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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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魔界の支配者

「……違和感、というのは何?」


 次に声を発したのはミリア。先ほどトールが語った言葉に対し言及する。


「魔王には何か特殊なものが?」

「特殊、というよりも他の同胞とは明らかに違う気配……言うなれば、同胞と話をしているように思えなかった」

「他の魔族とは一線を画する存在……という理由だけではなさそうね」

「そうだ。魔王は感情豊かで、時に朗らかに、時に無機質に接していた。ただその感情がどこか……なんというか、作りもののような気がした。ま、あくまで俺が抱いた印象だからな。表現が適切かはわからないが」


 俺とミリアは話を聞く態勢に入る。ここまで話を聞いて、俺達が求めている情報を彼が持っているかもしれないと感じたためだ。


「興味が湧いたようだな……話をする前に一つ質問だ。どういう理由で魔王のことを調べているんだ?」

「友人に、人間界へ来た魔族がいたんだ」


 俺はトールへ向けそう語る。


「今は滅んでしまったみたいなんだが……どうやらその死に魔王が何かしら関係しているかもしれないとわかった」

「で、魔王のことを調べていたと。なるほどな、その友人のことを知ることができるかはわからないが、新鮮な話である保証はするよ」

「学者との研究により、核心をつかんだのか?」


 俺が問い掛けるとトールは小さく肩をすくめた。


「核心、という表現は微妙だが……魔王という存在がなんなのかについては、結論を導き出した。様々な魔族……人間界にやってきた魔族の断片的な情報を集約したことで、な」

「……俺は、別の場所で魔王のことについて情報を手にした。それによると魔王は、要であり道具だということらしい」

「その見解は正解と言えば正解だな……わかっていると思うが学者さんが手にした情報は、世間一般では異説扱いだ。そればかりか単なるデマだと斬り捨てられるパターンもある……が、ディアスさん達にとっては価値がありそうだな」

「もう一度言うが、喋って消えるのは寝覚めがわるいんだが」

「ははは、喋ってからどうするかは決めるとしようか」


 笑いながら応じるトールに対し俺はため息をつきつつ、


「まあいいさ。話してくれ」

「ああわかった。結論から言おうか。魔王という存在……それは魔界を統治するために用意された、言わば装置とでも呼ぶべきか」

「装置……?」

「元々、俺と出会う前に学者さんは色々な魔族から話を聞いて魔王という存在に違和感を持っていた。魔王は強大でありその圧倒的な力によって、人とは比較にならない力により魔族を支配する……ただ、魔王は世襲でもなければ合議によって選ばれる存在ではない。魔王候補の中から選ばれるわけだが……」


 ここでトールは一度言葉を止めた。


「俺は魔王城にいた時に、その魔王がどういう生い立ちだったのか調べたことがあるんだが、魔王となって以降となる前とでは、ずいぶんと性格の違う御仁だったようだ」

「魔王になったから、だろ?」


 魔界を支配するという責務がある以上は、性格だって変えざるを得ないだろう……国の重臣や王様だって、言わば自分を律して政治を行っているわけだし。


「いや、そういうことではない……というより、人格そのものが変わってしまうと言うべきか」

「人格、そのものが……?」

「悪く言えば、元々あった自我は消える。魔王という魔界を統べる存在となり、自分というものが完全に消失する」


 ……俺はミリアへ視線を送った。彼女は今の話を聞いて難しい表情をしていたのだが、


「いくつか疑問があるのだけれど」

「ああ、どうぞ。魔族である君なら疑問はいくらでもあるだろう」

「その話、魔王候補は知っているのかしら? 私は知らなかったのだけれど」

「これは魔王の重臣達の秘事だ。小間使いの俺も知らなかったが、人間界に渡り学者さんと調べ尽くした結果、辿り着いた結論だ」


 そう言いながらトールは肩をすくめた。


「もっとも、人格がどういう形で消滅するのかまではわからない。魔王という器の中で閉じこもっているのか、それとも完全な消滅なのか……」

「その事実は情報を統合した結果、わかったのよね?」

「ああ、そうだ」

「人間界に逃れてきた魔族……その中には、魔王候補から逃れるために、来たというケースも?」

「あるだろうな。実際、自分という存在がなくなるというのを知った魔族は、逃げてきたと語っていた」


 ――俺はここで、友人である魔族アヴィンのことを思い出した。


 彼もまた魔王候補となり、逃れてきた存在だとしたら? けれど何かしらの理由で魔界へ戻った……それは魔王となるために、呼び戻されたのだとしたら?


「そうした魔王になる、というのはどういう仕組みで?」


 さらにミリアは尋ねる。それに対しトールは一度椅子を座り直してから、語り始めた。


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