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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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砦の制圧

  いよいよ本格的な交戦が始まった……のだが、その勝負はまさしく一方的な展開となった。


「はっ!」


 掛け声と共に放たれた俺は雷撃は魔物を数体貫くことに成功する。威力は十分であり、周囲にいる騎士達も強化魔法がちゃんと効いているのかスムーズに魔物を倒していく。

 そうした中で砦――城壁の内側ではいくつもの爆音が聞こえてくる。ニックが暴れ回っているのだろうと思いつつ、俺は城門へと近づいていく。


「……あれが魔族だな」


 まだ距離はあるが、砦の入口。城門を越えた場所に魔族らしき存在が立っていた。漆黒の鎧に身を包んだ騎士風の出で立ち……金髪を持った美形の男性だが、その顔つきは目前の状況により厳しいものとなっている。

 俺達のことに気付いたか、それとも強化魔法がまずいと思ったのか――ミリアを知っている場合、こちらへ矛を向けてくる可能性もあるが……魔族は俺達と一瞥。けれど、すぐさま別所へ視線をやった。


「ミリア、見覚えとかは?」

「ないわね。私のことは……魔王候補だし知ってはいそうだけど、それはあくまで資料によるもの、とかではないかしら」


 であれば、彼女自身が姿を見せても問題ないか……騎士達が突撃する。魔物の数が減り、一気に攻めれると判断してのことだった。これで魔族側は選択に迫られる。

 ただ防戦に徹するとしても、現状ではどうにもならないだろう……俺は索敵魔法を行使し、砦周辺の状況を探ってみる。魔物は城壁の内側にまだまだいるようだし、砦内に残っている唯一の魔族が魔物を生成しているみたいだが、生み出されるよりも倒す速度の方が圧倒的に早いため、こちらが確実に有利になっていく。


 騎士がいよいよ城門を抜ける。魔物がたちまち襲い掛かってくるが、連携によって対処することに成功し、犠牲者を出すことなく魔族へ近づいていく。もし魔族が動いたならば俺達の出番だが――


 次の瞬間、魔族は右手に握る剣に魔力を込めた。自らの力で状況を打開するらしいが、その判断は少し遅かったか。


「アルザ」

「わかってる」


 俺の言葉を受けアルザが走った――否、それは跳ぶような動きであり、一瞬で最前線に到達し、魔族へと肉薄する。

 奇襲、と呼ぶほどではないにしろ、魔族としては捉えきれなかったらしく、完全に虚を衝かれたか驚愕した。その間に彼女の剣が煌めく。闘技大会などを経てさらに磨きを掛けた退魔の能力。目前にいる魔族相手ならばおそらく一撃だろう。


 それは魔族も感じ取ったらしく、すぐさま回避行動に移った。同時に周囲に残っていた魔物をけしかけて時間を稼ぐ。

 しかし、今のアルザには――意味のない行動だった。アルザは魔物が向かおうとした時、そちらへ向けてヒュンと剣を薙いだ。動作としてはそれだけだったが――今まさに襲い掛かろうとした魔物が消え去った。


 魔族は途端に苦い表情を見せる……が、すぐさまそれは恐怖に近しいものへと変貌する。アルザがさらに間合いを詰める。魔族は剣で応戦しようとしたが……その剣は退魔の力で一気に砕かれた。

 恐怖、驚愕――そういった表情を見せる魔族を、アルザは容赦なく斬った。相手は声を上げることすらできず……その体が消滅した。


 そして俺やミリアは周囲の魔物へ向け攻撃を来ない、騎士と協力して数を減らす……指揮をしていた魔族が消えたためか、魔物はあっさりと倒すことができた。これで城門付近は制圧。あとは、砦内に残る魔族とニックへ向かった魔族達。

 俺達が次の行動に移そうとした時、再び轟音が鳴り響いた。それは明らかに砦を破壊する音。索敵魔法を使った結果、既にニックへ向かっていた魔族の気配は消え失せている。どうやら難なく倒してしまったらしい。


 であれば……俺達は騎士と共に砦の中へ。廊下が左右に広がり、真正面にはさらに両開きの扉があった。

 その奥から魔族の気配を感じ取ることができるのだが、その横に別の気配――ニックの魔力があった。どうやら彼の方が早い……俺は扉を開け放つ。そこは砦の中心部であり、大きな広間。そして、


「……お、来たか」


 ニックは大剣を振り下ろした状態。残る魔族は――消滅し、塵となった直後だった。


「こっちの方が一歩早かったな」

「競争しているわけじゃないぞ」

「わかっているさ。怪我人もそういないみたいだし、砦の外側に魔族がいないかを確認して、ここでの作戦は終わりかな?」

「だと思う」

「――お見事です」


 レグトの声。見れば、数名の騎士を伴い広間へ入ってくる姿が。


「これほどの短期間で倒すとは……流石としかいいようがありませんね」

「作戦が上手くはまっただけさ」


 俺はそう告げた後、レグトへ一つ尋ねる。


「ここからどうする? すぐに次の作戦場所へ向かうか?」

「いえ、まずは状況確認と情報収集を行います。どの作戦場所へ向かうのかを見定めなければなりません」

「その判断はどのくらい掛かる?」

「一時間ほどあれば」

「わかった……なら、後処理は騎士に任せ俺達は休憩しよう」

「はい」


 レグトは了承し、俺とニックは砦の外へ出たのだった。


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