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最強のおっさん魔術師、自分探しの旅をする  作者: 陽山純樹
第八章

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人の研究

 ミリアが作業している場所は少し歩けば見つかった。彼女は山と積まれた資料を読み進めていたが、足音に気付いたらしく俺へ首を向けた。


「……ディアス? 何か情報が?」

「いや、少し様子を見に来ただけだ。それと」


 図書館内を見回す。


「休憩しようかと思ってさ。さすがにずっと書物とにらめっこしているのは大変だし」

「そうね……時間的には頃合いか」


 ミリアは立ち上がり、一度書物を返却した後に、揃ってエリアを出た。


「図書館内には飲食できるスペースがあるんだ。とはいえ正直、味は普通だしとりあえず腹を満たし喉の渇きを解消できればいい、という感じだけど」

「人も多そうだし、それなりの店を出せば売れそうだけど」

「外に出ればいくらでも店はあるからな。店のメニューをよくしても大して変わらないのかもしれない」


 昼は外に出て食べればいいが、休憩くらいなら……というわけで俺達は図書館内にある飲食店へ。広々とした空間で、飲み物や軽食が売られているのだが、人はほとんどいない。

 適当に飲み物なんかを注文して、それを受け取り席に着く。紅茶を頼んでみたのだが……うん、可もなく不可もなく、である。


「ま、根を詰めて作業をする必要性もないしゆっくりやろう」


 俺は紅茶を飲みつつミリアへ告げる。


「ヘレンから連絡が来たら、作戦を遂行して……その後、再びここへ戻ってきてもいいし」

「……魔族アヴィンのこと、ディアスとしては知りたい?」

「そこに何か真実が隠されているのなら……アヴィンはこの世にいないらしいけど、何がどうなって……というのは、もし知ることができるのであれば……」


 ただ、より詳しく知るためには魔界へ赴く必要が出てくるかもしれない……そうだとしたら、さすがに真相究明は難しいか。


「正直望み薄なのはわかっているよ。ここに情報が眠っている可能性は低いだろうし」

「でも、ディアスは知りたいのよね?」


 視線で俺を真っ直ぐ射抜きながら彼女は問い掛けた。その表情に俺は内心でドキリとしつつ、


「まあ、そうだな」

「なら、とことん追求しても良いのではないかしら」

「……自分探し以上に、自分本位な旅になりそうだな」

「私は別に構わないわよ」


 あっさりと旅に加わることを賛同するミリア。


「それに、私としても興味がある」

「魔王のことか?」

「ええ……魔界の者からすれば、魔王は絶対的であり、また同時に逆らってはならない存在として認知されてきた。人間で言う王様……いえ、それ以上の存在として、君臨していた。けれど魔王は、どうやら魔族が知っている以上に秘密が隠されている」

「魔族にとって要であり道具……道具、というのが何より引っ掛かるな」

「そうね。なぜそのような言われ方をするのか……私としても興味はあるし、知りたいと思う」

「……もし、魔界へ赴く必要があるとなったらどうする?」

「そういう状況になったら、改めて考えましょう。まずは聖王国内を調べてみてから……ディアス、あなたは核心的な情報があるかもわからないと言ったけれど、私の見解は少し違う」


 ミリアはそう言うと、紅茶を一気に飲み干してから、


「人々が研究した資料を見て、私は思った……国として魔族の情報を集め続け、その集積がここにある。論文一つ一つを丹念に見たわけではないけれど、それでも驚くほどの情報があったし、それらの多くは真実だった」

「真実……人間は、魔族に対しかなり研究が進んでいるということか」

「そうね。だからこそ聖王国は魔族と対抗できるようになったのでしょうね」


 ……魔法技術に関する研究もそうだが、歴史に関する内容を見ても、聖王国はよくやっている、というわけか。


「つまりミリアは、驚くくらい魔族のことを丹念に調べ上げている……その事実を踏まえ、魔王の真実に関する情報だって眠っているかもしれない、と?」

「ええ、そうよ。そもそも人間界には色々な魔族がいる。魔王の配下以外にも、魔界から逃れるために……むしろ、そういう存在の方が情報を持っている可能性が高いと私は思っているの」

「なるほどな……」


 他ならぬミリアがそんな風に言う以上、俺も気合いを入れ直さないといけないな。


「それじゃあ、戻って作業を再開するか。ただ、俺達が知ろうとしている情報は人間にとって極めて特殊なものだ。普通の論文を調べていても見つからないかもしれない」

「なら、変わった資料や論文を調べるべきかしら」

「そうだな、とにかく手当たり次第……時間は掛かりそうだが、焦らずやっていこう」

「気になるのはアルザだけれど」

「長期滞在になったら、アルザとしては退屈極まりないことになるからな……ま、数日経っても成果が上がらなかったら、彼女とも相談することにしよう。それでいいか?」

「ええ、いいと思うわ」


 ミリアの返事を聞いて、俺達は立ち上がる。そして再び、奥へ向け歩き始めた。



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