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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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宝石の魔力

 やがて俺達は魔族がいる砦へと到着した。そこには建物を囲む木製の城壁と、それを背にして騎士と向かい合う様々な種類の魔物達。加え、砦の周辺を騎士や兵士が固め、敵が逃げないようにしている。

 目を凝らせば、砦を囲うように魔力が感じ取れる……これがどうやら魔族を逃さない結界らしい。


「それじゃあ、ディアス」


 戦場に到着するとニックが俺へ向け発言する。


「早速やるか。騎士レグトも作戦に賛同したわけだし」

「……確認だけどレグト、いいんだな?」

「長期戦に陥れば、それだけで不利になるのは確定です。それに、私としても成功率は高いだろうと考えていますし」


 作戦内容を聞いてむしろレグトは賛成している感じだな……結構無茶な作戦だけど。


「ディアスさん達と協力して正攻法で砦を突破する、というのも選択肢ではあります。しかし、砦内では魔物も生成しているようですし、時間が経てば経つほど有利になるのは魔族側でしょう。であれば……」

「了解。それじゃあまずは強化から始めるぞ」

「俺は移動するぜ」


 ニックは宣言した後、共に戦う騎士を伴って別所へ移動を開始。うん、タイミングはわかっているな。


「レグト、俺が強化魔法によって騎士や兵士を強化した瞬間、作戦開始だ。味方は一気に攻勢を掛け、魔族達に対応を迫ってくれ」


「それに乗じてニックさんが……というわけですね」

「そうだ。彼と一緒にいる騎士達が大丈夫か不安になるけど……」

「今回はニックさんの援護に回るでしょうし、そう心配しなくても問題はないでしょう」

「そうかな……よし、それじゃあ準備を始める」


 俺は宝石を取り出す。魔力を大いに秘めた一品であり、転移魔法に使用した触媒と比べても相当な力が込められている。

 霊脈の代わり――といっても膨大な魔力の流れと比べれば秘められた魔力は決して多くない……が、この戦場にいる騎士達を強化してあまりあるだけの力は持っている。


 魔力を高め、新たに考案した魔法を使用する――と、宝石から一気に魔力が拡散した。噴水のように上空へと立ちのぼった魔力は、風と共に周囲に拡散し、戦場にいる騎士や兵士を一挙に強化していく。

 その変化は、間違いなく敵側も感じ取っただろう……魔物がうなり声を上げ始めた。相当警戒を強めている。魔族としても何が起こったのかを観察し、対応を決めたいといった感じだろう。


 けれど、そうした余裕はおそらくない――次の瞬間、周囲にいた騎士や兵士が攻撃を開始した。強化魔法による身体能力向上と、高揚感。その二つによって士気は上がり、目前にいた魔物を一気に押しつぶした。


 これには魔族も驚いたか、魔物達を大きく引き下がらせた――守勢に回り、状況が好転するのを待つという算段だろう。先ほどの魔力が強化魔法の類いだとしても、その効果が永続するようなものではないと察しがついているはず。であれば、効果が切れるまで耐える……うん、魔族の思考としてはこんなところだろうか。


 ただし、それは騎士達を食い止めることができればの話……直後、轟音が戦場に鳴り響いた。これはニックの仕業だ。


「始まったみたいだな」


 俺が呟くと同時に、さらなる轟音。そしてまたも轟音、ついでにもう一つ轟音……ちょっとやり過ぎじゃないか?


「大丈夫なのかしら?」


 音に対し不安を抱いたのかミリアが呟く。


「破壊工作、と言っていたけれど砦を破壊する勢いね」

「たぶん本人はそのつもりなんじゃないか」


 俺の淡々とした言葉に、さしものミリアも押し黙った。


 ――作戦とは何のことはない。騎士や兵士への強化で攻勢に出た騎士達と共に、ニックが城壁などをぶち壊して魔族達の注意を引く、といったものだ。これで魔族が迎撃に出たのであれば当然、入口周辺は手薄になるだろうし、放置すればニックが大暴れする……彼自身が魔族相手でも十分戦えるから成り立つ無茶な作戦ではあるのだが、その実力の高さからいけると判断してレグトも採用したわけだ。


 で、ニックが無茶苦茶やり始めた途端、魔物の動きもずいぶんと鈍った……というか、動揺している。押し寄せる強化を受けた騎士や兵士に加え、ニックの攻撃――俺としては魔族に同情する。よほどの戦力を隠していない限り、打開することは難しいだろう。


「……魔族の動き、捕捉しました」


 そしてレグトが呟く。索敵を行う魔術師から情報をもらったらしい。


「作戦開始前の段階でこの砦には魔族が合計で四体いましたが、その数は変わっていないようです」

「各魔族の居場所は?」

「一体が城門を抜けた砦の入口。魔物を従え防戦に徹する役割ですね。もう一体が砦の中心と思しき場所で、残る二体は今外に出ました。ただこちらには来ません」

「ニックを迎撃するためかな。英傑だとバレたのかはわからないが、面倒な相手だとして戦力を差し向けたか」


 援護すべきかと思ったが、魔物達が動揺から抜け出し襲い掛かってくる……そこで俺達もまた武器を構え戦闘態勢に入った。



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