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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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典型的

 迫ってくる軍勢に対し、俺はまず仲間達を強化。直後、先陣を切ったのはニックであった。


「おらぁぁぁぁっ!」


 ずいぶんと野性味溢れる声と共に剣を一閃。豪快な一撃は飛びかかってくる魔物を、逆に吹き飛ばすほどの結果を生んだ。

 すると高位魔族は一度止まった。俺達の能力などを察したか、それとも顔つきに憶えでもあるのか。


「……どうやら、突撃だけで勝てるような相手ではなさそうだな」


 淡々と呟く高位魔族。ふむ、俺達を知っているかは今なお不明ではあるのだが、警戒に値する存在であるという認識はしたようだ。

 騎士や兵士も交戦を始め、魔物を駆逐していく……俺の強化魔法による恩恵によって戦況は俺達に傾いている。


 そして高位魔族以外にいる三体の敵は、一体が無理矢理力を注がれ魔物をなおも生成しているが、残る二体がその魔物を指揮している形。とはいえ騎士達の勢いが増しているため、生成速度より撃破速度の方が上回っている。


 ここは後方を脅かして高位魔族を取り囲んだ方がいいだろうか? そんな考えが抱いた時、先んじて動いたのは魔族側だ。


「では、そうだな。こうすればどうだ?」


 高位魔族がパチン、と指を一つ鳴らした。直後、魔物を指揮をしていた二体の魔族。両者が声を上げた。

 それは魔物を生成する魔族と同様、苦悶に満ちたものだが、魔力が膨れ上がっていく……高位魔族はこの場にいる自分以外の魔族に魔力を注いでこちらを圧倒しようということか。


 ――高位魔族の中には、実力の劣るものを蔑み、魔物のように駒として扱うようなケースも存在する。目前にいる魔族はまさしくそれ。典型的、とさえ言えるほどの行動であり、巻き込まれた魔族はご愁傷様としか言いようがない。


「……こういうタイプの魔族でしたか」


 そしてレグトもまた小さな声でコメントする。まあ、ヘレンの側近であればこの手の魔族は見覚えがあるか。


「ディアスさん、こういった手合いは攻撃を受けて逆上すれば面倒なことになるかと」

「そうだな……アルザ、いけるな?」

「もちろん」

「ミリア、アルザと共に仕掛けてくれ」

「……わかったわ」


 承諾したミリアの声と同時、高位魔族が魔物を率いて襲い掛かってくる――しかも、半ば暴走状態の魔族もこちらへ向かってきた。

 魔物を生成している魔族だけは立ち位置を変えていないため、完全に無防備な状態。とはいえ、高位魔族としては長々と戦うつもりはなく、必要な首を得て戦場を離脱したいとか、そういう思惑がありそうだ。


「これなら……いけそうだな」


 俺はそう呟くと、杖を構え魔力を込める。


「ニック!」

「わかってる!」


 俺の声に反応したニックは、即座に高位魔族へと挑み掛かった。彼と共にいる騎士達も援護を開始し、魔族が持つ剣とニックの大剣とが激突して金属音が鳴り響く。

 魔力量的にはさすがに高位魔族の方に分がある。けれど強化魔法の恩恵により対抗できている……よし、ならば、


「レグト、後方から来る魔族を仕留めるぞ」

「わかりました」

「アルザとミリアはニックの援護を! 頼むぞ!」


 一方的に告げると俺は自身に強化魔法を付与しつつ、後方からやってくる暴走状態の魔族に向け走った。そしてレグトは俺とは違う魔族に狙いを定める。

 俺は挨拶代わりに雷撃を放った。それは一瞬で暴走する魔族へ突き刺さったのだが、動きは変わらない。


「防御力も上がっているか」


 咆哮と共に魔族が挑み掛かってくる――相手の得物は長剣。俺はそれを杖で受け、いなした。

 即座に魔族は強引な動きで刃を煌めかせたのだが、それもしっかりと読んで俺は攻撃を防ぐ。そこで、杖先に魔力が迸る。このままやりとりを続けるつもりはない。一撃で仕留める――


 刹那、俺の杖先から再び雷撃が生まれた。けれどそれは先ほどとは異なり、魔力を凝縮した雷の槍。それが杖先から発射し、魔族へと直撃した。

 相手はよけなかった……というより、攻撃を避けるような動きは微塵もなかった。半ば操られているからこそ無防備となっており……俺の魔法によって、あっけなく魔族が一体消滅した。


 レグトの様子を見る。彼の剣は相手の攻撃を巧みにかわし、一瞬の隙を突いて魔族の喉元に剣を突き込んだ。

 結果、魔族の首をあっけなく貫通するレグトの刃……俺のように強力な魔法ではなく、騎士として鍛錬を受けた剣術で、見事対処した。


 もちろん俺の強化魔法や所持している剣の能力が高いのもあるが……これで後顧の憂いはなくなった。あとは高位魔族を取り囲んで倒すだけ――


「面倒だな」


 しかし当の魔族はまだまだ余裕を見せていた。そういう風に演じているのか、それともこの状況下でも問題ないと考えているのか……ともあれ、決着はそう遠くないだろうと思いつつ、俺は杖の先端を高位魔族へと向けた。


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