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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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モチベーション

 やがて昼を迎え俺とミリアは一度外へ出て昼食をとる。手近な店に入ると観光客がそれなりにいる店舗で、自分達は浮いてしまわないか一瞬心配になったが、とりあえず目を向ける人はいなかった。


「そういえばミリア、さっき変な男に声を掛けられたんだが」


 俺は会話をした男性のことを話した。すると、


「あ、その人私の所にも来たわよ」

「おいおい、マジか」

「最初ナンパかな? と思ったのだけれど違ったみたいね。申し訳ないけど怪しい話には乗らないと断ったらあっさり引き下がったけれど」

「……図書館内で悪さをするとは思わないが、一応どういう人物なのか調べた方がいいかな」


 もし手当たり次第に声を掛けているのなら、情報くらいはあるだろう。図書館受付の人に尋ねてみて、確認をとってみよう。

 俺は頭の中で結論をまとめたのだが……ミリアがなんだか微妙な表情をしていることに気がついた。


「どうした? 何か気になることでもあるのか?」

「……その男性、ディアスにはどう映った?」

「え? いや、風体としてはなんだか貧乏そうだなあ、とか研究者なのかなあ、とかだな。敵意を向けてくるとかはまったくなかったけど」

「そう……」


 俺は首を傾げる。何かあるのか?


「……その男性について調べてみて、厄介者扱いであれば適当にお茶を濁して避ければいいわよね」

「そうだな。何でまた俺達に声を掛けたかわからないけど……」


 そのコメントに対してもミリアは微妙な表情のまま。どうしたのだろうと思ったが、結局尋ねることはせず話題を変えることにする。


「ミリア、進捗はどうだ?」

「調べ始めてまだ数時間で情報が手に入るほど、甘くはなさそうね」

「そうだな。俺も成果は今のところゼロ……とはいえ、資料漁りを続ければコツとかもわかってくるだろうし、作業ペースは日に日に増していくはずだ。その分、成果が上がらないことでやる気は減っていくかもしれないけど」

「モチベーションの維持は大変そうね……でもこういうのが、研究というものかしら」

「だろうな。調べた先に成果があるのかわからない……でも、やり続けなければ結果は出ない。オージュもそうだったけど、本当に果てがないよ。でもそれは、戦いだって同じだ」


 肩をすくめ、俺はミリアへと語る。


「俺だって魔族に通用するかわからないまま、ただがむしゃらに魔法を習得していった……やり続けなければ強くなれないし、俺なんかはどこかで怠けてしまったら、死んでいたかもしれない」

「戦いは明確に結果が出るけれど、失敗は下手すると死、だからそれはそれで厳しいわね」

「研究はさすがに死にはしない……けど、先の見えない暗いトンネルをひたすら歩き続けるようなものだからな。大変さのベクトルが違う、と言うべきか。ま、別に慌てる必要はないし、大量に資料があるにしても終わりは来る。ヘレンからの連絡が来るまで、じっくり進めよう」

「ええ、わかったわ……ただその間、アルザの方は大丈夫かしら」

「その気になったら冒険者ギルドで仕事をしてもらってもいいし」


 この町、娯楽が少ないという点が欠点なのだが……まあアルザなら大食いチャレンジとか店巡りとかで時間を潰せるだろうけど。


「もし、ここでの滞在時間が長ければ」


 と、ミリアはふと思い至ったように、


「大通りにある飲食店の全メニュー制覇、二周とかやりそうじゃない?」

「……そうなる前には決着をつけたいところだな」


 そんな会話をしつつ、俺達は食事を終えて店を出た……のだが、


「おい、なんだか無茶苦茶なやつがいるぞ」


 なんか学生達が騒いでいる。何があったのだろう? と思って聞き耳を立ててみると、


「何でも全メニュー制覇と称して店の料理を上から順番に食い尽くしている冒険者がいるらしいぞ」

「その店って確か、学生向けの量多い店だよな?」

「しかも何日も掛けて、という話じゃなくてたった一日で――」

「……あー」


 既に噂になっている。それがアルザであることが認知されるのもおそらく時間の問題だろうか。


「喧嘩とかにはならないだろうから、放っておいても問題はないだろうけど……」

「なぜあの小柄な体に食べ物が吸い込まれるのか、というのが気になる研究者が現れてもおかしくないわね」


 と、真面目に語り出すミリア。俺はそれに脱力し、


「さすがに出ないとは思うけど……興味ある人、いるか?」

「間近で彼女の食べっぷりを見たことのある私は、とっても興味があるわね」

「……そうか」


 とりあえず全メニュー制覇二周目に入るまでには、それなりの成果を得たいところだな……俺は別の意味で喧噪が生まれる大通りを歩いて行く。


「ミリア、午後も適当な時間で休憩を挟みつつ調べよう」

「わかったわ」


 そうして俺達は再び図書館へ――とはいえ、その日は結局成果が上がることはなかった。



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