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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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集団の力

 二ヶ所目の戦いを終えた俺達は、ひとまず次の指示が来るまで一休みすることに。魔物が他にいないかを確認する騎士の姿を見ながら俺は、近くにいたミリアへ声を掛けた。


「まだ戦えるか?」

「ええ、問題ないわ……ディアスの方はどう?」

「俺も平気だ。強化魔法なんかは魔力が込められた宝石を利用するわけだし、自前の力はほとんど使っていない。実際のところ、そこまで魔力を消費しているわけじゃない」

「俺も問題なしだな」


 と、近くでニックが腕を組みながら口を開いた。


「魔力にも十分余裕がある……このまま他の作戦場所へ向かって勝負を決めたいところだな」

「逃げられたら面倒だからな」


 ――個人的に疑問なのは、ヘレンが見つけ出した拠点で全てなのか、ということ。ギリュア大臣の後ろ盾があって多数の魔族が侵入している可能性を考慮に入れると、まだまだ人間界に潜り込んでいる可能性は十二分にある


 ただし、今回攻撃する敵拠点の数を考えると、それなりにダメージになることは間違いない。これで見つかっていない拠点の魔族が逃げてくれれば万々歳だけれど――


「報告です」


 騎士レグトが俺達へ近づいてきて、連絡を行う。


「別にあった魔族の拠点も制圧したとのこと」

「強化魔法なども必要なく、か」

「はい。ただ、別所では苦戦しているのとの報告もあるため、次に向かう戦地については見極める必要性があります」

「その判断はレグトが?」

「そうですね……けれどこの場所の確認がまだですので、もう少々お待ちください」


 そう言い残してレグトは作業を進める騎士や兵士のいる所へ向かう……俺は頭をかきつつ、


「戦況などを知るにはもう少し時間が掛かるだろう……長期戦になったら魔族側が何かしら手を打ってくる可能性はあるし、気が抜けないな」

「同格の高位魔族がいた場合、どうする?」


 ニックが問い掛ける。作戦開始前に打ち合わせはしなかったが、先ほど戦った敵の脅威を感じ取り、相談を持ちかけている。


「今回は上手くいったが、次も同じように立ち回れるかは不明だぞ」

「……とにかく、基本に忠実とした戦法でいこう」


 俺の提案に、仲間の視線が集まる。


「魔族との戦いにおける鉄則。その基本さえしっかりしていれば、高位魔族かつ俺達のことを知っていたとしても十分戦えるはずだ」

「基本?」


 聞き返してきたのはミリア。そこで俺は、


「簡単だ。俺達人間は技術を利用して魔族に対抗してきたわけだが、根本的なスペックにおいてはどうあがいても負けている。よってそれを数で補い、対抗する……すなわち、戦力の集中」

「先ほどの戦いみたいに、集中攻撃で倒すってこと?」

「ああ、そういう解釈で間違いない……相手が高位魔族であろうとも、魔王であろうとも全て同じだ」


 人間は単独で魔族に勝つというのは難しい……というか、無理と考えられていた。けれど魔族側の技術を取り入れ、やがて魔王を倒すまでに力をつけたわけだが、それでも絶対的な差は存在する。

 それを埋めるために、集団の力を利用する……騎士は何より連携を重視した戦いをするわけだが、その理由は集団の力こそが魔族や魔物に対抗できるとわかっているためだ。


 そうした中で『六大英傑』という存在が生まれ、魔王を倒したことで大きく評価されることになったし、英傑の功績を知った人は「とうとう魔族に立ち向かえる人間が生まれたのか」と考えるケースもあるだろう。

 でも、実際は違う……俺は決戦術式を使って魔王と対峙したが、それはほんの一時の話。そして英傑も単独では戦えない。やはり人は集団の力を使い、対抗するものなのだ。


「ニックと俺達が分かれて行動するケースもあるとは思うが、それでも基本原理はそのままだ。とにかく、単独の力で対処するようなことはないように……それとミリア」


 俺は話の矛先を彼女へ向ける。


「今更の話になるけど、反魔王同盟の中に、ミリアを知っている魔族がいると思うか?」

「……私は一応魔王候補だったし、それなりに同胞と交流はあったけれど、ありとあらゆる魔族と通じていたわけじゃない。でも、反魔王同盟が巨大な組織であれば、いるでしょうね」

「もしミリアのことを明瞭に知っていて、魔族であることに揺さぶりを掛けてくるようなケースがあれば、ミリアは退いていい」

「……なるほど、私が魔族であることを周知されれば面倒になってしまうと」

「相手が相手だし、今の時点ではミリアのことを知っていてもその場で倒して対処しているけど……それこそ、魔王候補クラスの魔族であったなら、さすがに長期戦になるだろうし、ミリアのことが知られたら面倒になるかもしれないからな」

「その場合どうするか、そうした魔族が出てきたら考えましょう。とはいえ、反魔王同盟である以上は、魔王候補がいるかどうかは――」


 その時、騎士レグトへ深刻そうな顔で近づいてくる兵士の姿が。会話が中断し、俺は何か予感を抱きその兵士へ注目した。


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