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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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高位魔族

 俺達は転移魔法により次の戦場を訪れる。そこは山の麓にある岩場。器用なことに岩をくりぬきそこを入口にして地底に拠点が存在しているらしい。


「洞窟やダンジョンとも違うか」

「あくまで魔族が潜伏する拠点、といった案配ですね」


 俺の呟きにレグトが答える――目前では既に騎士と兵士が魔物と交戦していた。


 なおかつ、魔族の姿が俺の目からも見える……数は全部で四体。魔物を生成する魔族を守るようにして戦士風の魔族が守りを固めている。岩場の入口を守るように布陣する魔族と魔物……騎士達も迂闊に攻め入ることはせず、じりじりと間合いを詰め牽制し合っているような状況であった。

 その戦局を大きく変えるのは俺達……即座に強化魔法を使用。途端、戦場に新たな魔力が溢れ、騎士と兵士が大きく強化される。


「……何!?」


 魔族の誰かが叫んだ。どうやら援軍――その様子からして、こういった手を用いる存在がいるのは予想外、という雰囲気だ。


「転移前、魔族同士で連絡を取り合っているのか考察していたが」


 俺は杖を構えながら騎士レグトへ告げる。


「どうやらやりとりはしてなさそうだな」

「ええ、私も同感です……が、どうやら先の戦いと違い、ここでは少し厄介なことになりそうです」


 なぜ彼がそう言うのか……理由は俺にもわかった。四体の魔族の内、一体が明らかに他とは隔絶とした気配を放っているためだ。

 その魔族がこちらへ目を向けた。ボサボサの黒髪を持った傭兵っぽい風体の男性だが、感じられる気配からわざと地味で目立たないようにしている……そういうことなのだと理解できる。


 感じられる力の大きさは、明らかに高位魔族……よくぞここまで様子見に徹していたな、と思うくらいだ。俺達が来るまでの段階で、騎士達だけであれば対処はできたはずだろうに――


「……ふむ」


 その魔族が俺達へ視線を向けた。ミリアのことは知っているのかどうか……ただ彼女については言及せず、


「思った以上の人間が釣れたな。待った甲斐があったというものだ」


 剣を抜く高位魔族。なるほど、わざと静観して援軍――主力部隊とかが来ないかどうか待っていたということか。


「おそらく、他の拠点でも攻撃されていることだろう……おい」


 魔物を生成する魔族へ向け、その存在は声を掛ける。


「魔物を増やせ」

「やっていますが、これ以上は――」

「いいからやれ。力なら貸してやる」


 その瞬間だった。魔力が一気に膨れ上がったかと思ったら、魔物を生成する魔族へと収束する。そして、


「――アアアアアアア!」


 まるで魔物のような咆哮が聞こえてきた。刹那、魔物が一気にその数を増やした――魔力を無理矢理付与して生成速度を引き上げた。

 ただ、あんな無茶なやり方をすれば当然魔族の方も無事では済まない……この局面だけ乗り切ればいい、というわけか。


「高位魔族であり……」


 そうした中、レグトが声を上げる。


「それなりの使い手が来るのを待っていた……余裕を見せていますね」

「こっから逃げるにしても、何かしら戦果を得たいのかもしれない」


 俺は魔族の動向からそう考察した。


「反魔王同盟はたぶん、高位魔族が集って生まれた組織だ。で、人間界で活動する側と魔界で活動する側に分かれているはずで……」

「手ぶらで魔界へ帰れば、反魔王同盟という組織の中での地位がまずいことになると」

「そういうこと」

「なんというか、魔族にも人間っぽい権力争いがあるのですね」

「そこは人も魔族も変わらないってことだろ……悲しい話だけど、な」


 高位魔族が他の二体へも何かしら指示を出す。聞き取ることはできなかったが、魔物を率いる様子を見せているので指揮をしろ、と命令したか。


「おそらく高位魔族は私達の所へ接近してくるでしょう」


 レグトが発言。俺はそれに同意するように頷いた。


「ああ、魔物の生成については無茶をやっているし、長時間戦うつもりはないだろうな。たぶんいくつか強い人間の首をかっさらって他の魔族は見捨てるつもりだろ」

「俺も同意見だ」


 ニックが口の端を歪ませ笑いながら応じる。


「その鼻っ柱を折るところからスタートか?」

「……可能であれば、一気に終わらせたいところだな。相手は強化魔法を見てもどこか侮っている様子がある。本気を出されたら被害が大きくなるだろうし、本腰を入れる前に倒したい」

「なら、どうする? 向かってくるタイミングを見計らって一斉に仕掛けるか?」


 ニックからの提案に対し俺は少し考えた後、


「やるならそのくらいか……ミリア、アルザ、どうだ?」

「私が役に立てるかわからないけれど……」

「いいんじゃない?」


 ミリアは自信なく、アルザはあっさりと受け入れる。そうこうしている内にいよいよ魔族が動き出す。これ以上相談はできないか。


「ミリア、今まで学んだ技術を剣に込めればいい。俺の強化魔法による支援と組み合わせれば、十分な威力になるはずだ」

「……わかったわ」


 ミリアは踏ん切りがついた様子。直後、高位魔族が魔物を率い、襲い掛かってきた。


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