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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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大臣と魔族

「反魔王同盟としては、蹂躙するだけやって魔界へ戻ればいい。魔王にはできなかった戦果を挙げることができた……それで凱旋すれば魔族の支持を受ける」


 彼女の言葉に、俺はなるほどと思いつつ続きを語る。


「で、ギリュア大臣は魔族を自分の組織によって追い返した……魔族が単に荒らすだけ荒らして帰っただけでも、そう主張すれば納得するだろう、ってことか」

「あくまで現状ある情報による仮定だけどね……でも、ある程度真実をついているとは思うよ」

「大臣としては、とにかく聖王国内に被害が出ることが望ましい、ってわけか……国自体が傷つけば、それを利用してさらなる権力を……」


 俺の言葉に対しヘレンは面白くない顔をした。


「……そりゃあ、こういうことをしているのであれば、ヘレンが倒したいというのも理解できる」

「なんというか、常に黒い噂がつきまとう人だったんだけど、今回のことで確信した。あの人は自分が権力を得るためなら、なんだってする……犯罪組織と手を組むことも、危険な研究をするのも、そして多数の犠牲が出てもいい」

「ギリュア大臣の狙いはそんな感じかもしれないが……リスクもあるだろ? 用心深い人だと言うし、こんな危ない橋を渡ろうとするものか」

「多少のスキャンダルなら、もみ消せるし……何より、優先事項は自分の悪事がバレるより、さらなる栄達を得るチャンス、ってことかな」

「……思った以上に大胆だな」

「あるいは単に麻痺しているのか、だね」


 ヘレンの言葉に俺はなるほどと心の内で呟く。


 麻痺――ギリュア大臣も最初は、犯罪組織と手を結んでバレないよう慎重に動いていたに違いない。けれど、多少派手に動いても露見することはない――それを理解し、少しずつ大胆に動くようになって今に至ったのかもしれない。


 ギリュア大臣が事件を引き起こしている情報は、暗号化された文章を見つけそれをヘレンが解読したためだ。彼女がいなければ今も黒幕が誰なのかわからなかったわけで……相手が多少大胆に動いていても、尻尾をつかむのは難しかっただろう。そう考えると、俺達は運が良い。


「……ギリュア大臣をどうにかして、めでたしめでたしで戦いが終わると思うか?」

「どうだろうね。でも、反魔王同盟は人間界から退却していくとは思う。単純に自分達がやられるだけなら諦めない可能性はあるけど、他ならぬ人間側で動き……大臣級の内通者が捕まったとなったら、組織として立て直せてもさすがに無茶はしないと思うよ」

「ここまでは内通者の情報があったから上手くやれたってことか」

「魔族からしたら上手くとは表現できないけどね」


 肩をすくめるヘレン。確かに、色々妨害されている状況だからな。

 しかもそれは俺が偶発的に関わったことで……だし。ここで無言でいるとヘレンは笑い始めた。


「なんだよ」

「いやあ、魔族としては大変だろうなあと思っただけだよ。幾度となくディアスに邪魔立てされて、結果としてここまで追い込まれているんだから、ご愁傷様と言っていいかもしれない」

「魔族からしたら不本意ではあるだろうな。何せ、大臣の情報を信じて動いていたのにことごとく潰されているんだから……と、待てよ。現時点では表立って見えているわけじゃないが、ここまで魔族側として戦果が挙がらないとなると、ギリュア大臣との関係性を見直すとかもあり得るんじゃないか?」

「だからこその、拠点探しだったんじゃない、と私は思うわ」


 そうヘレンは語る……先の事件――魔物のヌシのいる場所に出現した魔族などが関係してくるわけか。


「これもあくまで状況証拠ではあるけど、魔族側としては一向に戦果を挙げられず、そればかりか同盟関係である魔族が滅んでいる状態。もはや大臣の情報は頼みにできない、自分達で動こう……という考えに至ってもおかしくはない」

「それでも結果として失敗しているけど」

「ディアスの活躍でね」

「本当に偶然なんだけどな……」


 ただ相手からしたら偶然というのがむしろたまったものではないかもしれない。


「大臣としては、この動きに気付いているはずだよな?」

「自分のあずかり知らないところで魔族が動いているとしても、介入することはないと思う。下手に口を出すと反発されるだろうし、そもそもそれが功を奏したとしても大臣としては結果的によし、で終わる話でしょ」

「聖王国にダメージを与えることを目的とするなら、手段は何でもいいってことか」

「そうだね……こんなこと、今回で終わらせないと」


 ――国を食い物としているような大臣に対し、強い口調でヘレンは言う。


 やがて俺と彼女は席を立ち、こちらは部屋に戻り作業を進めることに……しかし、大臣の目的か……。


「そんなに権力を得て何がしたいんだろうな」


 権力なんてものに興味がない俺にはさっぱりだが……とりあえず大臣のことは忘れ、作業を進めることにしたのだった。


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