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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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不審な男

 さて、資料探しを再開し……多少ながら調べる論文なんかのアプローチを変えてみたりするのだが、やはり成果は上がらない。とはいえ調べ始めてからまだ一日目だ。この図書館に情報があるとしても、見つけ出すには時間が掛かるはずで……心の中でゆっくりやろうと俺は呟きつつ、資料を向かい合う。

 で、昼間で作業を進めて適当なタイミングで食事といこう……という段取りを頭の中で立てていたのだが、俺は視線を感じて横を向いた。


 そこに、先ほど俺を見ていた男性がいた。俺のことを注視している……さっきはそそくさと立ち去ったのだが、今度は逃げなかった。

 何かあるのだろうか……男性が近寄ってくる。見た目は二十歳過ぎくらいの若い男性。黒髪で、俺と同様に地味な見た目をしている。


 その格好は藍色のローブ姿……完璧にこの町に溶け込んでいる風体であり、どこを歩いても見咎められることはないだろう。典型的な研究者スタイルだが……何か用なのか?

 一瞬、ギリュア大臣関連の人間だろうかと疑った。俺達のことを監視しているとか……? いや、だとすれば俺の所にやってきて見つかってしまうように立ち回るのはおかしい。そもそも今まで大臣が俺を監視するために人を派遣したことはなかった。よっておそらく関係はない……と思う。


 考える間に男性は俺へ近寄ってきて、対面に座る……と、ここで俺は目の前の男性に対しあるものを感じ取った。


「……何か用ですか?」


 とりあえず尋ねてみる。それに対し男性は、


「魔王に関する研究者か何かなのか?」


 逆に問い返してきた。


「ずいぶんと魔王関連の書籍に興味があるようだが」

「……まあ、色々と理由があって」


 雑に応じる。というのも、それらしい理由を語るためにはたぶん自分の素性とかを語る必要が出てくる。もっともらしい理由としては「魔王と戦った経験から、興味が湧いた」とかなのだが、その場合まず俺の素性から話をする必要性がある。それはそれでなんだか面倒だし時間も掛かる。


 かといって、適当に誤魔化して相手が引き下がるのか……そもそも、彼はどういう理由でここに来た? 彼も魔王に関して研究をしているのか。それとも冒険者としての格好から純粋に何をしているのか興味を抱いたのか――


「なぜ話し掛けてきたんですか?」


 俺は単刀直入に尋ねることにした。何か理由があるのなら語ってもらわないといけないし、何もなければさっさと退散願いたいところだが。

 質問に対し……男性は、


「ああ、すまない。怪しまれても仕方がないのは重々承知しているよ……ただ、こうやって視線を向けるのには理由があって」


 彼は俺と対面する形で椅子に座る。


「もし研究者であれば、情報を買わないか?」

「情報?」

「魔王に関する情報だ……研究者ということなら、興味があるんじゃないか?」


 ……胡散臭さが増したなあ。なぜ目の前の男性が情報を持っているのか。


「……あのですね」


 俺は言いかけて周囲を見回す。人はいないのだが、一応図書館内だし声のトーンは落とすべきだろう。


「そもそもあなたの素性すらわからない以上、例え情報を持っていたとしても素直に受け入れるわけがないでしょう?」

「あ、それもそうか。ただ、身分証を提示するのもなあ」


 ……こいつは何がしたいのだろうか。ただ、俺はなんとなく男性の身なりを見て見当がついた。彼が着ている衣服はよくよく見れば当て布なんかが成されている場所もある。たぶん金に困っているのだろう。

 情報を売ることで生計を立てている……かどうかはわからないが、カモにしやすそうな人間に声を掛けて情報を売る、みたいな感じだろうか? ともあれ、相手にしない方がよさそうではあるな。


 それに、身分証云々を出し渋っているのはおそらく同業者でいがみ合っている場所の研究者だとしたら面倒事になるから、という感じだな。


「仮に情報を提供するにしても」


 と、俺はため息をつきつつ男性へ告げる。


「もう少し怪しまれないようにすべきだと思いますよ」

「ははは、それもそうだな。邪魔して悪かったな」


 あっさりと引き下がり、彼はエリアから立ち去った……あの様子だと、ここで資料漁りをしていたら連日来そうな雰囲気ではある。

 それはそれで面倒なんだけど、どうすべきだろう……仮に不審者とかなら情報が出ているかな? その辺りを調べてみて、今後の対応方法を考えてみようか。


 俺は気を取り直して作業に没頭することに……とはいえ、さすがに資料も多く目当ての情報に行き着くことはない。まあここは焦らずじっくりとやろうと決めているので、焦りはまったくない。

 ある意味、ヘレンの連絡が来る前の暇つぶしですらある……などと考えつつ、俺はひたすら作業を進めるのだった。


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