の力で易々とこちらの体を切り刻む……」

「それが、技術というものだ」


 俺が発言した。すると魔族レイオンは言葉を止め、こちらに目を向ける。


「人間は様々な技術開発を行い、魔族に対抗できる術を見いだした……敗因は俺達に手の内を見せすぎたことと、力で押し通せると考えた見立ての甘さだ」

「手の内をそう見せた憶えはないんだが、な」

「十分見せたさ。もっと狡猾な魔族なら魔力の流れくらいは隠蔽するものだが、直情的なあんたの魔力、その流れは二度三度剣を合わせただけで把握できる」


 ――またもレイオンは表情を変化。それと共に俺は言う。


「話はここまでだ。終わりにしよう」


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